第十話 兄の衝動
温かい目でご覧ください。
クルセイ・アーセムは自尊心の塊であった。
少年は、幼少期の頃から音楽も勉強も運動も少しの努力でできるようになり、同世代の子供に劣るものなど何一つ無く、欲しいものは全て自分の力で手に入れ、そのためには妥協はしなかった。しかし、どう頑張っても、親からの愛情の一番は少年ではなかった。
いつも親の隣や膝の上には父と同じ王の髪色である赤髪の少女がいて、少年はそれをずっと眺めていた。年で一回ほどの家族での外出も行く場所は少年の案ではなく、少女の案が採用された。
少年は少女を妬んだ。
少年の方が優秀なのに、なぜ少女の方が愛されているのか、同じ日、同じ時間に生まれたのに、なぜ、少年の髪の色は父と同じ赤色ではないのか。
年月が経つにつれて、少年は愛情の一番を勝ち取るため、全てにおいて死に物狂いで一番を取ろうとした。そして、実際に一番を取った。しかし、その少年の後ろにはいつも少女がすました顔で立っていた。
少年は自分が一番なのだと、自分以外はいてもいなくても変わらないちっぽけな存在なのだと思い込むようになった。しかし、それも長くは続かなかった。
5年も続いた戦争が終わり、人々はパーシスを手に入れ始めた。少年も数ヶ月後発現しその能力はまさに王としての一番の力であった。少女も手にしたらしいが、ただ人の心が覗けるっていうだけの能力と聞き、それに加え少女は奴隷商に足繁く通い、奴隷を自分の騎士とするべく買ったらしい。
少年はやっと少女との明確な差をつけることができたと心から喜び、これなら父や母も僕を一番に考えてくれると思った。だが、親にかけられた言葉は自分が待ちわびていた言葉ではなかった。少年はその力を無闇に使ってはならないと厳しく言われた。
少年は悔しかった。なぜ自分が、ここまで頑張ってきた自分が、押さえつけられなければいけないのか。
少年は自分の力を親に見せつけるため、最近世間を騒がしている怪物に対処する人材を育成を目的としたオルデア学園に少女が入学するというから少年も入学した。しかし、少女は知らないうちに少年の上に立っていた。
少女に新入生代表を取られ、そして、少女のスピーチは王族(自分)を軽視しするないようだった。
少年は心の底から少女に怒りを覚え、少女の全てを壊してやろうと考えた。
実戦授業が始まり、少女の騎士がパーシスを使えないことを少年は知り、やはり奴隷は奴隷だと嘲笑した。
少年は奴隷をまず壊そうとした。しかし、奴隷の隣にはほとんどの時間、少女が隣にいた。
少年は奴隷と並行して少女の友達になったという、平民の少女に目を付けた。
少年は自身の騎士を連れて、平民の少女に近づいて行った。
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