Round 13 桃髪の剣聖によるスロット攻略法『未来響応』
幸先良いヒキを剣聖に見せつつラッシュスタート。ここからは獲得枚数とレア役でさらにゲーム数を伸ばして出玉を増やすターンである。
「祈れ、そうすれば当たる」
「これが先生の先生たちが使っていた技……」
……意外と当たるもんだな。普段は神様に祈っても監視カメラ睨んでも当たらないのに。
「祈れば、当たりますかね……?」
「当たる」
多分。
噛み合うと楽しいとはよく言ったもんだ。さてさて、ラッシュを楽しませてもらおうかね。
「うぅ〜当たれっ!」
よほど俺の実践がインパクトに残っているのか、剣聖ちゃんはぼそぼそと呟きながらスロットを打ち始めた。
「ダメダメぇ、ここぞって時に祈らないと」
「なるほど……!」
ようやくスロット初心者に戻ってきたな。技の多用で誤魔化してたけど、そもそも現代のおのぼりさんみたいなもんだし。
……じゃあ他の奴らは馴染みすぎだろ。
◇ ◇ ◇
時に……祈りは神に通じるが、必ずしも聞き届けられるわけではない。
「う、うぅ〜」
「見事な負けパターン」
グラフは右肩下がり一直線。天井を1回踏んで即駆け抜け、現在100ゲーム。『神色自若』も発動できず、剣聖の名は錆びていく。俺の方はというと、1500枚ほどで終了し、ちまちまと当たりを重ねていた。
「どうして天井なんて行くんですかぁっ……⁉︎」
「700ゲームちょいだろ? 優しいもんだぜ、昔は1500ゲームとかあったんだからよ」
過去を引き合いに出すとは、俺も歳を取ってしまった……昔はあんまスロット打ってなかったけどな。
「現状最悪です〜」
「そりゃ今はな。でもこっから当たるかもしれない」
「当たらないかもしれないじゃないですかーっ!」
「完っ全に後ろ向きだな……」
遊技当初の明るさはどこ行った。
本来なら、これで『スロットなんて懲り懲りだ』とか思わせて異世界に帰らせた方がいいのかもしれないが……
「こんな状況でもな、いきなりグラフが右肩上がりにピーンと伸びる時もあるんだよ」
落ち込んだ分をバネにしたかのような大勝ち。スマスロより前で言うなら、大量のメダルを箱に詰めた遊技客がよくいたもんだ。
「まだ天井1回だぜ? イケるイケる。未来は明るいぜガール!」
「未来……あ」
しょうもない話をしていると、剣聖の台がちょうどCZに入った。どう見ても弱い演出だが、唐突にチャンスアップが割り込む。
「お?」
「もしかして──」
キャラクターが共闘し、敵を撃破。見事にCZ突破からの……ラッシュ突入だ。
「これが未知の未来……!」
「未来は無限に広がっているぅ〜」
グラフがプラスに転じるかどうかは、神のみぞ知る未来だ。それを決めるのは……
「自分のヒキ次第で、未来は決まる! そうだ! 今がダメなら、未来の僕がいるじゃないかっ!!」
「お? おぅ?」
いよいよ当たりからのラッシュ開始。第1ゲームはゲーム数を決める大事な大事な1打目。
一撃必打!
その1ゲームをヒキでぶん殴れ!!
今の剣聖にこの状況をひっくり返すには、新たな技を使うしかない……が!
「見果てぬ先があるなら、僕は! 今この瞬間のために、未来を払うっ!」
何か掴んだのか、剣聖の目は燃えている。そりゃもうどぎつくピンクに。そして刀を手に取る姿は少し大人っぽく、髪は伸び凛々しい剣聖の面影が重なる。
「たとえ未来の好機を逃すとしても、僕は――――ッ!」
もう剣聖の目に迷いはない……こいつは、本物だ!
パチンカス、スロッカスはいつも願う。それは未来ではなく、今を生きるために……今という刹那に脳汁を溢れ出させるために。
右肩下がりのスランプグラフへ
何枚もの諭吉の果ての絶望へ
いつだって
貫き抗う言葉はひとつ
「――だとしてもッ!」
異世界の剣聖は叫ぶ。そして超高速の居合いを放ち、レバーオン。研ぎ澄まされた一打は、剣聖に新たな力を呼び覚ますのだ!
未
来
響
応
ッ
!
覚醒の中途は、まだ望んだ未来を掴むことはない。けれど、一打勝負の中で確実に、スイカを見せた。ラッシュは100ゲームスタート。
「今ッ! 僕は! 未来を手にしましたッ!」
右手を掲げ、桃髪の剣聖は高らかに宣言した。勝てるかどうかはともかく、現金が追い込まれて覚醒である。
……まぁ、スロットなんだけどね。
◇ ◇ ◇
◯剣聖剣技3『未来響応』
覚醒した剣聖の新技。
未来に引くレア役を現在に呼び寄せる。
ただし、未来に引くレア役は引けなくなる。つまり……




