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異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
神(パチ)よ、聖女を救いたまえ
201/223

休憩 汝、熱狂聖女を崇めよ


「うっぷ…………」

「まったく、妙な術を使うからです」


 パチ屋店外にベンチを召喚し(細かいことはツッコまない)、銀髪の魔女は聖女を膝枕で迎えた。


 ハズレ目を喰って肥えていた身体が萎む様だけは面白かったぞ。


「そいつも上位チャレンジまであとちょっとだったんだけどなぁ〜」

「出鱈目な魔法や奇跡など使わぬことです」

「………………」


 無言の抗議を仕掛けてみたものの、あまり意味はない。真面目にパチンコへ魔法を使っているのだから凄い……いや凄くないが。


「連絡繋がらなかったのはなんでだよ」

「それはまぁ色々と」

「他の面子もかぁ?」

「異世界にスマホの電波が繋がるとでも……?」


 何を言っているんですか、とこちらを心配するような眼差しが非っ常ぉにムカつく。平然と連絡してませんでしたっけあなた?


 ……まぁ、平常運転である。


「単純に魔法研究で忙しかっただけですよ……しかし、数日前に聖女が教会を脱走。異世界への扉をスロットのCZ(チャンスゾーン)よろしく突破したので、保護してくれと頼まれたわけです」

「脱走て……」

「要するにいつもの発作ですね」

「それはそう」


 仮にも聖女と呼ばれる存在の話のはずだが、ホントに目の前の同一人物かと錯覚してしまう。とはいえ、荒台に挑戦する姿勢は我々《パチンカス》の鑑とも言える。聖なる存在にも俗な一面はあるということだ。


「で、連れ帰るの?」

「まさか。それとも、大勝ちはできたのですか?」

「いや全然」

「それでは不可能ですね。今の彼女に必要なのは、大きく勝ったという経験……」

「それパチンコじゃなきゃいけない理由ある?」

「何を言いますか。以前不思議な姿を見たでしょう?」

「あー……あの後光が差してた?」


 喋り方もお淑やかと言えば良いのか……ほんわかな雰囲気とは違った聖女を見たことはある。詳しくは番外編⑧あたりだったかな。


「あの後すぐ元に戻ってしまいましたが、聖女として振る舞う以上、昔より覚醒してもらわなくては」

「本当は?」

「いい加減真面目に仕事をさせないと私が責任を取らされます」

「取れ取れ責任をぉっ!」

「いや〜ん、刹那さんこわ〜い♡」


 魔女が真顔で猫撫で声を出すもんだから悪寒が走った。表情と台詞が合わないと、こうも不気味なのか……!


「……まぁ、聖女の昂った熱をもっと高めることですね」

「それってパチとスロ打たせろってことだろ」

「有り体に言えば」


 俗しかない。清貧やら信仰心とはどこにあるのだろうか…………


「実機で鎮まらないのなら、気の済むまで打たせて心身共に神聖とさせた方が良いでしょう?」

「反動でもっとおかしくなりそ」

「聖女たらんとするならば、試練も必要だということです」


 マジで試練なのか…………いやいやいや、聖女としてあるべくパチを打つってんなアホな。


「試練を超えた先、一体何があるのか。専門外ですが興味深いですね」

「まさか神様が当ててくれるなんて言わねぇよな」

「さぁ、どうでしょう?」


 奇跡も魔法もありはするが……せめてパチンコ・スロットの形式は守ってほしいもんだ。


「も、もう食べられないですぅ」

「じゃあ昼飯は俺だけでいいか」

「行きますぅ!」


 そして飛び起きた聖女に昼飯を集られるのであった。


 日はまだ高く昇っただけ。

 そう、またしてもダブルヘッダーである。


 すべては聖女のために。

 いや違うな、普通に勝ちたい。

 微妙なプラスなど勝ちではないのだ!

 

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