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異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
異世界の剣聖、パチスロを打つ

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127/225

Round 3 桃髪の剣聖によるパチンコ攻略法『落花流水』


「当たればって……残りこれだけで当てれるんですかっ⁉︎」

「知らな〜い」

「うっ、そんなぁ……」


 そもそも俺も3万近く消えてるんですが。どうなってやがる……! 


「ここで引いたら今までの負け分が無駄になんぞ」


 後退は終わりを意味する。俺も例外ではない。他人の心配をしているほど余裕はないのだ。

 

「ここでもコンコルド理論ですか……」

「せっちゃん相変わらずだねぇ~」

「じゃかぁしぃっ、戦いの最中だぞ!」

「おやおや……くわばらくわばら」


 勝手に煽りに来て勝手に魔女とエルフ師匠は消えていった……


「先生ぇ~」

「ええい、要は小当たりを引かなきゃいいんだよ。()()()()()()()()()

「なるほど、雑魚は先に消してしまえということですね!」


 ……なんだか誤解されてるような。

 途端に目を輝かせた剣聖は、足元の刀を手に取った。赤い鞘から銀色の刃が顔を覗かせ…………


「おいおいおいおい、台に何する気だ⁉︎」

「ご心配なく! これぞ我が剣技、そのひとつ──」


 わずかに刀を引き抜き、瞬時に収め鍔を鳴らした。




     落

        花

     流

        水




 それは、目の錯覚か。

 パチンコ台がほんの一瞬、真っ二つにかれたように視界が切れた。


「ん……?」


 パチパチ瞬きしてみたものの、どうやら見間違いらしい。ぜひ見間違いであってほしい。器物破損じゃないよな?


「露払いは済ませました、あとは本命を叩くのみですっ!」

「は?」


 まさか……こいつも使うのか。

 パチンコ攻略法を…………⁉


「邪魔な『ちゃーじ』は僕の剣で斬りました! だからあとは、大当たりを引くだけ。ですよね⁉」


 まさかまさか……あの一瞬でパチンコ台に魔法……かどうかは知らんが、攻略法を仕掛けたのか。チャージを斬っただぁ? 機種のスペックを剣技で超えるな!


「ま、まぁ仰る通り」


 露払い…………

 待てよ、もしチャージを斬っただけなら、確率が変わったわけじゃないよな? だったら別に恐れることはないんじゃないか? むしろ、小当たりチャージもなくなったなら玉持ちも悪くなる。つまり……


 賞球も少ないMAX機というわけだ。


「よーし、当ててみせますよ~!」

「頑張れば……いいんじゃない」


 

 ◇ ◇ ◇



 気合を入れたのも過去の話。

 1万円、5000円と数字が減っていき、剣聖ちゃんの表情がみるみるうちに沈んでいく。そして、


「うぅ……あと500円…………」

「はーっはっはっは! 残念だったなぁ剣聖ちゃんッ‼ パチンコはそう甘いもんじゃないってことがわかったかな?」


 とはいえ、こちらも5万円消えている。いや、考えろ……異世界の厄介事を5万で解決したと思えば安いもの、実にクレバーな発想の転換だ。


「わかったら残りの金でお菓子でも買って……」

「まだですッ!」


 最終突撃と言わんばかりに、剣聖は貸玉のパネルを押した。現金は玉となり、玉は台へ転送……剣聖の残金はこれで0だ。


「僕は、諦めませんッ!」


 こいつも、素質アリ(パチンカス)なのか…………ッ⁉

 クソっ、どうして異世界の打ち手は頭のおかしな奴ばかりなんだ。ここで退いたら5万が無駄になっちまう。こいつが果てるまで付き合うしかねぇ!


 こちらも5万500円目を追加した瞬間、剣聖の台のレバーが振動した。


「うっそ」

「先生、何か来ました⁉」


 やめろやめろやめろ、このパターンはパチンコにハマってしまう1番危ないケースだぞ。このまま外れて終わってしまえぇっ!


 こちらの胸中とは真逆に、画面には赤文字赤フラッシュ、そして上位リーチと発展し、原作にはない激熱演出まで発生してしまう。非常にまずい、とてもすごく。


「いけっー!」

(当たるな当たるな当たるなーッ!)


 悪意の応援虚しく、液晶画面の主人公達は勝利してしまった……


「先生っ、当たり、当たりですよ!」

「ヨ、ヨカッタネ…………」


 確変来るな確変来るな確変来るな確変来るな確変来るな確変来るなァッ!!


 偶数だった大当たりの図柄は、ここまでの不運を吐き出すように「777」に変化。確変当否を決める以前に、ラッキートリガー発動である。


「ぃやったぁっ! やりました、やりましたよ先生っ!」

「いや、まだだから。まだ駆け抜けの可能性もあるから」

「気を抜くなということですね⁉ わかりました!」


 違うそうじゃない。

 そうじゃない…………そうじゃないんだ…………!

 お前は今、剣聖からパチンカスになろうとしているんだッ!!


 俺は止めたからな……もう知らねぇぞ。

 暗雲を示すが如く……目の前に『CHARGE』の文字が止まり、俺の初当たりは約900回転で記録ストップとなってしまった。

 

 対照的に、失った玉を取り戻すように剣聖の台は火を吹き始めた。


「5発で決めますよーッ!」


 この台最大の特徴はV入賞を5個溜めて一気に放出するが……そんなことは知らなさそうな剣聖はただ純粋に打ち込む。

 

 1つV。

 2つV。

 3つハズレ。

 4つハズレ。

 5つV。

 あっという間に4500発。恐ろしい子……!!


「先生、一気に大当たりですっ!」

「う、うん……スゴイネ……」


 一度当たり始めた台は止まらない。

 2連3連と続く台の大当たりは2桁を超えハイパービギナーズラックを積み上げていくのだった……


 隣のグラフは右肩上がり。

 俺のグラフは右肩下がり。


「あれ、止まっちゃいました。これ何ですか先生?」


 


 『コンプリート機能が作動しました』

 1日に払出可能な上限に達しました

    本日は遊技終了です




「……なんでしょうね」


 剣聖、やらかしました。


 95000発(打ち止め)である。

 遊技機の限界を最初から引き出した少女、桃髪の剣聖。

 もう踏み出してしまった道を戻ることはできない。彼女のパチンカス道も始まってしまったというわけだ。


 そして……主義刹那おもよしせつな、マイナス100k(10万円)

 もう()()()()()辞めます。



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