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異世界の魔女、現代でパチンカスになる  作者: ムタムッタ
パチンカスの魔女にも師匠がいるって本当ですか?
114/223

Round14 先人達によるパチンコ攻略法『必殺、トイレ打法』


 画面下に鎮座する赤いパトランプの絵と、一緒に映るは「20」の数字。手首のスナップを用いて1回ずつ確実に押していく。


「アタタタタタタタタタタタタタタタタ!」

「それ疲れない?」

「アタァッ!」


 茶々を入れてくるエルフ師匠の額にも攻撃。やはり物理、魔法で塞がれることなくエルフは無様にのけぞる。


「あだっ⁉︎」

「パトランプ道を甘く見るな!」

「外れてるじゃないさ〜」


 ランプは光ることなく普通に外れた。こんなことでいちいち反応する必要などない。


「そんなことよりぃ、異世界来ない〜?」

「NO!」

「可愛い子いっぱいいるよぉ?」

「ノー!」

「強情ぉ〜」

「大体そっちの世界行ってる間、仕事どーすんだよ」

「有給使えばいいじゃ〜ん」

「ハッ、異世界なんてしょうもない理由が俺の有給と同価値と思うなよ!」

「もし来てくれたら〜、パチンコに使える魔法教えちゃうよ」


 なんだってここまで勧誘するのか。魔法を使う才能なんてないはずなんだよなぁ。


「ドリンクいかがですか〜?」

「あ、おねがいしゃーす」


 ふらりとやってきたコーヒーレディにアイスコーヒーを頼む。負けていなければ存分に利用したい。


「残念だが俺は巻き込まれるのはいいが自分で使う気はねー。大体、魔法使えないし」


 以前は例外(TS化)して、魔女から杖借りてからだしな。


「素養がなくてもなんとかなるさ〜。理由を知りたいなら、首を縦に振ってくれればいいよぉ」

「じゃいいや」


 やってきたコーヒーを一気飲み。そして連続でアイスコーヒー注文。まだ出玉は残ってるが……そろそろ当てたい。


「むぅ、ノリが悪い〜!」

「言ったろうが、今はパトランプのために打ってんだよ」

「行動原理が謎すぎる……あ、見てみて60って出た」


 エルフ師匠の当該保留には二桁後半の数字、そして俺にも福音の兆し。


「フゥン、俺は80だ」

 

 まず当てねば話にならない。例の如く連打の姿勢を取る。対照的にエルフ師匠はボタンを長押し。


「こら、長押しはいかんぜおばあちゃん」

「だってめんどくさいもん。あとおばあちゃん言うなー!」


 刻むのが楽しいのではないか。

 これだから異世界は……


 ――キュインキュイン! キュインキュイン! キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュイン!


 渇望している福音はエルフ師匠へ先に鳴ってしまった。プラスチックの匂いの混じっているであろう風を額に浴びながら、師匠はこちらへ自慢げな表情を浮かべた。


「ぃやったぁ〜! むっふっふ〜」

「やるじゃない……!」


 ここは素直に師匠のヒキを褒めよう。土俵に上がらねばパチンコは楽しくない。俺の台の方はというと70、60、50と数字は減るものの、ランプ兼ボタンが鳴る素振りはない。


「あ、あれぇ〜?」

「わは、魔法がないと無力だねぇ」

「お前も使ってないだろ」


 20、10と来ても鳴らず、そしてバトルリーチに発展してついに数字は消えてしまった。


「いやまだだから、80自体目安だから」


 キラッキラに眩しい光の中、ボタンを押すも……ハズレ。隣は無事確変が始まっている。


「むっふっふ〜」


 エルフ師匠の謎の勝ち誇った顔を他所に、画面の数字と保留は消えない。信頼度の高いパトランプの数字、上位リーチまで持って行く演出、まだ可能性のある演出がひとつ。


「ざんね~n…………」

「いや」


 ──そして、『一時停止』のマークが表示される。


「やっぱりな、復活だッ!」


 危ない危ない……マジでヒヤッとしたぞ。このままエルフ師匠にドヤ顔されるのも腹立つからな。しかしパトランプが鳴らなかったということはつまり……通常である。気を落ち着けるため、再び運ばれたアイスコーヒーを一気飲み。よし、喉は潤った。


「あれれ〜? せっちゃん確変は?」

「問題ないな」


 今回の台は大当たり後、通常なら時短150回、確変でも150回もらえる。通常なら1/319をもう1回、確変なら最初は1/102、2回目以降は1/109とかなんとか。1/319を150回以内に当てればいいのだ。


 ……のだが、今回エルフ師匠の勧誘を前にほんのすこーし揺らいでいる。もし魔法を使えたら、とか。どうせ……碌な目には遭わないんだけどな。


 右打ちが始まったにも関わらず打ち始めない俺に、エルフ師匠が顔を覗き込む。


「打たないの?」

「……そろそろアレ、やるか」


 もう2回勝ってるけど実力差をわからせるいい機会だ。

 異世界人の知らぬ、()()()()()()を────


「……アレ?」

「ちょっと便所」

「もぉ~言わなくていいよぉ」


 トイレでやることなど決まってるのでカット、コーヒーを飲み過ぎてしまった。昼食抜きの実践でのごまかしも考えもんだな。


 用を済ませ、丁寧に手を洗い、これまた丁寧に乾かし、紙おしぼりで拭き上げる。そして席に戻るとエルフ師匠は確変で当たったのだろう、大当たりを消化していた。


「おっさきぃ、すっきりしてる間に一歩リードしてるよぉ」

「……やれやれ、そんなことでドヤ顔されてもなぁ」

「流石に強がりじゃない?」

「甘いな師匠、パチンカスの魔法は既に発動している!」

「無駄だよ、せっちゃんには魔力なんてないでしょぉ?」


 魔力がない、か。果たしてどうかな?

 当たる確率は通常と同じ。されど今の俺は流れが変わったパチンカス。残り回数とか、関係ないのである。


 確固たる自身を見せるように、打ち始め再開と同時に「ポワン」と効果音と共に点滅保留が現れる。澱みなく消化されていく中、それが当該保留となると「99」の数字を示した。


 ならばやることは1つ!


「アータタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!」


 連打連打連打ァッ!

 高◯名人よろしくボタンを連打すると、半分を消化する間も無く福音パトランプは鳴り響く。


 ――キュインキュイン! キュインキュイン! キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュイン!


「嘘っ? ほんとに当たったぁっ⁉︎」

「お前ら異世界人には分からんだろうが……先人達が編み出した魔法はこの世界にもあるッ!」


 これは、その攻略法がひとつ。

 異世界人たちと打つ時は基本中座しなかったからほとんど披露してないが、いま解放した。


「これが連綿と受け継がれしパチンカス奥義…………トイレ打法だぁッ!」

「な、なんじゃそりゃぁっー⁉︎」


 さぁ、確変に入ったならこっちのもんだ。凡人魔法による攻略開始ィッ!!



 ◇ ◇ ◇


 参考機種:Pとある科学の超電磁砲2

 ロングSTの台にはトイレ打法をしましょう。当たります()


 他にはタバコ休憩打法など。

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