Round 27 『混沌銀河は収束す』&『遍く舞台は我が世界』
『混沌銀河は収束す』
『遍く舞台は我が世界ですわ〜っ!」
それは、唐突な魔法だった。
◇ ◇ ◇
入店してすぐ、主導権を握らんとすべくこちらから提案した。
「っうーわけで、1/349のミドルを打ちたいと思いまぁす!」
「私は構いませんよ」
「どんな台でも勝つのみですわ〜!」
脳汁=ハイリターンの台、と今は認識している。認識したい。そうしたい。
「それで、今回はなにを?」
「そりゃ最新台よ」
────レンタル彼女を題材にした、某人気ラブコメ漫画のパチンコ台。
スペックは前述の通り1/349。通常のミドル、1/319より確率は重めだが、そのデメリットを打ち消す特徴のひとつとして…………
◯デッッッッッ
◯デカい(デカい)
◯デカすぎぃ!
◯デカすぎて草
「あら、穴が大きいですわね」
「デカヘソってやつだ」
左打ちの始動口が通常の1.5〜2倍の大きさになっており、それだけ回転数が上がる仕様だ。どんなに釘が渋くても、普通の台よか入るって寸法だ。
色々打ってきたが、やはりSA◯KYOに帰結してしまった。レバブルに脳を破壊されて久しいもんである。
「コンプリートするかは別として、これがラストバトルだ。回らないなんてつまんねぇ状態じゃ話にならないからな」
「それでも回転数は調整されているのでは?」
「そこはヒキよ」
◯まぁヘソデカくても釘がね……
◯ハマりすぎて絵面変わらないのは勘弁な
◯1000円33回転くらいが目安
◯オレんとこ27回転だけど⁉︎
うーむ、やはりある程度の高回転は前提になるか…………まぁいい、1000円12〜15回転のアホみたいな調整よりマシだ。魔女と令嬢に挟まれてさっそく実践開始、125発の銀玉達は通常よりも多く抽選されていく。
「おぉ~回る回るぅ。これよこれ!」
パチンコ打ってる気がするぜー!
これは普通に楽しめそうだ――――――――
そして、呑気な俺の考えを他所に…………2人はなんの躊躇いもなく魔法と錬金術を発動したのだ。
銀髪の魔女は始動口に黒い渦を。
茶髪の令嬢は玉の通り道にある全てをデカくした。
…………何を言ってるか訳分からないと思うが、事実それが目の前にあるのだ。
「ふふ……これが惑星魔法の終着がひとつ。あらかじめ始動口にブラックホールを置くことで全てを吸い込みます」
『あらかじめブラックホール』ってどこかで聞いたことがあるような…………いや、そんなシチュエーションあってたまるか。なんだよブラックホールを置くって。
初っ端からデカヘソに置かれたブラックホールにより、魔女の台へ流れる玉は余すことなく抽選されていく。アウト口に落ちる玉などなく、脅威の吸引力で吸い込まれていった。
「玉の道筋すべてに魔力を敷くなど非効率でした。これぞ風を超える星の魔法、時の魔法に比肩する我が極地!」
「……それをパチンコでぶっ放すのはどうなの?」
◯吸引力変わらなそう
◯すげぇ吸い込まれてるw
◯オレの台にもやってくれwww
◯これゴトでは?
「これは心外。まぁ後で記憶は消しますが、これは純然たる遊技攻略です」
まぁ…………物理的に釘をへし曲げて回転率を上げたりV入賞を何度も繰り返すよりは健全、なのかぁ?
「オーホッホッホ! 持たざる者の僻みはみっともないですわよ?」
「持たざるっつうか……お前も大概だろ」
令嬢の台もこれまたおかしなことになっている。
デカい。釘が太くなっている。そして風車もデカいしデカヘソも大きくなっている。簡単な話、物理的に拡張されて隙間が狭くなっている。いや、魔女のブラックホールを見た後に比べるとかなりショボくも見えるが、かなりロスが減っている。
「魔法使えるようになったんじゃないの?」
「1週間では無理でしたわぁ~!」
「魔力タンクの勇者も、魔力が回復せずに使えませんからね。錬金術のアプローチを物理干渉に切り替えたまでですよ」
「便利だね錬金術…………」
今度は何を対価にしたんだ? いや、初心にかえっただけか?
ともあれ…………もはや普通に打つという行為はなく、異世界の蹂躙が始まったのだ。
…………と、思っていたのだが。
異世界者たちの動きとは関係なく、俺のレバーはぶるぶると震えていた。
◇ ◇ ◇
参考機種:『eF彼女、お借りします』
SA〇KYOの最新台、推しキャラはどなたですか?
デカヘソは安定して回転させてくれるので、結構楽しいです。個人的におすすめ。
〇銀髪の魔女によるパチンコ攻略法『混沌銀河は収束す』
ヘソにブラックホールを置いて玉を吸い込む惑星魔法。
『風の絨毯』よりも魔力効率が良く、省エネかつ無駄の少ない魔法。なお、デカヘソでやる意味は少ない。
〇茶髪の令嬢によるパチンコ攻略法 『遍く舞台は我が世界』
ヘソをさらに大きくする。風車もデカくする。釘もデカくなる。すべてデカい。デカくすることで隙間を少なくする術。なお、デカヘソでやる意味は少ない。
※今更ですが、左打ち時の抽選する穴は、
誤:「抽選口」
正:「始動口」、「スタートチャッカー」
でした。完全に勘違いで記載してました。申し訳ございません。




