Round9 リプレイとは肝心な時に来ない奴
約25ゲーム間の神との交戦ST中には、リプレイあるいはレア役を引いて攻撃しなければならない。ハズレ役、ベルでは基本的に何も発生しない。
要するに、今画面の中にいる世界史の将の名を冠した竜にはリプレイを引かなければバトルすら起きないのである。
一応弱点となる役……この場合はチャンス目役を引くと1撃で倒せるクリティカルもあるが、それはまた後で。
「リプゥッ──!」
既に10ゲーム、聖女の台はまるで反応しない。そう、リプレイも絶対来るわけではない。1/8.5だし。来て欲しい時ほど、リプレイとは来ないのだ。
「なぜ……なぜ神は慈悲をくださらないのですぅ……⁉︎」
「監視カメラ見ながら言われてもなぁ」
きっと昨日の戦績で顔認証されているんだろうよ。実力で突破する他ない。
「ウキィッ〜!」
「猿がいる…………」
根性のリプレイ役。どうやら抽選には勝ったようでバトルへ突入した。
バトル終了までにリプレイもしくはレア役を引いて勝てばAT枚数上乗せへ移行する。勝てば、な。
てっきり即レバー叩きかと思ったが、聖女は両手を組んで瞳を閉じた。
「神よ……わたくしは、この日のために清貧に生きてきました。清く、正しく……褒美などいりません。ただ、わたくしに勝利を──!」
…………スロット台を前にマジで祈ってやがる。おい、昼飯何食ったかもう忘れたのか。
1打、ハズレ。
2打、ハズレ。
3打重ねてハズレ目。
「んぉーッ! 神の陰謀ですぅ⁉︎」
「純然たるハズレだよ」
基本はこのバトルを繰り返して出玉を重ねていくゲーム性なのだが……これが難しい。
なぜなら登場する神によって弱点は異なるし、狙ってレア役が出せるわけではない。だからこそ、ゲーム数ギリギリでクリティカルが出ると汁が溢れるんだけどな!
「リプレイが……遠い……ッ!」
「バトル当たってもそこから最低もう1回リプレイだからなー」
まさに自力感。これぞ自力感。ヒキのねぇスロッカスはお呼びでないと、画面の神々が煽り散らす。
そして、祈り虚しく聖女の台は1戦目を駆け抜けて終了。100枚の出玉も半分ほど減り通常へ戻ってしまった。
「う、うぅ〜救いはないのですかぁ……?」
「そこになければないですね」
基本的に引き戻しはない。負ければそこで終わりまさにヒリつく戦いだ。
「うぅ〜現実は非情ですぅ」
「早当たりしたんだからいい方だろ…………」
何気に異世界勢はヒキが良い。よほどのことがない限り、どハマりする奴はいないのだ。なんでしょう、異世界人だと顔認証の仕様が違うのかな?
くだらないことを考えていると、俺は300ゲーム、聖女はまた100ゲームを越えたところで大当たりを掴んだ。
「やっとか……」
「やはりわたくしの信ずる神はひとり! もう見せかけの神様には負けませんよぉ!」
贅沢言わないから3万枚出て欲しい。
さて、何が出るかなっと────
そして……お互い交戦前、抽選の1ゲームを越えて現れるのは、またしても厳つい竜だった。
「え、またこの神様でレア役をぉ⁉︎」
「できらぁ!」