今日の陽よ さようなら
「お元気ですか?」
今日は、朝から暖かい陽の光射す晴天だったよ。
昼間の日向はいつかのキミらの笑顔のようでね。
目を反らした先は、冷たい風がわだかまっているのに。
日陰でモノ言わぬ肉塊に変わったキミがそこに居るように感じるよ。
トキが止まったキミたちの、おかあさんやおとうさんと同じくらいまで
わたしのトキはチクタクと進み続けているのに。
清々しい青空に、一枚ずつキミたちとの想い出を貼り付けておくよ。
心安まるように、白檀の香りも届けるよ。
震える声であげる祝詞は、耳障りかもしれないけど我慢しておくれよ。
まだ、キミたちには逢えないのかな。
いつ、キミたちの元へいけるのかな。
瓦礫と化した高速道路。
近づくにつれて立ちこめる土煙。
原付に水やパンを積めるだけ積んで、リュックに包帯を詰め込んで駆けたのに。
着いた場所は、絶望の深淵のようで喉が詰まる恐怖に体中の関節が震えたよ。
拙い知識を辿って息吹きを取り戻そうと必死だったんだ。
人工呼吸も心臓マッサージも何もかもが役に立たなくて。
拙くても良い、出来るなら良い、と精も根も尽き果てるまで続けて。
見知らぬ何人かの人は救急車に載せられたけど、
それぞれの場所で崩折れるキミたちみんなの助けにはなれなくて
やり場のない悔恨が、この胸を噛んで風穴を開け続ける。
この風穴が閉じることはないのだろう。
いつか、キミたちと再び見えるそのときまで……。