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神が見放した世界で僕らは何を願うのだろうか  作者: 人畜無害さん
第一章 俺の願い
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第三話 騎士任命

初めての投稿です。温かい目でごらんんください。 

 セトがシーナと初めてあった日、シーナはすぐにセトを奴隷として買い取った。

 その後、セトはシーナの命令でオルデン家の養子として引き取られ、武家の貴族としての礼儀作法、剣の扱い、最低限の知識を3年間叩き込まれた。

 シーナはその間、何度もセトに会いに来て、「あなたは私の騎士になるのよ。」と言い聞かせ、セトはその言葉をただただ自分に言い聞かせていた。


 そして時が流れ、セトが15歳の誕生日を迎えた日、セトはアーセム帝国の王城へと呼ばれた。

 それは、武家の子供が15歳にになると、王族か貴族の騎士となることが決まっており、その発表を直々に王から賜るからだ。

 セトがオルデン家の当主、クルシュと馬車に乗って王城に着くと、王城の門の目の前でジルドが二人に向けて手を振っていた。

 「待っていましたよ、父さん、セト。」

 「ジルド、往生の目の前で無礼な行動はとるな、私たちは由緒正しき武家の名家なのだから。」

 「まぁまぁ、良いじゃないですか父さん。」

 「良いわけないだろう、まずここでは父上と呼べと言ってるだろ。」

 「ははは、すみません忘れっぽくて。」

 天然な息子のジルドと武家として厳格な父のクルシュが親子の会話をしていると、ジルドがセトが初めてまじかで見る王城の大きさに呆気に取られているのに気づき、セトの肩を笑いながらバンバンと叩く。

 「王城の大きさにびっくりしているだろ。俺も初めて連れてこられたときは父上に『ここは神の住処ですか。』と言った覚えがあるぞ。」

 「ジルド兄さん、なぜ神の住処なんですか。」

 「あぁ、ちょうどその時エリシタリアの神の童話を読んでいたからだったと思うが。題名はたしか・・・ルー」

 城の話が盛り上がりを見せ、ジルドが童話の題名を思い出し言おうとした時、クルシュの言葉が遮った。

 「そろそろ、無駄話は終わりだ。ジルド、私は先に呼ばれているから、セトのことを頼んだぞ。」

 クルシュは言いたいことを言い終えるとスタスタと王城の中に歩いて行った。

 ジルドはセトに笑いかけた。

 「この話はまた今度な。」

 「はいっ、わかりました。」

 「ではセト、俺たちも王城の中に入るか。」

 

 セトは歩き出したジルドの後ろをついて行き、王城の中へと入っていく。

 中に入ると、そこは金の装飾があちらこちらに施され、どこを見ても汚れたところがなく、まるで別世界に迷い込んだようであった。

 ジルドと共に王城で最も重要な王の間に向かう途中、セトと同い年くらいの容姿をした服装から貴族と思われる少年が不機嫌な顔をしドスドスとこちらに近寄ってきた。

 「おい、お前がセト・オルデンか?」

 急な質問にセトは一歩あとずさりし、「はい、そうですが。」と恐る恐る答える。

 少年はセトの態度が気に障ったのか舌打ちをし、

 「奴隷の分際でシーナ様の騎士なんて。」と言い去っていった。


 「気にするなよ、セト。あいつは、ゾルバ・リーダルっていうリーダル家の長男なんだが、少し気難しい性格だからたまに、不満が表に出てしまうんだよ。」 

 ジルドは腕組みをし、去って行くゾルバの後ろ姿を見ながら「困ったヤツだ。」とつぶやく。

 ゾルバが去って少したち、ジルドは歩き始め、セトはその後をついて行き、王の間の扉の前に着いた。


 扉を開ける前一度ジルドが真剣な面持ちでセトの顔を見た。

 「入る前に3年間で学んだ礼儀をしっかりと思い出しておけよ。この中にいるのはほぼ全員貴族や王族だ。無礼なことがあったら、首が飛ぶと思えよ。」

 セトはジルドの表情や体から出るオーラが急にピリピリしたことを感じ、大きく深呼吸をし、心構えを整える。

 キリッとしたセトの表情にジルドは少し顔を和らげ、「では、行こうか。」と扉を開け、二人は王の間に入っていく。

 

