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異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
追放勇者と悪役令嬢の現代実践〜パチンカスを添えて〜

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Round 24 銀髪の魔女によるパチンコ攻略法『極星は不動、極光は不滅なり』


 何かが足りないと感じていた。


 いや、研究は順調だ。異世界間の移動も自在になったし、長らく続けていた時間操作や星の魔法も新たに発見したのだから。


 それもこれも、すべてパチンコによるもの。

 しかしまだ……何か足りない。


 凝り固まった考えは、時に進化を停滞させる。まるで、当たらずにハマり続ける台のように。


 ならばいっそ、1度忘れてみるのはどうだろう?


 なに、心配はありません。

 出来の悪い弟子が無垢なわたしを導くでしょう。



 ◇ ◇ ◇



 魔女の輝きと共に黒のとんがり帽子は宙を舞い、俺の頭に着地する。


「初心者にほぼ必ず訪れる脳汁の奔流…………経験者それとは比較にならない、その快楽物質が進化には必要でした」


 銀色の粒子を纏いながら、魔女は言った。

 まあ…………進化したかったってのは分かるよ? 今の言葉からさ。でもさ、でもさ……!


「1回記憶奪われてまでパチンコやるかぁっ⁉︎」

「おやこれは心外。全て計算通りです」

 

 ◯なんか元に戻ってて草

 ◯光ってね?

 ◯自家発電(意味深)

 ◯画面が眩しすぎる


「な、なぜですの⁉︎ お姉さまの魔法の記憶はわたくしのものになったはず……!」

「魔女たるもの、記憶の複製バックアップくらい用意するものです。服従の術まで掛かるべきですよ、お嬢様?」


 まーたサラッとおかしなこと言う。

 しかしさすがはお嬢様、予想外の事態にも笑い飛ばして見せる。


「オーホッホッホ! 記憶が復活したとてこちらの優勢に変わりありませんわ。今度こそ倒してお姉さまをモノにして見せます!」

「ふむ。確率の割合を対価にした術ですか……興味深いところですが」


 見慣れた杖を構えて、魔女は笑う。それはそれは、とても楽しそうに。


「ワガママなご息女にはそろそろ完全なる敗北を味わってもらい帰って頂きましょう」


 杖の一振りは虹を呼び出し、店内を包む。

 これは……この光はなんだ⁉︎


「脳を駆け巡る愉悦の波よ、世界を照らせ!」

 

 何もしていないのに、台上部の星が虹色に光り始めた。間違いない、魔女の魔法が始まる────!


「巡り続ける心の行方、神のみぞ知ることわりは、いまこの時、我が手に」


 ◯始まった!

 ◯なにすんだ?

 ◯詠唱……!


「果てのない旅を示す星よ、褪せることなき輝きは、人々に光を灯す火とならん」


 おまけが如く、虹の光は俺にも波及する。

 そして詠唱はまだ続く。


「極点は常に不動、故に我が還る座となる。運命に翻弄される者達よ、迷える者達よ、我が極光は不滅。然らば、我が光を目に焼き付けよ──────


 ──『極星は不動、(イモータル・)極光は不滅なり(ポラリス)』!」


 その光は令嬢を超えて。空から降り注ぐ極光はカメラを、令嬢を、そして俺を照らす。


「この光絶対目に良くないって!」

「眩しいですわぁっー!」


 白光の中、聴覚が捉えたのは当たりを告げるヨーモニィー。ヨーモニィー、ヨーモニィー、ヨーモニィー…………


「一瞬で当たりすぎだろ⁉︎」

北極星ポラリスを中心に()は加速しています。そして確変という極星は揺るがない────!」


 ◯ヨーモニィーしか聞こえん

 ◯ヨモニりすぎだろ!!

 ◯言いにくくて草

 ◯うるせぇw


 光が明け、ようやく普通の視界に戻ると、魔女の台はリーチと当たりを永遠と繰り返していた。


「ふふふ……当たりの高速化はおまけ程度と考えていましたがなんという想定外。通常の何倍もの脳汁が頭の中を駆け巡っています……! 脳汁、やはり脳汁こそ我が魔法の進化の鍵──!」


 こいつも目がキマっちまってる。例え普段冷静でも、多量の脳汁は危険か……


「ぐぎぃー! どうして青色の図柄が揃いますのォッ⁉︎」


 対照的に光が弱く見えるようになった令嬢は、ついに確変ループからハズれて通常当たりを引いてしまった。


「足りない……脳汁が足りませんわ」

「何かを対価に昇華しようなど非効率。駆け巡る脳汁に必要なのは…………己のヒキのみ!」


 こっちがチマチマ時短を回している間に、極星ループ(仮名)を繰り返す魔女の台は気付けばストーリーのエンディングに到達していた。こんな爆速恋愛ドラマがあってたまるか。


 内心のツッコミをしていると、自分の握るハンドルから風圧を感じる。ようやく俺の台もヨモニってくれるようだ。


 ◯遅くて草

 ◯平成から打ってんのか? 

 ◯最下位確定ッ!


「やかましいわ! これが普通なんだよ」


 液晶の数字はゆっくり回転し、リーチとなる。昨今の高速台のリーチに比べたら確かに遅いが、一般的なスピードだ。両隣の回転スピードが異常過ぎるんだ。


「ヨーモニィィィィィィ」


 無事に3の図柄で確変突入である。

 ゲーム性をぶち壊して、魔女と令嬢は脳汁にどっぷり浸かってやがる。つーか眩しッ。


「パチンコ、楽しんでますかスミレちゃん?」

「ふざけた魔法と錬金術がなけりゃもっと楽しいけどな!」

「おやおや、極星の本質が見えていないようですね」


 なんとなくわかるぞ、ヒキはお前自身のものだってことはな!


「で? 復活した魔法使いシルバさんはこの魔法いつまで続けんの? コンプリートまでぇ?」


 わざとなのか、魔女の台のリーチが遅くなる。台上部のポラリスはそれでも光続ける。


 そして元に戻った……いや、より進化した銀の魔女は待ってましたと言わんばかりにドヤ顔を浮かべた。


「ヨーモニィー」

「……言いたいだけだろお前」


 ナ ナ ナ、「ナ」(確変)図柄が揃ったのは、いうまでもない。



 ◇ ◇ ◇



◯銀髪の魔女によるパチンコ攻略法

『極星は不動、極光は不滅なり』


 初当たりで確変を引くことが条件。

 当たり割合に関係なく、当たりが確変に固定される。おまけで回転が高速化する。


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