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異世界召喚被害者の会。  作者: 中崎実
被害者会会長、また呼び出される。
9/80

密談(3)

ちょっと短め。

 この20年間、性懲りもなく召喚を試みていたのは、主に二つの勢力。

 一つが隣国マランティで、ラハド五世の母の出身国。そしてもう一つは、例の王女の外祖父と対立する一派だった。

 別の書類を見る限り、今回の騒動の原因は国内にある。それは、ガディス卿が調べさせた範囲で判った事と同じ答を示していた。


「意外性は欠片もないが、しかし」

「また厄介な話ですね」


 タカハシ書記官はいつもの穏やかな様子を崩さない。

 再召喚騒ぎで仕事の量は確実に増えているはずなのだが、疲労を伺わせる様子はどこにも無いし、重大問題を扱っている事すら感じさせない、見事なまでの平常ぶりだった。


「これは魔導卿の功績にしなくて良いとおっしゃられたが、本当に大丈夫なのだろうか」


 手柄の横取りになるようで、なんだか後が怖いのだが。

 しかしタカハシ書記官は


「寺井本人が言ってるんだから、気になさらなくて良いですよ」


 と、特に驚いている風でもなかった。

ちなみに出身国も同じ上に年齢も同じという事もあり、タカハシ書記官と魔導卿は近しい友人だから、こういう言葉遣いもおかしなものではない。


「寺井は表に出たがらないですからね。目立つのは嫌だそうで」

「……何を今さら、と言っても良いだろうか」

「そこは言わないでやってください、創作物じゃ定番の悪役だけど」


 くすくす笑ったタカハシ書記官は、心底面白がっている様子だった。


「悪役、は言いすぎでは」

「いやいや、そんな事ないですよ。主人公の味方ではあるけど目的のためには手段を選ばない悪党、が定番の役どころじゃないですか、魔導卿って」


 たしかに、演劇などで登場する魔導卿は、お世辞にも善人とは呼べない人物になっている。


「しかもここ20年くらいで、過激な人物像がどんどん作られてますからねえ」

「あれも、規制しなくて良かったのかな」

「下手に規制すると、逆にもっと凄いもの作られますよ。それに寺井を犯罪者として描いてる作はないですし、気にしなくて良いんじゃないですかね?」

「機嫌を損ねられたら困る」

「その時はこちらで説得しますから、ご心配なく。それにお伽噺より、現実に対処する方が先です」


 現実主義者のタカハシ書記官は、容赦なくガディス卿の執務机に書類を置いた。


「国務卿お一人に動いて頂くわけにも参りません、ご許可いただければとの言付でした」

「警察長官か。……一部なら任せても良いだろうがね」


 王宮内捜査の許可を求める書面を意味もなくいじりながら、ガディス卿はしかし署名する気にはならなかった。

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