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第4話「はいぃぃ?!」

 ──成人まで残り2日。


 イーサと会った2日間。そのどちらでも最後には心臓の音が聞こえた気がしたアリス。だが、アリスが10歳未満までに知った知識にある感情、そしてイーサのおかげで取り戻した感情。そのどちらにも当てはまるモノではなく、終始気になっていた。


 今日は昼に王国民も参加するアリス最後の謁見式があった。アリスの美しい姿も最後なのだと思い、王国民は涙を流していた。


 ──アリスを除いて。


 ◆◇◆


 イーサとアリスが過ごすようになって、アリスの感情が戻ってきていることを知ったソルトは、積極的に時間を作るようにしていた。


 この病で感情が戻った、という事例は過去にない。だからこそソルトは0.1%でも治る可能性にかけていた。それはもう、藁にもすがるような想いで。


 今日は2人で食事である。


 もちろん、ソルトもアリスが嫌がれば、すぐにでもイーサにアリスへの接近禁止令を出す。


 だが、今のアリスはイーサとの予定を伝えられると、少し《《わくわく》》しているようにも見えるのだ。ソルトはその昔に戻ったかのような感情表現に涙が込み上げてくる。


「は、はは……これは豪華だね……」


 王国2番手の勢力のハーリス家の長男ですら、思わず声を漏らす。


 アリスとイーサの間に挟まるように存在するテーブルの上には、所狭しと見るからに豪華な食事が並んでいた。


「なんでも、もうすぐ死ぬ私に少しでもいい物を食べてほしいんだそうです」

「嬉しかった?」

「何も感じませんでしたよ。ただ──」


 アリスは胸に手を当て、イーサと視線が交わらないように顔を下に向ける。


「……イーサさんと会うようになって、今では嬉しいと感じています」

「……うん。ちょっとは感情が戻ってきたみたいだね」


 アリスがそう言うと、イーサは自分ごとのように喜ぶ。


「どうして、イーサさんも嬉しそうなのですか?」

「おっ、それは《《疑問》》?」

「……昨日のアレから感じるようになったんです」

「それは何より、っと。質問だったね。だけど……」


 イーサはシチューをスプーンですくい、それをアリスの方へと向ける。


「まだ教えれないかな」

「……そのスプーンはどういうおつもりで?」

「ん? あーん。食べない?」

「……今の私には『羞恥心』という感情があるんです」

「僕にされるの、恥ずかしいんだ?」

「そんなことは……」


 口ではそう言いつつも、アリスが恥ずかしがっていると、イーサは自分で食べてしまう。


「顔。真っ赤なんだけどねぇ……」

「えっ?!」


 アリスは更に恥ずかしくなって、手で顔を覆ってしまう。


 イーサはその様子を見て、上品に笑いながら言う。


「冗談だよ」

「……もうっ」

「《《驚き》》、ゲットだね」


(耳のほうが赤いし、嘘じゃないからね)


 アリスは、他の人と比べても忖度ないほどの返しをする。


 すると、イーサはまたもやシチューの乗ったスプーンをアリスの方へ向ける。


「え……?」

「いや、恥ずかしくないなら食べてくれるかなって」


 否定した手前、やっぱり恥ずかしいと伝えるのはもっと恥ずかしい。


「恥ずかしくは、ない、ですけど……」

「なら」


 イーサはいつもの優しい笑顔の中にいたずらっ子のような笑みも入った表情を浮かべる。そんな姿もモテるのだが。


 アリスは視線を泳がせ、体をもじもじと動かす。そうして数秒、意を決したアリスは目をつむり、体を少し前のめりにし口を開ける。


 イーサはそこにスプーンを持っていく。


「ん……」


 アリスは顔が熱くなるのを自覚しながら、ゆっくりとシチューを食べる。


「ん。どう?」


 イーサがそう問いかけると、アリスは薄く目を開き、目をそらしながら小さく呟く。


「……おいしいです」

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