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異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
パチンカスの魔女にも師匠がいるって本当ですか?

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Round 19 アルティメットパチンカス


 繰り返す。

 魔女は何度でも繰り返す。

 既に3回繰り返しても魔女の様子に変化はない……むしろテンションが上がっている。


「ふふっ、以前の時空操作とは比較にならない魔力効率です。100回でも200回でもやり直しますよ」

「はいはーい、インチキだと思いまぁす!」


 視聴者が通報しないうちに異議申し立て。レフェリーは真央マオと笑流布ルフ……要するに魔王と師匠である。


「う〜む、以前聞いた時間逆行なら確変回数を戻すから確かにインチキじゃが」

「これは当たった後の結果をやり直してるだけだからねぇ〜」


 まぁそれはそう。

 『当たった』という事実は変わらないし、結局のところラッキートリガーを引けるかは本人次第。


「っていうか、局所的な時空操作なら簡単そう。わえもやってみよぉ」


 ちょうどラスボス戦のボーナスを引いたエルフ師匠も、一回敗北の後に銀髪の魔女の魔法を発動した。


 ◯やってみようでできるのか?

 ◯これマジ?

 ◯ヤバすぎて草

 ◯弟子にしてください


「さすがは師匠、もう解析しましたか」

「むふふ〜、魔法の基本を教えたのは誰だったかなぁ〜?」


 対決じゃなかったのかよ!!

 さらっと時空を歪ませるんじゃねぇ!


「せっちゃ……スミレちゃんもやっとくぅ?」

「繰り返せばトリガーを引けますってか。これだから魔法使いは困るぜ」


 ◯負け惜しみで草

 ◯やーい魔力ゼロ

 ◯魔力なし余裕なし

 ◯奇跡も魔法もないよ

 

 わかってませんなぁ……

 魔法に頼らずとも、引けばよし。一度で引けぬなら、何度でも大当たりを引けばよし! 玉も増えるからな!


「お?」


 視聴者と異世界パーティーに侮られる中、5個目の保留に緑保留が出現した。ちょっと騒がしくなり、保留は近づく。


 感覚でわかる。

 これは当たる。

 

「くっ、また負けましたか」

「余裕余裕〜まだまだいくよぉ」


 パチンカスとは常に己のヒキで道を切り開く生き物だ。だから──


 キュインキュインキュイン!


 その福音は、聞き慣れたパトランプの音ではない。3連続の「キュイン」という音とともに、握っていたハンドルは光り輝く。


 高音による酩酊感は脳汁を湧き出させある種のトリップだ。


「効くぅ……‼︎」


 確変中のハンドルフラッシュは言わずもがな大当たり濃厚。


 ◯この音がたまらない

 ◯やはりパチンカス、引く時は引く

 ◯キュインキュインキュイン


「兄弟子、顔がイっとるぞぃ」

「画角を変えてください、アカウントが凍結されます」

「お前らな、これがどういうことか分かるだろ」


 ストーリーリーチを難なく突破すると、俺もラスボス戦へ。V入賞を手早くすませると、演出は今まで見てきた通り弱攻撃。しかし、


 もういいんだ。


 当否ボタンもスカ。


「あー残念だね、せっちゃ……」

「いえ」


 もういいんだよ。


 演出が終わり、台が静まる。

 が、囁くように『ある少女』の声が聞こえる。


 刹那、画面は暗転する。


「来たッ!」


 魔法少女である『彼女』が、そっと語りかける。


 ◯ラッキートリガーだ!

 ◯魔法使ってないやん

 ◯ヒキtueeeeee

 ◯おめでとう!


「シャァオラッ! 魔法なしで引いてやったぜぃ!」


 本機最大の楽しみどころへ誰よりも先に到達したわけだ。魔法なしで。これぞ、アルティメットパチンカスである。


「じゃあ、お二人さん……()で待ってるぜ」


 ◯クッソダサくて草

 ◯上……なのか?

