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異世界太平記  作者: 淡嶺雲
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第29話 エスターラントへ

 ライラとの出会いの翌日、サラマンダー神殿の遥拝を行うと、一行はサン・ピオールを後にした。


 街道を東へと進む。サン・ピオールから南へ30リーグ進んで海に出る街道もあるが、これは険しい山道を越えなくてはならない。その港も、聖地から遠い。であるから、イターキに向かう巡礼者はここから東に向かい、帝都から東へと伸びるファルクサ街道と合流し、東都ファルクサへと向かうのである。


 ファルクサへは約150リーグの道のりである。


「なんと、ファルクサへは150リーグもあるのですか!」ライラが叫んだ「それでは、ひーふーみーよ、一日に10リーグ進んだとしても、15日はかかるではないですか」


「まあもっとかかるんだけど」セリーヌは言った。


「そうなのですか?」


「そうだよ。雨が降ればなかなか進めないしね。1日10リーグも進める方が稀だよ」


「そうなのですか……」


 さて、そういった会話で始まった旅路であるが、しかし古代よりある程度開けた街道ではある。はじめの数日間は皆苦悶の表情にあえいでいたが、帝都から東へと延びるファルクサ街道と合流し、東方領土エスターラントのモンべリアル公爵領に足を踏み入れるに及んで、そんな苦しみは吹き飛んだ。


「ここは豊かですね」斎は言う。遠くに牧人が羊を追っている「羊の毛並はよく、畑には麦がすくすくと育っています。村も満ち足りている。いいところです」


「ええ、そうね」マルティナは言った「もうすぐ、エスターラント第二の都市、ベルフォールにつく。満ち足りているなら、冒険者の職は乏しいと思うけれど、何かあることを期待しましょう」



***



「え、ゴブリン退治?」


 斎はベルフォールの冒険者センターでつぶやいていた。無理もない、残っていた高額依頼がそれだけだったのだ。


「ええ。領主様のおかげでおおむね治安も安定しており、騎士様にお願いできる依頼はゴブリン討伐ぐらいしか……」


 受付嬢がそう言う。シャルロットは驚いたように言った。


「ゴブリンがはびこるなんて尋常じゃないわね、それは治安がいいとは言わないのではなくて?」


 じじつ、ゴブリンは厄介な相手である。ゴブリンは亜人とも悪魔の眷属とも呼ばれる緑肌の侏儒である。背丈も知能は人に劣るが夜目が効き集団で行動するのだ。村々を襲い家畜や女をさらい男は殺す。


「ゴブリンには領主様の徳が届かないのです。災害みたいなものです。ですからなかなか撃退がむつかしいんです」


「そんなに難しいなら、軍をどうして動かさないのかな」


セリーヌが言う。それに受付嬢は困惑したような顔をした。マルティナが代わりに答える。


「それは仕方ないよ、だってゴブリン相手に勝っても名誉にも金にもならない。しかも安全だとも限らない。だから討伐を冒険者に依頼する。違うかな?」


「え、ええおっしゃる通りです」受付嬢が答える。


「で、私たちとしてはそれを受けざるを得ないと思うんだけれど、どうなのかしら、報酬は?」


「ええ、これは困難な任務ですから、報酬は最低ラインで金10マルクです」


 金マルクはエスターラントの通貨である。レモリア本土では銀本位制によるシリングおよびペニーの大小銀貨が流通の要であり、金貨であるポンドはほとんど存在しない。しかしファルクサを中心とする貿易の発達したエスターラントでは金貨も見かけることがある。本土のシリングやペニーに皇帝の肖像が鋳造されているのに対し、マルクにはエスターラント公の肖像が描かれている。

 なお、10マルクは6ポンド13シリング4ペンスに相当する。


「それなりの額ですね。ただ、ご領主様が出すなら少ない」


「討伐以来は荘園代官からですね。それにゴブリンですから」受付嬢は言った「で、どうされますか。受けますか?」


 マルティナは後ろを振り向いた。他の4人も異論がない様であった。

 マルティナは向き直ると、頷いた。


「ええ、もちろん依頼を受けます」

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