Round12 勝つか負けるか、聖女VS東京
「ぷぃ〜。お腹も落ち着きましたし、第2戦行ってみましょぉ〜!」
「元気な奴だ」
ステーキ屋でたらふく肉を胃に詰めた聖女が、スロットの島を先行する。魔力では膨らむくせに、肉では体型が変わらない人体の不思議。
「でも残念ですぅ。魔女ちゃんも打てばいいのに〜」
「…………」
2人でいるのには理由があってだな……午後もスロットを打つと一応、一応誘ったのだが珍しいことに断られたのだ。
『私は遠慮しておきます』
『なにゆえ?』
『エゴイストなので……私は、私のゴールで勝ちたいのです』
そうして店内のパチンココーナーへ消えていった…………要するに新台のパチンコが打ちたいだけでした。しっかり昼飯は奢らされだけどな!
「まぁ……お守りは1人でいいや」
「お任せを!」
……ん? なんか勘違いされてねーか?
まぁいい、次の戦いは…………と、店内を歩いて少し、聖女の足が止まった。
「んっ! こ、これは…………⁉︎」
「────ッ⁉︎」
驚くも声が出ない。
筐体下パネルにいる白髪の、妙なマスクをした少年に驚いたのではない。
これは…………ヤバい。
神々との戦いを終えた後にこれはヤバい。
パチンコにて先にリリースされた東京のアレ、そのスマスロである。パチンコの方も荒いと言われ、言わずもがな、こちらも当然荒い。しかし打ち手が消えぬにはしっかり理由があるわけで。
「どうしたんですかぁ?」
「お前、財布の中身が消し飛ぶ覚悟はあるか……?」
「大丈夫です、いっぱいありますから!」
…………そういうことではない。
現代のスマスロとは、『勝つか負けるか』だ。あ? いつもそうだろって?
違う。
勝つか、財布消失だ。
そんなことを言ったら午前のゴッドなイーターも似たようなもんだが…………
ホクホクの大勝利か飢えに苦しむかの2択のような台…………と言えばいいか。どうして今回に限ってこんな饒舌になってるのかって、そりゃひっっっっっっっじょおーに理由は簡単。
前にめちゃくちゃ負けたのだ。
それも他のスマスロの比ではない。
文字通りまさしく喰われた、とでも言っておこう…………グールだけに。
「なんだかよくわかりませんが、問題ないですぅ! わたくしの心が、この台を求めてますので!」
「よし、なら俺も腹を括ろう」
主義刹那────聖女が挑むなら怖気付いては男が廃る。これが試練というならば、その先にある万枚を見せてくれ。
「神の加護は我らにありますぅ。さぁ、行きましょう〜」
俺たちが喰われるのが先か、台をコンプリートのが先か……
全ては神のみぞ知る。なんつって。
いつでもATM行けるようにしとくか……




