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異世界太平記  作者: 淡嶺雲
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第24話 神殿参拝

 翌日朝、斎は宿を出ると、パンターニ氏の宿所を訪問した。教会近くの宿で、斎たちの泊った宿より立派に見えた。


 彼はそこで、かねてから依頼していた硫黄を受け取ったのである。


 硫黄は麻袋に入っていた。マルティナとシャルロットがそれを覗き込んだ。


「この黄色いのが硫黄?」マルティナが言った「初めて見た。これが火薬の原料になるの?」


「まあね。まあそれはおいおいと……」


 そう言いながら彼はその麻袋を肩掛けカバンの中に入れた。その時、向こうから手を振りながら歩いてくる影があった。セリーヌである。


「やあ、みんなおはよう」セリーヌは言った。「もう朝の参拝は済ませたのかな?」


「いいや、今からだ」マルティナは答えた「早速行こうか」


 教会は湖に面して建築されていた。まず大理石の敷き詰められた広場があり、中央には噴水がある。その広場を挟んで湖と反対側に神殿は建っており、階段を昇れば両脇に大理石の回廊を有する巨大な神殿が見える。神殿の前面も大理石の列柱に彩られ、その上には丸いドームが載っている。中央のドームがある建物が聖堂である。斎はサン・ピエトロ寺院を思い出していた。


 聖堂にたくさんの人が吸い込まれていく。斎たちもそれに倣って入っていく。巨大な表玄関の近くや回廊では、乞食か物乞いが巡礼者相手に喜捨を求めている。それを神官たちが追い払っていた。神殿敷地内の許可なき物乞いは禁止されていると触れ回りながら。


 前庭から巨大な表玄関を入ると、そこが拝廊(ナルテックス)、つまり教会の広大な玄関ロビーである。そこからさらに内玄関をくぐり、神殿の内陣へと入る。内玄関の上にはこう書かれていた。『万物の根源は水である』


 内陣に入ると天井はアーチを描き、左右には柱が並ぶ。柱の向こうにも空間があるが、アーチで区切られていた。そして内陣の奥――丁度ドームの真下では、ドームの採光窓から陽光が降り注ぐ。さらにその奥に女神像がある。これが水の精霊、ウンディーネの像であった。


 昨日は疲れていたのでそんなにじっくり見られなかったな、と思いながら斎はあたりを見回した。地球にあるものに勝るとも劣らない、壮大な建築である。


 マルティナは女神像の前まで進み出ると、さきに買っておいた壺を祭壇に備えた。中には聖水が入っている。マルティナが一歩下がると、4人はそこに膝をついて手を合わせ、祈りを捧げた。


『万物の根源たる水にかけて、聖なるサン・ピオールの湖の輝きにかけて。水の精霊ウンディーネよ、我らの罪を洗い流し、その清らかさもて我らを悪の道から遠ざけたまえ。我らを病魔から遠ざけたまえ』


 唱え終わると女神像を見つめ上げる。背後のステンドグラスから差す光が像を彩る。後光を背負うその神々しい姿に感嘆したあと、4人は神殿をあとにしたのであった。

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