第六話 怪物
初めての投稿です、温かい目でご覧ください。
入学式が終わり時計の短針が3を通り過ぎた頃、セトとシーナはクラス分けを見に、教室棟の目の前に来ていた。
「シーナ様、私はまだパーシスが発現していないので、ここで失礼します」
パーシスを発現している学生と、していない学生で講堂は分かれるため、セトがもう一つの教室等に向かため、シーナに一礼して立ち去ろうとすると、シーナは「どこに行こうとしているの?」とセトを呼び止めた。
「あなたは私の騎士なのだから、私と一緒のクラスに決まっているでしょ」
「初めてお聞きしましたけど」
「そう、じゃあ今言ったわ」
シーナは涼しい顔でセトに言い、教室棟の中へ歩き始めた。
セトはパーシスを持ち合わせていない自分が、パーシスを発現している上位のクラスへと入っていいのかと迷い、講堂の入り口で八の字を描きながら歩き回っていると、後ろから一人の少女に声をかけられた。
「中に入らないの、セトさん?」
セトが振り返ると、一つに縛られた腰に届くんではないのかと感じるほど長い金色の髪を持った少女が心配そうな表情で立っていた。
「えーと、すみません、お知り合いでしたでしょうか?」
自分の名前を知っている、少女を怪訝な目で見つめながらセトは問い返しす。
「うんん、入学式の王族を紹介している時、シーナ様の騎士としていたよね?シーナ様がとても目立っていたから、自然とシーナ様の騎士である、セトさんも注目されていたの」
それを聞き、セトは大きくため息を吐き、すでに講堂に入っていった、シーナに苦悩の表情で念を送った。
念を送った後、セトは体を少女へと向き直した。
「セト・オルデンです。シーナ様の騎士をやっております、よろしくお願いします」
少女はセトが自己紹介をしたので、笑みを浮かべ返した。
「私はソルシア・カートレスです。平民ですが、仲良くしてください」
自己紹介が終わり、ソルシアが「行こ」と歩き始めたため、セトはつられて講堂に入っていった。
講堂の中は約千人は入れるような広い空間になっており、すでに多くの人が各々好きな席に座っていた。
セトは講堂内を見渡し、赤色の髪を持った少女を探した。赤色の髪ははっきりと言ってとても目立つため、すぐに見つかった。
セトがシーナがいる方に歩いて行こうとすると、ソルシアが恥ずかしそうに話しかけてくる。
「あの、私も一緒について行っていいですか?」
セトはにっこりと笑みを浮かべ、答える。
「ええ、大丈夫だと思いますよ、シーナは身分とか気にしないので」
「シーナ?」
セトはうっかり主人を呼び捨てにしてしまっため、慌てて「シーナ様です!」と訂正し、誤魔化し笑いをしながらシーナが座っている席に向けスタスタと歩いて行った。
シーナの隣に着くと、セトは「お隣よろしいでしょうか?」と質問し、シーナの「ええ」という言葉によって座る。
席に着くと、シーナがセトが座った方を向き、口を開く。
「で、隣の女性は誰?」
「シーナ様が講堂に入って行った後、知り合ったソルシアという名の初めての友達です」
『友達』という単語にピクッと二人は反応し、ソルシアは「えへへー」と照れ笑いを浮かべ、シーナは少しむすっとした表情を浮かべた。
「シーナ様、どうかされましたか?」とセトが言うと、シーナは少し高い声で「いえ、なんでもありませんよ」と満面の笑みで返した。
シーナは一度深呼吸をし、セトの隣に座るソルシアに目を向けた。
「私はソルシア・アーセムです。よろしくお願いするわね」
「はい!私はソルシア・カートレスでしす。よろしくお願いしましゅ……」
シーナが「ふふっ」と笑うと、最後に噛んでしまったソルシアは顔を赤くして両腕で顔を隠した。
自己紹介が終わると二人はセトを挟んで、自分たちの普段の生活などについて話あっていた。セトは置き去りにされているのを感じながら、時が過ぎるのを待った。
少したち、講堂が人で溢れそうになった頃、一人の男性が講堂の壇上に上がった。
「諸君、入学おめでとう」
男性の言葉とともに、講堂内の生徒の視線が一点に集まる。
「私は、オルデア学園の上位クラスを受け持っている、フラッド・ニュートリアスだ」
フラッド・ニュートリアスその男は身長は190cmはあるだろう、筋肉で隆々とした巨体を持つ男であった。
「初めに宣言しておくが、俺は尖った事が好かんから俺の目が届く範囲では尖った行動はしない事だな」
多くの生徒はフラッドの重厚な声に、緊張感が走り、真剣な表情に自然となった。すると、フラットは笑みを浮かべ、告げた。
「まぁ、そんな怖がらんでいい、では入学式で今日の流れを聞いたと思うが、今から最初の授業を始める。」
オルデア学園では、初日から授業が始まる。この学園で初めに習うこと、それは、現在大陸に侵攻してこようとしている、怪物についてであった。
「最初に質問するが、現在この大陸に侵攻してきている、生物を実際に見たことがある者はいるか?」
フラットの質問に生徒の多数が反応しないなか、何人かの生徒が手を上げ、そのうちの一人をフラッドが指した。
「君は…、シダ・カリバーか?」
「はい、私はシダ・カリバーです」
「ではシダ君が見たのはどんな姿をしていた?」
「私が見た怪物は二体で、一匹は翼が生えた狼のような姿をしていて、もう一体は爬虫類の尻尾が生えた人に似た姿でした」
