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異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
パチンカスはパチンコから逃れられない

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150/226

Extra Round 主義刹那によるパチンコ攻略法『最果てよりすべてを越えろ』+α


 ※1話のみの短編です※




 オールナイトも終え、冬のボーナスで分厚かったはずの財布はいつしかダイエットに成功、そしてしこたまやられた俺、主義刹那おもよしせつなはパチンコ休業期間を挟んでいた。


『死ぬ気ですか?』


 お前も似たようなもんだろ、と思ったが敢えて黙った俺を褒めてほしい。

 

 耐えた、SNSの出玉報告を。

 耐えた、新台の情報を。

 耐えた、動画サイトに上げられる実践動画を。

 耐えた……日常に漂う赤、金色の文字、チャンスや熱いなどの言葉に。


 そして耐えた……同居する異世界パチンカスどもの誘惑に。


 なぜだと思う?

 負けている時こそ打つ? いやいや、それはダメだ。深追いは良くない(今更)。パチンカス諸君はもう分かっているだろう? 当たり続けるとな、いや、パチンコ屋に通い続けると『登録』されてしまうんだ。


 そう、顔認証だ。


 台に座ったが最後、台奥に隠されている小型カメラに顔を照合され初当たり確率から確変突入率、さらには右打ち継続率まで変更されてしまう悪魔のシステムである。


 一度登録されればマスクをしようがサングラスをしようが、カツラをつけようが関係なし。無慈悲に管理された情報はパチンカスを悉く葬る凶悪機構と化す。


 ただし、頻繁に通えば……だ。

 

 パチンコ屋の管理を突破する方法はいくらでもある。

 だから()()なのだ。


 

 ◇ ◇ ◇



 1か月後。

 パチ屋へ入店、即狙い台へ座り流れるようにサンドへ1万円を突っ込み貸し玉ボタンをプッシュ。30日のリアルタイムを越え、今日、俺は! パチンコを打つ!

異世界どもの詠唱なんぞ必要nothing。俺の魔法は、既に完成しているッ! 杖も、魔力も、この魔法にはいらないんだッッ!


 だから口にするのは、顔認証を越える気合の言葉。

 主義刹那によるパチンコ攻略法。


「――――『最果てよりす(オーバー・ザ)べてを越えろ(・レインボー)!』

「…………何も起きていませんが?」

「甘いな」


 隣に座る銀髪の魔女による淡々としたツッコミをいなし、第一球をチェッカーへ投下。今日も元気に一回転目から台枠下の宝玉が『ポキューン』と赤く煌めいた。それは歓喜の前触れ、大当たりの前兆、一発目から幸運は巡っている。


「1か月待った甲斐があったぜ…………」

「顔認証を越えるなど意味不明なことを言っていましたが…………まさか」

「そう! 1か月の時を越え、俺の顔認証は解除されたんだッ!」

「まぁ…………刹那がそう思うならそうなのでしょう」


 画面は脳汁を出すためだけの音がキュイッキュイ鬼がかったように鳴り続ける。1か月ぶりのこの音は精神が落ち着くぜぇ…………!


 誰も俺を止められない、台のリーチも止まらない。

 金、金、金の広がる画面は熱い演出を連続させてボタンを差し出し当たりを見せる。まさにレインボー。


「気持ちいい…………ッ!」

「幸先が良いですね」

「これが顔認証突破方法だッ!」


 待った甲斐があった。家ン中で散々エルフ師匠と剣聖に煽られたからな…………あいつらはシバいてやったけど。


「しかしこの台の確変は…………」

「わぁーってる、みなまで言うnothing。しかぁし! 今の俺なら…………」

「この流れ……」


 青髪の少女が現れて確変当否がお出しされる。もちろん確変だよな、な?

 しかし悲しいかな通常である。


「顔認証は初当たりだけでしたね」

「まだまだ、ボーナスの後ですよ魔女様」


 同じく青髪の少女が高笑いを上げてラストチャンスのボタンがお出しされる。何のチャンスアップもなく……確変には入らなかった。


「いやいや、オスイチなんてこんなもんだから。顔認証効かない今がチャンスだから」


 1か月打たなかったんだから1か月分くらい出玉ないと割に合わないぞ⁉


 どうした俺の魔法! この程度じゃないだろ!


 隣の魔女がすんなり確変に入る間に、通常初当たりを繰り返すこと5回。初当たりだけ軽いくせに、全ッ然確変に入らねぇ。


「良かったですね。顔認証、突破しているのでは?」

「3000発連チャンしながら言われると煽ってるとしか思えないんだが?」

「時間を置くだけでは確変まで微笑みませんよ」


 マジで言ってるのかたまに分からないんだよなこいつ……

 う~ん、やはり入店時のお辞儀とカメラに一礼、それと店員への挨拶が足りなかったか…………


「今度は2か月空けてみるか……」

「出来るのですか? 2か月も」

「…………いや、無理だな! やめやめ、アホくせぇ」


 正直1か月でもキツかったし。やっぱ我慢は毒だ! 顔認証なんてヒキで突破すりゃいいんだよ、ヒキで。


「それでこそ我が弟子です」

「へーへー、師匠殿…………ん?」


 通常当たりを消化していると、スマホの通知音が鳴る。メッセージアプリだ。連絡は『女騎士』でもその妹の『魔女見習い』でもなく、『聖女』でもなく『エルフ師匠』でもなく『剣聖』でも『魔王』でもない。


 ――――主義享楽おもよしきょうらく


「享楽ぅ?」

「メーカー……?」

「いや、従弟。珍しいな」


 年下の従弟で、俺がパチンコへ誘った奴である。まぁ同じ血を少し継いでいるせいか、パチンカス適正は同じだったという。そんな従弟から久々の連絡である。


『魔法使いのコスプレした女って知ってる?』


「…………え、なにこれ」

「どうかしましたか?」

「従弟からのメッセージ」


 画面を魔女に見せると、呆れたように自分のパチンコへ戻った。


「大方動画配信者か来店演者では? 今日日きょうび、魔法使いの格好をして打つ人間などいるわけないでしょう?」


 ここで銀髪の魔女様の格好を第1話から引用してみようか。


 黒いローブで全身を覆い、頭にはつばの広いこれまた黒色のとんがり帽子。彫刻のような均整の取れた顔立ちから、横顔はEラインが完璧に引かれている。不敵に笑みを浮かべる口元は紅く、白い歯がのぞく。


 そして、今日も銀髪の魔女・シルバは同じ格好である。


「鏡って見たことある?」

「そう何人も異世界から魔法使いが来るものですか。私のような崇高で偉大な研究に追随する魔法使いはそういないでしょう」

「……………………ソウダネー」


 従弟には「知らなーい」とだけ返すと、『了解』とスタンプが押された。


 いや、まさかね。

 魔女のみならず、異世界勢を目の当たりにしたから否定はできないんだけどね。

 別のとこにも魔女がいるなんてこと…………ないよね?


「まぁ…………いっか!」


 どうせ俺には関係ないし!

 

「さてさて、初当たりは軽いんだからそろそろ確変入ってくださいよぉ?」

「ではそろそろ私も魔法を……」


 そして今日も師匠と並んでパチを打つ。

 結果? 結果は気にするんじゃない。今日は顔認証を突破したことが成果なんだからなッ! 


 その後も初当たりを重ね、ようやく確変に入って……



 -20K。


 

「大いなる陰謀だと思う」

「……ヒキの問題では?」

「やったんですよ! 必死に! その結果がこれなんですよ!」


 多分朝の占いを見なかったのが原因だと思います!!


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