 王の間の中は赤、白そして金色で統一された空間であった。赤色の絨毯が中央まで伸びており、その左右に多くの貴族が並んでいた。中央には、先ほどセトに話しかけていたゾルバともう一人おり、そして、絨毯が途切れた先には階段がありその上には大きな白色の椅子に座るアーセム帝国の王、その横には王の親族、所謂王族が並んでおり、そこには当然シーナもいた。

 セトはジルドに従って王の間の中央まで歩いて行く。

 中央で止まると、アーセム帝国の王、コルザ・アーセムが立ち上がり、ジルドとセトを見下ろした。

 コルザ王はシーナと同じ赤色の髪と目を持ち、身長は2メートルをこす大柄の男で、前に立つことが嫌になるほど凄まじい迫力を放っていた。


 その迫力からセトは目を背けそうになったが、心の中で『逃げるな!』と繰り返し念じなんとか踏みとどまった。

 コルザ王はセトが耐えたことを感じ取ると口角を少し上げ、ジルドとセトを見ながら一歩前に出た。

 「ジルド・オルデン、よく連れてきた。」

 コルザ王が一言告げると、ジルドはアーセム帝国の敬礼のポーズを取りにかかり、握り締めた拳を素早く胸の少し下に持ってきた。

 「ジルド・オルデンただ今、セト・オルデンを連れて参りました。」

 ジルドは報告が終わると、体を反転させ、多くの貴族が並んでいた列に並び直し、王の間の中央にはセトとゾルバともう一人の男だけになった。

 

 「此度、お主らを呼んだのは、知っておる通り、我が国での騎士制度によるものだ。我の声を良く聞き、その胸にこれから一生をかけて守り通していくものを刻み付けよ。」

 コルザ王が始まりの言葉を言い、3人は腰につけた剣を抜き、腹の前にたて「我が剣に誓って!」と大きく声を張り上げる。

 

 少し間を置き、3人が剣を仕舞い終えると、コルザ王の隣に立っていた、王妃が羊皮紙を王に手渡し、コルザ王はそれをチラリと確認し、王妃に返還する。

 「では、発表する。カルデア・リーダル」

 名前を知らなかったもう一人の男はゾルバの弟であった。

 カルデアは大きく返事をし前に出ると、一人の少年が、貴族の列から出てきてカルデアと対面した。

 「カルデア・リーダル、汝をトライデン伯爵家の長男、アルバ・トライデンの騎士に任命する。」

 コルザ王の言葉を待って、二人は近寄り、カルデアは剣を抜きながら片膝をおりアルバに剣を渡した。

 騎士任命の儀式が終わると二人は壁際に避けていき、コルザ王はそれを確認し、再び口を開く。

 

 「ゾルバ・リーダル」

 ゾルバは同じように前に一歩出るが、ただカルデアと異なった点は、アーセム帝国の王族が階段から降りて来たことである。

 二人が対面すると、

 「ゾルバ・リーダル、汝をアーセム王家の次男、クルセイ・アーセムの騎士に任命する。」

 とコルザ王が告げ、ゾルバはカルデアと同じ儀式をし、壁によっていく。


 少しの間が開き、コルザ王が口を開いた。

 「セト・オルデン」

 セトは返事と共に前に出て、対面したシーナがうっすらと笑みを向ける。

 僕は一度目を瞑りこの3年間、はたまた、奴隷であったその前の2年間を思い出していた。奴隷として毎日肉体労働をし、奴隷商に罵倒され、心身ともにすり切れそうな時、この方が僕を救ってくれた。そして、その後3年間は僕が騎士となれるように、そのための環境と励ましの声をかけてくださった。

 僕は涙が溢れ出そうなのを堪え一歩を踏み出す。

 「セト・オルデン、汝をアーセム王家の次女、シーナ・アーセムの騎士に任命する。」

 そうして、セトはシーナの騎士となったのであった。


 


 

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