第二話 出会い
初めての投稿です。温かい目でご覧下さい。
雲ひとつない空の中朝日が上りきった頃アーセム帝国の城の一室で侍女からの報告を受け、ベッドから赤眼、赤髪の黒で統一されたドレスを着た少女が立ち上がった。
「ジルド、行きますよ。」と優しい声色で扉の横に立つ腰に剣を携えた大柄な男に命令し、扉に向けて歩き出す。
男は困った顔を浮かべ少女に向かって告げた。
「シーナ様、もう奴隷商に通うのはおやめになったほうがよろしのではないでしょうか。世間の評判にも影響が生じてしまいます。」
少女はほのやかに笑い首にぶら下がるペンダントをキュッと両手で包み、大柄な男を一瞥した。
「ジルド、私は一度やると決めた事は必ず成し遂げると決めています。それに、これは私がやりたい事なのですからいいでしょ。」
大柄な男は少女の言葉を聞き、諦めたのか少女の道を開けるため扉を開き、赤眼、赤髪の少女は扉の向こうに続く長い廊下を進み始めた。
赤眼、赤髪を持つ少女の名はシーナ・アーセムという。神導王国エリシタリアに隣接するアーセム帝国の第二皇女であり、歳は十二であるが、可愛いという言葉より綺麗という言葉が似合う、歳の割りに大人びている少女であった。
シーナは人智連合とエリシタリアとの戦争が終わり、国家間の情勢が治り始めてから一年半の間、アーセム帝国に新しい奴隷商が入国する度に城下町に出向きある少年を探していた。
シーナの後ろを歩く大柄な男は代々、王族の護衛の任を与えれるオルデン家の次男であり、名をジルド・オルデンという。
ジルドは第二皇女の護衛の任を与えられているため思い立ったらすぐ行動をしてしまうシーナに度々振り回されていた。
二人が何度も廊下を曲がったり、階段を降ったりを繰り返し、城門に差し掛かったとき、シーナは歩きながらジルドにだけ聞こえるくらいの小さな声で質問した。
「そういえば、例の件は調べがついた?」
ジルドはあからさまに困った顔をし、応答した。
「仕事柄多くの貴族や王族の話を聞くのですが、その件についての話は全く耳にしなかったです。私から話題をふるのも疑われてしまいますし・・・」
シーナは一言「そう」と呟くとともに、クルッと振り返り背伸びをしジルドの耳元で冷ややかな声でささやいた。
「私のために頑張ってくれるのはありがたいけど、顔にすぐ表女が出てしまう癖は直しましょうね。」
シーナはジルドから離れるとともほのやかに笑い、再び城下町に向け城門の前方に造られた大きな石橋を渡り始めた。
ジルドはシーナについて歩き始めるとともに、
「やっぱりシーナ様は苦手だ。後ろに目がついてるよこの人。」と誰にも聞こえない小さな声で呟やき、遠くからでも聞こえるくらいの賑わいを持つ城下町に向け歩みを進めるのであった。
城下町では多くの商人が大勢の客に来てもらうための客寄せ、客が店の商品を値切る声、ただの馬鹿話などで活気に満ち、人で溢れていた。
しかし、二人が城下町に到着すると、活気に満ち溢れていた城下町が一変し静寂に包まれるとともに、チラチラとシーナとジルドの方を見て、ひそひそと話す声が飛び交った。
「また、皇女様が来たよ。」
「何人の奴隷を買えば気が済むのかねぇ。」
「あんまり見るなよ、目をつけられたら何をされるかわからんぞ。」
人で溢れていた城下町はシーナを避けるよう道が開き、作られた一本道をシーナは堂々と歩いて行った。
ジルドはシーナを心配したのか、チラリと一瞥し、シーナの後ろを歩く距離を縮めた。
「シーナ様、やはり城にお戻りになられた方がいいのではないでしょうか。」
シーナは振り返ることなくジルドの提案に対して答えた。
「偽りの噂話で私は傷つきませんよ。」
ジルドは主人の強い言葉にもうこれ以上は言うまいと感じたのか、シーナの後ろをついてひたすら奴隷商がいる場所へと歩いた。
途中路地裏に入り数分歩き奴隷の売買がされる場所に着いた。
シーナは早速、探している少年がいるか確認するため檻に目を向けようとしたが、噂話の効果か多くの奴隷商がすぐさま、二人に近寄りいい商品が入ってると豪語をし始め、気付いたら二人は囲まれており動けない状態になっていた。
シーナは大勢の奴隷商に囲まれる中、ふと少し開いていた隙間に映った奴隷商の荷物を運ぶ、鎖に繋がれた藍色の髪を持った少年に目が吸い込まれた。そして、その少年を目にした瞬間、全身の血が沸き立つ感覚を覚え、シーナは大きく跳躍して何人もの奴隷商を飛び越え、少年に少し近寄り、少年を燃え盛るように赤い赤眼で見つめる。
少年を見始めてから数秒がたちシーナは何かを確信したのか、
「ようやく見つかった。」と呟き固まった。
ジルドは自分より数十センチも小さい少女に飛び越えられた光景を目にし固まる奴隷商を押しのけ、苦悩の表情を浮かべ、シーナに近寄った。
「どうかされたのですか、というか人の心を読むのがあなたの願いの力と聞いていましたが、あの身体能力はどうなっているのですか。」
シーナはジルドの声が聞こえてないのか何も答えず立ち尽くしていた。
ジルドは反応のない主人が気になったのかシーナの顔を覗き込み、大粒の涙が流れるのを見て慌てて口が開く。
「大丈夫ですか!?」
シーナは視界に映ったジルドにようやく気づいたのか、ドレスの袖で涙を拭き取り、涙で引きつった声で応答した。
「すみません、心配をおかけしました。私の願いの力についてはまた後日話しますね。」
少年を連れていた奴隷商も騒ぎが急に止んだことに気づいて立ち止まり、騒ぎがあった方向を向いた。
少年も不思議そうにシーナ達がいる方向を向き、静寂の中、鎖がぶつかる音だけが響いた。
シーナは1度目を瞑り、呼吸を整え、こちらを向く少年に向かって歩き出し、にっこりと笑いながら優しい声色で尋ねる。
「あなたの名前は、セト、セト・ファンシア?」
少年は戸惑いながらも、ゆっくりとうなずく。
シーナはそれを見て、再び目に涙を浮かべた。
「私は、シーナ・アーセム。私の英雄との約束であなたをずっと探してました。」
これが、セトとシーナの出会いであり、これから動き出す運命の始まりであった。
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