 ◯どっこいどっこいだろ

 ◯争いは同じレベルでしか(ry


「うぉい! ちょっとはこっちを持ち上げろよな⁉︎」


 せっかくいい感じに言ったのによぉ。

 締まらないまま上位ラッシュへ突入しようとすると、魔女の台がけたたましく鳴った。


「待つ? ご冗談を。誰を差し置いて上へ行くと?」


 ついに白銀シルバも上位昇格。

 やはりパチンカスの魔女、侮れない。



 ◇ ◇ ◇



「実践終了〜お疲れ様でしたぁ☆」

 

 途中休憩を挟みつつ、夕方まで打ち続けて実践を終えた。最大光量で打った影響か、目がチカチカする。


「それでは結果発表です、師匠から☆」

「まずはわえね! むふふ〜投資額を差し引いて……+13240発!」


 ◯さすが師匠、かわいいし強い

 ◯途中から普通にヒキ強かったよな

 ◯かわいいは正義


「いやぁ〜照れるなぁ〜もっと褒めて〜」

「お次はやっぱり途中から打ちたくなって参戦したマオちゃん☆」

「うむ! 最初にハマりはしたがキリよく+5000発じゃ!」


 ◯結局打ってたのは笑った

 ◯むしろ1000ハマりからよく勝ったな

 ◯確変突入率100%という強運よ

 ◯魔王様公務が溜まってるのでお覚悟を


「次はこの私、白銀シルバです! 出玉の方は+26896発、大勝利でした〜☆」


 ◯マジで魔法使いだったわ

 ◯やりたい放題やんけ

 ◯昼から普通に打ってたしな

 ◯初当たり早いのは純粋に豪運

 ◯なんで全部30回転で引き戻すんだよw


「そして最後はスミレちゃん! ……あれ、スミレちゃーん?」


 ◯どうしたパチンカス

 ◯何があったパチンカス

 ◯起きろパチンカス


「こんな、はずでは……ぉぁ」


 墨乃スミレ改め、主義刹那おもよしせつな。収支、−16000発。ぶっちぎりの最下位である。


 魔王と楽しくハマってたのに、あいつだけ抜けやがって……!


 ◯上に行ったの最初だけだったな

 ◯下で待ってるで

 ◯パチンカス爆散!

 ◯わけがわからないよ


 まぁ、溜まった酒代を考えれば魔女に補填してもらえるんだが……そういうことではない。


 くそっ! 途中までは調子良かったのに!!


「さてさて、お別れの挨拶の前に一部視聴者へメッセージです☆」

「ん、メッセージ?」


 営業スマイルから早変わり。ニコニコした表情は消え失せ、銀髪の魔女は鋭い眼光でカメラを射抜く。


「この燃え尽きている存在は単なるパチンカスであり、余計な企みができる者ではありません。ちょっとした研究対象というだけです」


 ◯辛辣ゥッ

 ◯何の研究?

 ◯馬鹿なそんなこと信じられるはずない

 ◯既に籠絡されていることは把握済みだ

 ◯今日のコメ変な奴多くね?

 ◯アンチだろ

 ◯有名になったなぁ〜


 やっとコメント欄でも妙な反応への違和感に気づき始めた。さらに魔女の言葉は続く。


「もうお分かりかと思いますが、私はこちらの世界で時を操る魔法の改良に成功しました。私の領域へ踏み入るというなら本気で潰しますので……お気をつけて☆」


 そして杖を振ると、視聴者たちのコメントが消えていく。スマホ画面の配信も巻き戻っていき、ゼロに戻った。


「なるほどぉ、国への牽制に魔法のアピールをしたわけかぁ」

「念の為、です」

「まぁ〜せっちゃんの無害アピールにはなったんじゃないのぉ?」

「うむ! 一件落着じゃ!」


 敵意はないよってか。

 自分の預かり知らぬところで騒がれているのもなんだか変な感じである。パチンカスが異世界侵略なんぞするかっつうの。



 というか……異世界の人間に『パチンカス』って通じるの?


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