第五話 宣言
初めての投稿です、温かい目でご覧ください。
青空の下、真っ赤な髪が風になびく。まるで、そこに、メラメラと燃え盛る炎が存在し、多くの人々の視線が吸い込まれるように、赤い髪の少女に視線が集中する。
ここは、スイシアの首都セーシアの中央に建設されたオルデア学園、その中心部に位置するコロシアムに作られた特設ステージの上、各国の王族とその護衛がステージに立っている中、シーナは一年生の代表として、抱負を発表するべくステージの上に置かれた壇上に上がっていた。
オルデア学園の入学式それは人類の脅威との戦いを決意をしたものだけが集まる、決意の式である。創立5年目を迎えた今年は、学園の重要性も広く浸透し、初年度の新入生の約5倍、約1500人もの新入生が集まった。
オルデア学園の入学条件は、満15歳異常であり、戦争終結後に人それぞれの願いに呼応して発現する願いの力であり人類の脅威に抗うための力でもある、通称パーシスと各国の王によって名付けれた力を発現しているか、パーシスが今は発現していなくとも、人々を脅威から守りたいと強く決意していることである。
今年は約3分の2の新入生がパーシスを発現していない生徒であり、今年からはパーシスを発現している学生としていない学生を分けてのクラス編成をすることになっていた。
入学式は学園に在籍している王族と新入生だけで行う仕様になっており、コロシアムには約1500人もの決意を固めた多くの人々が集まっていた。
一年生約1500人がコロシアムに整列し壇上に立つ赤髪の少女、シーナに視線が集まり、一瞬の静寂が訪れる。そんな静寂が包んだこのコロシアムにシーナの透き通った綺麗な声が響きだす。
「こんにちは、皆さん。アーセム帝国第二皇女のシーナ・アーセムです。この度、今年度のオルデア学園新入生代表に選ばれ、抱負を代表としてこうしてのべられることを大変嬉しく思います。この学園に入学された皆さんは、色々と事情がある方々が多いかもしれませんが、多くの方はあの人類の脅威に対抗する力を手に入れたいという方が多いと思われます。あの怪物達に友達や家族を奪われたという方もいるでしょう。そんな怪物達に私たちは人の力を、願いの力を見せつけなければなりません」
シーナの強く透き通った声に多くの人が引き込まれていく中、セトは一人、シーナを心配するような目で見つめていた。それは、前夜もともと完成させていた、スピーチの原稿を書き直したこともからでもあるが、それより、当日の朝、セトがシーナと学園に向かっている途中、「セト、今日の抱負楽しみにしてなさい、特に私の兄、クルセイが怒り狂う表情に注目してて」とシーナがうっすら笑みを浮かべながら言ってきたからだ。
「私はこの学園で仲間と共に力を高め合い、学園を卒業した時、あの怪物達がなぜ現れたのかその元凶を明らかにしてみせます。ですが、これは自分一人では成し遂げられそうにはありません。ですから、来たるときに皆さんの力を貸して欲しい。」
心強い自らの目標を述べた直後、一瞬、シーナのスピーチが止まり、その時、シーナがうっすらと笑ったのにセトは気付いた。セトが次に話される言葉に体が強張る中、シーナは強く、ただ強く言葉を発した。
「すべての国が脅威にさらされている今、強大な力を持つ王族、貴族が王族、貴族だからという理由で戦闘の前線に出てこないということはないでしょう。それは、私たちの国が侵略されてることを見過ごせるほど私たち王族、貴族の肝は据わっていないからです。だから皆さん、ここでは身分の差は関係ありません。自分自身の力を仲間と高め合い、王族にも貴族にも負けやしないという意気込みで現在前線で戦っている人々の助けとなれるよう、頑張っていきましょう。最後に一つ、私はこの学園で一番となります、これだけは譲りません。以上、新入生代表シーナ・アーセム」
スピーチの終わりと共に、多くの新入生が拍手と雄叫びをする中、セトは唖然とした表情を浮かべていた。それは、シーナのスピーチが全ての国の王族、貴族に対する挑戦状であり、競争心を煽る言葉であったからだ。
新入生の王族、貴族はもちろん先輩の王族、貴族の一部も壇上から降り、元の位置に戻ってくるシーナを睨み付けていた。特に、シーナが朝に言っていたように、シーナの兄、クルセイは今にもブチ切れそうな表情をしていた。
そんな中、セトの前に戻ってきたシーナは、「どう?面白かったでしょ」と少し口角を上げた。
セトは多くの王族、貴族に囲まれているの中、どう反応すれば良いのかわからず、思わず引き笑いをしてその場を流した。
そうこうしている間に最上級生の生徒代表のスピーチが始まり、その後は五年前にパーシスが発現したこれから教えを乞う先生などの話があり、最後に各国が合同で作成した、決起の歌を歌い、入学式は閉幕した。
入学式が終わり、新入生がクラス分けの発表を確認しにコロシアムを出ていく中、剣呑な表情でセトとシーナに一人の少年が近づいてきた。
「おい、シーナ、弱っちい妹の分際でさっきのスピーチの内容はなんだ、俺様に喧嘩でも売ってるのか?」
少年の怒りが篭った脅迫じみた質問に、シーナは顔色一つ変えず応答した。
「兄様、私は喧嘩など売っていませんわ、ただ、当たり前のことを言っただけですよ」
近寄ってきた少年はシーナの双子の兄、クルセイであった。
クルセイはシーナの自分を相手にもしていない表情に、より一層剣呑な表情を浮かべ、手をあげようと拳をふりかざす。
クルセイが拳を振りかざす中、それを防ぐため、二人の少年が動き出した。
一人はシーナの騎士、セトであり、もう一人はクルセイの騎士、リーダルであった。
セトがシーナの前に飛び出し、防御姿勢に入ると同時に、リーダルはクルセイの振りかざす途中の拳を後ろから全身を使って押さえた。
「クルセイ様、おやめください。まだ、多くの王族、貴族が居ます、ここでアーセム帝国の品格を下げる様な行為をしてはいけません」
「リーダル、何をする、俺様を誰だと思っている。お前は俺様の騎士だろ。」
リーダルがクルセイを説得しようと、暴れようとするクルセイをしっかりと押さえ、話始める。
「ここで、暴れてしまったら、コルザ王の耳にもその情報が入り、あなたが王になる道が遠くなります。ですから、どうかおやめください。」
クルセイは『王』という言葉に反応し、暴れるのを止め、リーダルに離れるよう命令し崩れた身なりを整え始めた。
シーナが「では、私たちはこれで」と立ち去ろうとすると、クルセイは呼び止め、少し落ち着いた表情で宣言する。
「おい、シーナ、一つ言っとくがこの学園で一番になるのはお前じゃなくてこの俺様だ。そこは、間違えるな」
クルセイの宣言の後、シーナとセトが一礼して立ち去り。クルセイはリーダルと二人になった。
「リーダル、シーナの騎士は確か元奴隷だったよな?」
クルセイの質問にリーダルは仰々しく答える。
「はい、そうでございます。あの卑しい奴隷はシーナ様が二年もの間、執着して探して居られたと聞いております。」
セトに執着するシーナの情報を聞き、クルセイは「まず、あいつからだ」と、ニヤリと笑みを浮かべるのであった。
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