仕事は増えるよどこまでも
正月は所用のため、更新が遅れました。
こちらの捜査はほぼ終了。
あとは若手二人をまた中央官庁に戻し、特にハウィル君には魔術師の管理を進めて貰えば、私の仕事はファラルの処分とルーチンワーク以外ほぼ無くなるはずである。
ただし、
「手空きだろうし、応援たのむよ」
そう宣った、この腹黒がいなければ。
「人の事を暇人みたいに言うなよ」
「え、今なら暇でしょ」
「日本での仕事もあるんだけどね?」
今日も今日とて、日本と往復である。辛抱強い侍従が日本のビジネススーツと靴の手入れを完璧に覚える程度に、頻繁に行き来している状態だ。
「ああ、それでスーツなんだ」
「客先対応が無ければ着ないけどね」
ここのところ、日本での勤務先が顧客と若干のトラブルとなっており、その対応に引っ張り出されている。
求められている能力は技術者としてのそれでは無い。こちらで30年ほど培ってきた(もちろんそれは言ってないが)交渉力を買われての火消し業務だ。つまりあんまり暇では無い。
本来は開発部隊として雇われてるのだから、来年の給料に交渉の余地が出来たと思うしかないのは余談である。
「で、今度は何だ?」
「押収物の無害化を手伝って欲しいってさ」
「いつもやってる事だろうに」
手伝いが必要な事項とも思えないのだが。
「分量が多すぎてパンク状態」
「そんなにあったっけ?」
「普通に考えたら一個軍に補給するだけの分量があったってさ」
「不動化はしてあるはずだぞ?」
不動化、というのは一時停止状態を意味しており、再起動は比較的簡単である。
無害化は破壊もしくは恒久停止と同義で、無害化してしまうと再起動はかなり困難だ。
今後の再利用可能性も考えて不動化にとどめたが、押収する時に二重不動化措置をとって念を入れた。
輸送後については魔術省が責任を負う事になっているから、そこは関知していないが。
「不動化だけじゃ済まないものがあったらしいんだよ。というわけで、悪いけど」
「……無害化技術を改善して貰わないと、手間がかかって仕方がないな」
私の仕事を減らすために、ちょっと努力すべき状況のようだった。
短いので次も同時公開しています