交渉
「それで俺のところにきたのか。」
賑わう三年一組の教室の窓際最後尾、最上級の席に座る男子生徒は心底迷惑そうにそう言った。
「ああ!それで如月さんがどうして居なくなったのか心当たりは有るか!?あったら教えて……」「無いね。」
バッサリだった。有無を言わさぬ断固とした意思がそこにはあった。
「はやいでヤンス!せめて会長の言うことを全部聞いてから断って欲しいでやんす!」
「嫌だね。俺はあの女が嫌いなんだ。できれば話題にもしたくないぐらいにね。」
「……本当に困っいるんだ!頼む!」
「知らんわ。」
どれだけ男衆が頼み込もうと男子生徒は一蹴するばかりだ。ハナっから取り合う気が無いのだろう。もはや男子生徒は会長やハカセの顔を見てすらいなかった。
「どうしてもダメですか?」
今まで沈黙を守ってきた紅一点はついに口を開いた。
「決まってるだろ。ただでさえあの女の話だってのに、お前らの話を聞く筋合いは……っ!」
つらつらと否定の理由を並べていた男子生徒急に顔を顰めた。
「急にどうしたでヤンスか?お腹でも痛いでヤンスか!?」
「何!?それは大変だ!早く保険室に……」
ハカセと会長は慌てて男子生徒の様子を見るが、
「いや。大丈夫だ。問題無い……それより、事情が変わった。お前らの話を聞いても構わないぞ。」
「えっ本当にいいの?」
紅一点は驚きの表情を浮かべて言った。
「本当にいい。しつこいぞ。」
その言葉を聞くやいなや、ハカセは飛び上がって言った。
「じゃあ知っていることを聞かせて欲しいでヤンス!」
「ああ、だけどここじゃちょっと人が多すぎる。放課後剣道場に行くから、そこで待っていてくれ。」
「そうか!分かった!ハカセ、片桐、帰るぞ!」
そう言い、会長は教室を去っていった。




