表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/223

Round 12 女騎士によるパチンコ攻略法『この身は敗北を許さず』


 魔女の助力もありプラス域も束の間、確変も取れずマイナス収支で終えた先週。ついに久々の顔認証《遠隔》が発動してしまったらしい……しばらくマイホールには近づかない方がいいな。




 ……冗談はほどほどにして。




「………………」


 週末。


 馴染みの店に行くのは一旦やめて別の店舗を選び、甘パチに手を出した。皆さんご存じ『傾奇者』の()()の台。かつてミドル機では大量出玉で多くのユーザーを虜にした漫画原作の台だ。


 ちなみに甘パチというのは大体99分の1で当たるお手軽パチンコだ。その代わり出玉は少ないがまったり遊べる……おそらく。

 ミドルタイプの台はどうにも疲れていけない。今日は収支は忘れてのんびり遊んだら適当なところで帰ろう。


 ……そう思っていたのだが、


「むぅ~、この武人の槍なかなか……」

 

 まるで恒例のように変な奴がいるのである。しかも真隣に。


 それも……甲冑だ。西洋甲冑。

 銀色に輝く甲冑。兜は被っておらず、顔はどうみても外国人の女。キリっとした顔立ちと、緑色の瞳で台を眺めていた。髪は日本人離れした金髪で後頭部で結って(ポニーテールにして)いる。髪が揺れる度、ちょっとお花のいい匂い。年齢は分からないが、銀髪の魔女と同い年くらいか?


 さしずめ女騎士である。

 その騎士様がさっきから迷惑行為と言わんばかりにこちらの台を覗き込んでいた。


「あの、ジロジロ見るのやめてもらっていいっすか?」

「え? ……あぁ、これはすまない。普段目にしないものでつい……」


 えへへ~、と凛とした表情を破顔させたる女騎士。ちょっとかわいい。


「もし良ければ、この遊技の興じ方を教えてもらえないだろうか?」

「…………」


 めんどくせぇ……

 こいつ絶対あの魔女(パチンカス)の関係者だろ。うわぁ、絶対めんどくせぇ奴。


「大丈夫だ! 資金ならあるぞ!」


 懐から出てきた財布。異世界の通貨かと思えば、諭吉さんがいっぱいこんにちは。つーかお前、来なくていいだろ。

 と思いつつ、威圧感のある美形に押されて教えることに。


「んじゃあ、まずそのお金を一枚そこに入れて……」

「わかった!」


 女騎士はキラキラした目で万券投入。打ち方を教えて一緒にパチンコを始める。すると数分後、


「お、おい! 違う色の球が画面に出たぞ!」


 液晶にツッコみはないのな……とチラ見すると金色の手毬が5個目の保留に出現していた。


 これが……ビギナーズラックッ!

 傾奇者の上位リーチでぬるっと大当たり。あとは確変に入るかどうかだが……


「うむ! いい馬だな、自分も乗ってみたいぞ!」


 悪魔の馬に乗りたいとか……マジで思ってそう。

 確変当否の左下レバーを女騎士が強く押し込むと、画面いっぱいに虹色が広がる。


「な、なんだ!?」

「確変だよ、こっからいっぱい球だそうねって話。おススメは一騎駆ってやつ」

「う、うむ……戦だな!」


 たどたどしくも駆け抜けはなく、一つ目の城門を突破した。


「気持ちいいな、これは!」


 騎士様、レバーをガチャガチャしたらダメです。

 ……しかし、楽しい時間も束の間。規定回数に到達した。この台は右打ち中に『転落』の当たりを引くと確変が終わるのだ。その成否は赤軍が勝てば否定なのだが……


「なにっ!? この程度で弱音を吐くのか!」

「いや、弱音じゃなくて騎士様のヒキで……」


 特にチャンスアップはない。いかにも転落の雰囲気である。

 

「だめだ! まだ前田殿の勇姿を全然見ていないッ!」


 ダメと言われても……


「ならばやることは一つ!」


 女騎士は首元に下げていたペンダントを取ると、台に掲げる。小さな紫色の水晶が光を放ち輝いた。


「赤軍よ、()()()()()()()()()()!」

「まぶしっ――!」


 迷惑行為です、店員さーん! なんか光るぅ~!



 一瞬の発光の後、ボタン連打もなく、


 赤軍が勝利し、確変が継続していた。


「『この身は敗北を許さずプレイ・フォー・ヴィクトリー』……戦いは、まだまだこれからだッ!」


 ※店内では静かに遊びましょう。



 ◇ ◇ ◇


 参考機種:PA真・花の慶次2 漆黒の衝撃

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