第七話 学生寮
初めての投稿です。温かい目でご覧ください。
シーナ、ソルシアの二人と夕食を済ました後、セトは二人と別れ、オルデア学園に作られた、男子の学生寮に来ていた。学生寮は男性と女性で場所が離れており、一つの部屋に二人の生徒が入居する事になっている。
中に入ると、王族や貴族も泊まるためか、派手な色で装飾されており、王城の中のような雰囲気を出していた。セトは豪華な装飾を眺め、呆気にとられながらも、こんなことしている時間は無いと首を横に振り、学生寮の入り口の近くにある、寮長の部屋に出向き、入寮の挨拶と部屋の鍵の受け取りをしに行った。
扉をノックし、部屋の中から「入っていいぞ」という声が聞こえ、ドアノブを掴む。扉を開け、中に入ると、初めに大きい体には似付かない羽ペンを持ち書類を書いている男性の姿が視界に映り込んだ。その男性は、パーシスが使える上位のクラスの担任である、フラッド・ニュートリアスであった。
セトはその巨体から放つ圧力に押されながらも挨拶をした。
「こんばんは、今日より入寮するセト・オルデンです。よろしくお願いします、フラッド先生」
フラッド先生は書類を書きながら一言「ああ」と答え、紐でくくられた多くの紙を眺め始め、一枚引き抜くとともに、羽ペンをセトに手渡した。
「その書類の一番下に名前を書いて、そこらへんに置いとけ、あと、部屋の鍵の番号は325だ、勝手にとっていけ」
フラッド先生はセトに伝えることを伝えたのか、すぐに目の前にある、書類に再び取り掛かった。セトはフラッドが使っている、大きな机の端に紙を抑え、名前を記すと、羽ペンと共にフラッドの手が届く場所に置き、フラッドの後ろに掛けられた無数の鍵から325番を取り出し、扉に向かう。
扉の前に立って、フラッドに向けて「失礼しました」とお辞儀をし、寮長室を出ようとすると、フラッドが書類に集中しつつ、口を開いた。
「お前はシーナ・アーセムの騎士だったよな?」
突然の質問に戸惑いつつ、セトは「はい、そうですが」と返答した。
「そうか、大分尖った奴を主人に持ったな」
セトはフラッド先生がシーナが変な人だということを言いたかったのかなと思い、笑みを浮かべて「はい!」と返事をし、寮長室をあとにした。
男子寮には始め30室しか無かったが、人が集まるごとに増築をし続け、現在は約500もの部屋がある。
セトは増築され少しづつ壁の色などが異なる長い廊下を歩き続け、数分後、ようやく325号室に着いた。
セトはドアのぶに手を伸ばそうと手を出したが、すでに一緒にこの部屋を使う、住居人がいるかもしれないと手を止め、恐る恐る扉をノックした。しかし、中から反応がなかったため、セトは部屋の中に入ろうと扉を開けると、ベッドの上に緑色の髪を持った少年が倒れているのが目に入った。
セトが「大丈夫ですか!?」と急いで近寄り、声を掛けると、気の抜けた声で「お腹がペコペコです」と呟き、大きな腹の音を鳴らした。セトは明日の朝食べるために食堂から持ってきた、パンを布袋から取り出し手渡すと、緑髪の少年は「ありがとうございます」と呟きながらパンにかぶりついた。
セトは少年の顔に見覚えがあったのか、記憶を思い返していると、パンを口に入れもぐもぐしながら、少年が喋り始めた。
「僕の名前はアルバ・トライデン、よろしくね、シーナ様の騎士、セト・オルデン君」
セトは騎士任命式にいた伯爵家の次期当主だということに気づき、あたふたし始めながらも帝国式の敬礼ポーズをとった。
「こちらこそよろしくお願いします。アルバ様と同室になれて光栄です」
慌ててポーズをとったためアルバに「手、反対だよ」と指摘され、慌てて反対の手に直すと、アルバがベッドから立ち上がり、手を差し出した。
「シーナ様が朝に宣言していたように、ここでは身分の差は関係ないんだから、僕のことはアルバと気軽に呼んでよ」
セトはアルバの言葉に驚きつつも「わかりました」と手を握った。
その後、アルバが部屋の説明をし、荷物の整理などがひと段落した時、アルバが一つの鉢植えを出して、セトに尋ねる。
「ねぇ、この部屋で少し植物育ててもいいかい」
「はい、いいですけど」
セトの了承を得てアルバが「良かったー」と安堵していると、セトはその苗から嗅いだことがある匂いがしたのか「その苗、幻想花ですか?」と質問した。すると、アルバはすごい勢いでセトに近寄り興奮した表情で喋り出した。
「セトも植物に興味があるのかい?僕はね植物がすごい大好きでね、幼少の頃から、お小遣いをもらったら、植物を買って色々試してきたんだけどね、今はこの幻想花についてね研究しているんだ。この花はすごいんだよ、何が凄いってねこの花は怪我とかの痛みをごまかす不思議な力があるんだよ・・・」
「その花、よくシーナ様の部屋に飾ってありました。匂いが特徴的で覚えてます」
アルバが喋り続けていると、長くなりそうだとセトは感じたのか、シーナがよく飾っていたという話をして言葉を遮った。
アルバはセトの話を聞き、思うところがあったのか、「シーナ様が……」と呟き、苗を窓際においた。「ごめん、熱くなってしまったね」と苗を置き終わり、セトに向き直り、ベットに近寄る。
「もう時間も遅いし寝ようか」セトも「うん」と,同意し部屋の明かりを消しベッドに入る。
ベッドに入ってからもうすぐ1時間経つが、セトは寝付けず、明日のことを考えていた。(明日から実戦訓練が始まる、だけど僕はまだパーシスが発現していない。僕の願いは何なのだろうか、僕はシーナの隣にいていい人なのだろうか・・・)数刻の間、セトは考え続けようやく眠りについた。だが、奴隷であった期間が長かったせいか数十分ごとに起きて寝てを繰り返していた。
繰り返す事7回目、セトは再び眠りに入らず体を起こした。セトは部屋に備えられた時計が5時を示しているのを確認し、ベッドから立ち上がる。
セトはカバンから制服とは違う服に着替え、腰に剣をさし、部屋を出た。この時間に外に出るのはオルデン家での習慣で毎朝5時から鍛錬をしており、クルシュからも学園ないで生活していてもこの日課は崩すなと言われているからだ。
寮の扉をゆっくり開け、重たい体で外に出ると朝日はうっそりとした雲に覆われていた。
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