焼肉 魔女もたまには大炎上
「んぐっ…………ん…………んぅ…………ぷはぁ! もう1杯!」
「シルバちゃん荒れてるわねー」
焼肉屋の座敷席に通された俺たち。しかし1人は肉の前にすでに酒である。
銀髪の魔女は初っ端から中ジョッキを煽る。ちょっと前に魔法《《少女》》と話を聞いていたはずだが……まぁ飲酒ができる少女なのだろう。少女、である。
肉を喰らうどころか、10杯目の酒を胃袋に注ぎこみ、すでに赤ら顔。なんとも珍しい光景だ。というか焼肉に来て一切何も食べずに酒ってどうなん?
「なんですか刹那ぁ! 何か不満でもぉ!?」
「珍しく出来上がってますな」
「分身したけど負けちゃったからねぇ。当日のヒキを計算に入れなかったのが敗因かなぁ~」
「失敗ではありませんぅ~序盤で引いていれば成功だったんですぅ~」
「キャラ変わってんがな…………」
隣では剣聖と女騎士が肉を焼き、既に20人前は平らげている。人の奢りだと思ってからに、高いもんばっかり食ってやがる。
「んぅ~こちらのお肉もおいしいですね~!」
「あ、僕の肉っ」
混沌極まる焼肉打ち上げ。もちっと平和に進められないものかね、と思いつつ己の領域で肉を焼き進める。
「こらぁ刹那ぁ! 私の酒を飲めぇ」
「めんどくせぇぞこいつ。師匠ぉ!」
「まぁまぁ、魔法で失敗した時はこのくらい羽目外してもいいんじゃなぁい〜?」
「ダル絡みはあんただけで十分なんだよ」
「すみませーん、特上10人前〜」
「先生っ、デザート食べてもいいですかっ⁉︎」
「あ、おねいさ〜ん。追加のお酒くださぁい」
めんどくせぇ……!!
もはやフリーダムと化した卓に調律者はいない。ある者はひたすら肉、あるものは甘味、ある者は酒……奉行の出る幕はないらしい。
「ふっ、己をコントロールできない愚か者達よ。すみませ〜ん、黒烏龍茶ひとつぅ!」
酒もいいけど脂には烏龍茶よ。
異世界人のペースに付き合っていては身がもたん。
「こらぁ刹那ぁ! 私の酒をのめぇい!!」
「おい、誰かこの魔女を止めろ!」
「おいひぃ」
「ご飯おかわりを〜」
「やっぱりお酒だよねぇ」
誰も聞いちゃいない。脂で大炎上する網の上を他所に、魔女に頬を突かれる。
「おらおらぁ、飲めよぉ」
「ギャップ的に1番めんどくせぇのはお前だな」
結局今日出した玉以上に食われ飲まれ、財布の中身はほぼ空になってしまった。あぁさらば諭吉栄一、パチンコのお金って流動的なのよね……
「二次会行く人この指とーまれ☆」
◇ ◇ ◇
翌日、珍しくベッドの上で目覚めた。カーテンを閉めることすら忘れてビニールハウスよろしく、日光が顔を焼く。
やたら室内が暖かい、しかしエアコンはオフのまま……魔法?
「しかし、風邪ン時に見る夢みたいだったな……」
パチンコ攻略に失敗して荒れる魔女を見たのは初めてかもしれない。まーじでダルかったわ。結局3軒目まで連れ回されるし……
「ぐぉぉー」
「ぐううううう」
「ぶしゅぅぅぅ」
ベッドの下にはエルフ師匠に女騎士、剣聖が毛布に埋もれながらアホ面で寝ていた。見てください、1日で20万円以上負けている方々です。
「酒くさ……ったく、顔でも洗う……ん?」
ベッドには自分だけかと思ったが、隣に何かいる。いやーまさか、まさかそんな……
「…………」
布団をめくると、薄着の魔女が隣で寝ていた。
そして目覚めた魔女と視線が合い、
そこから先は、よく覚えていない。