生徒全員が『人に似た』という言葉に驚愕をし、フラッドはシダに座るよう合図した。
「見た目は多種多様、多くの生物を持った奇怪な生物、私たちはこの生物全体を総称して、アーグルと呼んでいる。アーグルには多くの種類があり、その中には人に似た姿を持つ者も確認されている」
先生の断言に生徒同士が話し合いを始め、講堂内が騒がしくなる。
騒ぎが大きくなり始めると、「バキッ」と大きな音が前でなり、騒ぎがピタッと止まった。騒ぎが一瞬の間に収まった事により、静寂の間が訪れる。生徒が前に視線を向けると壇上にあった大きな机が半分に割れていた。
「騒げとは言った覚えは無いぞ」
フラッドの言葉にあちこちに体が向いていたのが皆前に向き直る。それを、見てフラッドが話を続ける。
「アーグルは多種多様であるが、どの個体にも体の中心付近に核となるところがあり、それを破壊すると生命活動は停止し塵となって消える……」
その後、時間は進み、初回の授業はアーグルにの説明、倒し方などについて1時間半に及ぶ長い時間の講義となった。
「では、今日はこれまでだ、明日からは実技授業も始まるから休むなよ」
そう言い、立ち去るフラッドを見届け、生徒も皆一斉に喋り出し、講堂をでながら大きな騒ぎとなった。やはり、アーグルという存在は多くの生徒を考えさせた。この生物に自分たちが対抗できるのかと。
生徒が講堂から次第に出始め多くの生徒によって扉の前に列を為し始めた頃、シーナが立ち上がり、ソルシアに声をかけた。
「ソルシア、私たちはこれから夕食をいただきに食堂に向かいますが、あなたも一緒に来ますか?」
ソルシアは「はい!」と即答し席から立ち上がった。
セトも立ち上がり、3人は扉の前にできた列に並んだ。
数分が経ち扉の近くまで来たとき数十人の制服に豪華な装飾をあしらった生徒達が立ち上がり、先頭を歩く少年の後ろから腰に剣をさした少年が出てきた。
「おい!邪魔だ。王族のお通りだぞ、道をあけろ」
セト達の視線が大声があった方に向くと、そこにはクルセイを先頭としてリーダルと多くの王族が後ろについていた。そして、リーダルが扉の前にいた生徒を押し飛ばし王族を先に通そうとする。
その乱暴な行為に多くの生徒が怪訝な眼差しを向けると、クルセイがこちらを向き口を開く。
「おいおい、王族様に意見か?生きていけなくするぞ」
クルセイの言葉に怯んで、多くの生徒がそっぽを向く中、リーダルはセトがいる方を向きニヤリと笑い、こちらに歩いてきて、セトの後ろに立っていたソルシアの手を掴んだ。
「おいお前さっきからずっとこっちを見ているが、何か意見があるのか」
ソルシアは怯えた表情でたどたどしく答える。
「みんな時間をかけて並んでるんです。列の後ろに並らび直してください」
ソルシアの返答を聞いた途端、リーダルの表情が急変し眉間にしわを寄せ腰にさしていた剣に手をあてた。
セトはそれを見て牽制のために自身も腰に携えた剣に手をあて、叫ぶ。
「リーダル、やめろ!」
セトの言葉にリーダルはセトの制服の襟を掴み、身を乗り出した。
「お前ごときが、俺に逆らうって?身の程をわきまえろ、この卑しい奴隷め」
リーダルの言葉に続き、扉の前にいた王族の生徒達が「シーナ様は自分の騎士に奴隷を……」と侮蔑の表情を浮かべコソコソと話し始めた。
セトがリーダルの気迫に怯んでいると、隣のシーナがリーダルの肩に手をあてると、少女とは思えないほどの力でセトから引き離し、講堂に冷ややかな声が響いた。
「リーダル、いい加減にしてくれないかしら、私はマナーも知らない気取った人たちに時間を費やすほど暇では無いの、あとそちらの子は私の友達なのだけれど、何か様なのかしら」
自分の心臓を握られながら耳元で喋られた感覚を覚え、講堂内にいた全ての生徒の体が固まり、さっきまでコソコソと話していた王族達の口も閉じていた。
シーナの声にリーダルは怯み、片膝を床につけ悔しさをにじませながら「すみませんでした」と謝罪をし、クルセイのもとに戻った。
クルセイもシーナの声に怯み、リーダルが戻ってくると正気に戻ったのか怒気に満ちた表情で、他の王族の生徒に「行くぞ」と声をかけ、講堂から出て行った。
クルセイ達が出ていき、他の生徒も出始めた時、セトは顔に悔しさを滲ませシーナに声をかけた。
「シーナ様、すみません、何もできませんでした」
「それぐらい、いいわよ、それより、怪我はない」
「はい、大丈夫です」
講堂を出ると、シーナはソルシアに近寄り、手を握った。
「大丈夫?怖かったでしょ」
「イイエ、ダイジョブです」
手を握られカチカチに固まり、カタコトになったソルシアを見てシーナは笑みを浮かべた。
「よく、あの人たちに意見できたわね」
「『自分が間違っていると思ったことは意見しろ』とよく言われていたから……、それより、さっきの友達って」
「ええ、セトの友達なら、私の友達でもあるでしょ」
シーナが笑顔でそう断言すると、ソルシアは目に涙を浮かべ、「うん!」と笑った。
日が沈め始め、夜が訪れようと周りが暗くなる中、二人の笑顔がキラキラと輝いていた。セトはその光景を見て、きれいだと思いながらも、二人につられて笑みを浮かべるのであった。
多くのアドバイス、批評をお願いします。