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異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
追放勇者と悪役令嬢の現代実践〜パチンカスを添えて〜

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Round 15 銀髪の魔女によるパチンコ攻略法『虚無、故に充足』


「えーっと、演出カスタムは……」

「…………先告知に脳を焼かれていますね」

「本能が求めてるんだッ」


 ということで当メーカー、◯ミーの先告知である「反撃」演出ON。入賞時に期待度の高い、あるいは当たりのモノならデカい音で知らせてくれるそうな。音量ひとつ下げておくか。


「あぁ、この前のポキューンという音ですの?」

「そう! あれはな、一度味わうと二度と戻れない快楽なんだよ。もうあの音を聞くだけで脳が弾けるぞぉ?」

「なら、わたくしも設定しますわ!」


 このお嬢様、ノリノリである。この調子でぜひ先バレに脳を焼かれてほしい。


「ところで魔女《お前》はなんで俺を挟んで座んの?」

「いざと言う時の盾にしようかなと」


 マジで苦手なんだなこのお嬢様のこと。まぁ俺は別に良いけど。


「それに、久々の研究です。魔力の少ない状態でより効率よく発動できる魔法について調べたいところ」

「……本当は?」

「打ちたいだけです」


 ……良い師匠を持ったもんだ。この台導入されたのは知ってるけど別スペックもまだ打ったこと無かったんだよな。とりあえずパンフ見るか。


 一狩り──というかモ◯ハンなのだが。

 スペックは2種、大当たり確率1/259と1/99。今回は1/99での実践となる。

 大当たり後は必ず「剥ぎ取りチャンス」というボーナスを獲得、そこで1/1.8を取れれば「大連続ボーナス」……要するに確変をゲットだ。


 …………1/1.8を取れない引き弱なんていねーよなぁ?


「1/99なんて当たらない方が珍しいのではありません?」

「そんな風に考えていた時期が、俺にもありました」


 たかが1/99、されど1/99。舐めてはいけない。

 100個ピンポン玉が入った箱から1個当たりの玉を目隠しで引き当てられるだろうか? それを永遠繰り返しているのだ。…………いや、ここで1/319とかの話はしないでね? ややこしくなるから。


「ふぅ~ん……大変なのですわねぇ――――」


 刹那、保留入賞と同時に令嬢の台が赤く光る。鼓膜を大きく震わせる音は、まさにモンスター級の咆哮。つーか……


「うるさ……ちょっとぉ、音量下げて」

「んもぅ、脳が弾けそうなのに邪魔しないでくださる?」


 渋々音量を下げる令嬢に感謝。マジでうるせぇなこの告知音。反撃の狼煙どころかもうお前の勝ちだよ。耳のダメージ回復の間にも、令嬢の台は演出が進む。


「ハンティングですのね! 綺麗な雷ですわ~」

「あぁそいつね……」


 昔乱獲したなぁ。可哀そうだけど、装備の為にはしょうがないからね。優秀なのがいけないのよ。


「ペットに出来ないかしら?」

「無茶言うな」


 バトルリーチへ発展。チャンスアップもそこそこに、確変当否になって急にキリン柄のボタンが出現、甘デジの当たりやすさが存分に活かされた初当たりを獲得した。


「オーホッホッホ! 簡単すぎますわぁ~っ!」


 開始20回転の出来事である。さすが甘デジ、軽い軽すぎる。この軽さをミドルスペックで味わいたいもんである。それは置いといて「剥ぎ取りチャンス」。200発の出玉を経由してチャンスへ移行だ。


「ではお先に、ごめんあそばせ~?」

「まだ当たってないというのに」

「1/1.8なんて実質1/1じゃありませんの。これなら錬金術すら必要ありませんわ」

 

 …………どうしてこう分かりやすいフラグを立てるのだろうか。とはいえ引かなきゃ分からない。分からないんだが、異世界勢とのやり取りでこの展開は「ない」と直感している。期待度80%くらい。


 画面から打て、と指示が表示されて令嬢は再びハンドルを捻る。

 特に特殊な音もなく、カウントダウンが始まる。3、2、1と減っていくが色は白、何のチャンスアップもない。ボタンも普通。


「えいっ」


 当然の如くプシュンとハズれ、左打ち指示が出た。


「え、終わり?」

「引きが良いのか悪いのかわかんねぇなぁ」

「錬金術を磨いているだけでは高みには至れませせんよ、お嬢様」


 まるで人生の先輩よろしく諫めるように、銀髪の魔女が言った。魔法だの剣技だの錬金術の高みがここで良いのだろうか。その左手に握るのは杖じゃなくて台のレバーなんだがそれでいいのか……?


「さすがお姉さま!」

「ふふ、錬金術を手解きした先達として『高み』を見せて差し上げましょう」


 お前が原因かいっ⁉

 こちらの内心のツッコミを置き去りに、いつのまにか銀髪の魔女も初当たりを獲得した。開始30回転のことである。2人とも早く当たるの羨ましっ。


「高みって…………1/1.8の確率にすら魔法使うの? それってどうなの?」

「浅いですね、そんなことに魔法を使うわけないでしょう?」


 1章『魔女、現る』のRound 1で何をしたのか今から読み返して来いよ。ドヤ顔でこっちを見るんじゃない。


「当たりを求めるとはすなわち物欲…………このゲーム、いえこのシリーズは特に物欲に対する神の検知器センサーが過剰に働く。先ほどお嬢様が当たりを引けなかったのも、物欲センサーに検知された結果」

「そうなんですの⁉」

「なくもないと言えないのが悔しい」


 玉とか天鱗とか出にくいもんね…………って、それパチンコにも適用されんのか?

 もはやツッコミが追いつかないまま、魔女は杖を構えた。


「我が願望は虚無の彼方に、我が意思は虚無の先へ。満たされしうつろにて、神の意志に逆らえ――――『虚無、故に充足(フル・ヴォイド)』!」

「うぉ、久々に本家の眩しさ――⁉」

「お姉さまの魔法ですわ~!」


 パチンコの光量なんて比じゃない輝きと同時に、魔女の台に玉が入る音が聞こえた。カウントダウンの声に「にゃ!」と語尾がついたその演出は…………


 役物の大剣が振り下ろされて成功!!

 1/1.8を制し、魔女は確変突入となった。


「さすがお姉さま、運が味方していますわ!」

「いいえ、今の私は虚無で満たされています」


 魔女の瞳はどこか虚ろ気で、感情が消えたようにハンドルを握っていた。消えたように見えるが、もともと死んだ魚のような目だからさして変わらん。

 

「虚無こそすべて、感情を消して狩りましょう」

「……本当は?」

「目指せ1万発」


 感情消えてねぇじゃねぇか。



 ◇ ◇ ◇


 参考機種

 『デジハネPモンスターハンターライズ』


 大連続狩猟、超楽しいです。

 この台を打つ時、「反撃の狼煙」モードで打つなら音量に気を付けましょう(というか普通のモードでも)。結構耳にきます。


 銀髪の魔女によるパチンコ攻略法『虚無、故に充足(フル・ヴォイド)

 魔法で感情を操作し、物欲センサーに検知されないようにする魔法。

 

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