突入(2)
またまた短いです。
うまいこと暴れて貰ってその場で処分する事は考えていたが、それにしてもやる事が雑である。
「声に反応する魔石細工か」
奇声は攻撃発動スイッチだったらしい。
一瞬で相殺され魔石がはじけ飛んだ、壁に仕込んであった魔石細工を見ながら、私は試作品のポーラータイをポケットから取り出し、ファラルの前に投げ出した。
自動反応させたため、やはり出力調整は上手くいかなかった。
一部の被覆材が溶けている。とはいえ必要な時間は耐えたから、3Dプリンタと樹脂で作った試作品としては、上出来だろう。
ちなみに長衣の下に着けていた妨害装置は、使う必要すらなかった。
「発想は良いが、効率が悪い。無様なおもちゃだ」
ゆっくりと歩み出て、ファラルの前でわざわざ音を立てて杖をついてみせる。
芝居がかった脅しだが、効果はあった。
尻を床に付けたままずるずると後ずさったファラルは、壁に背中をぶつけ、唇を震わせていた。
「攻撃用途での魔石細工密輸も確認できたな?」
このままだと、普通に逮捕して普通に処刑する事になりそうだ。
まさか試作品で防げる程度の雑な暴れ方で終るとは思えないが、技術的には限界の可能性もある。
「大人しく同行して貰おう」
さて、どう出るか。
ファラルの目の前に『捨て』た試作品が燃え上がり、ファラルが悲鳴をあげた。
「魔術など使わせると思ったのか」
小さい声でぶつぶつ言っていたのは、やはり魔術行使のためだった。
こちらに応えようとせず、ファラルの手が動く。
飛んできた飛礫を杖で弾く。壁や床に飛んだ礫が発火したので、即座に酸素分圧を下げて消火した。
「手品はそれで終わりか?」
もう少し挑発しておいた方が良いだろう。書斎に入った者たちに注意を向けさせるには早い。
同時に観測端末を散開させ、広域警戒モードに変更。精密位置測定は出来なくなるが、異常魔力検出だけ出来れば良いだろう。
魔術行使はその後も続いたが、いずれも効果の小さいものばかりだ。
残念ながら、ここで暴れた犯人をやむなく処分、という筋書きは使えそうになかった。
「話にならんな、まったく話にならん」
これはトマソンの作品から仕入れたセリフだ。
芝居がかっているにもほどがあるが、劇中では魔導卿の定番のセリフなんだから是非使え、とノリノリのウルクス君に強く勧められてしまった。
あれでウルクス君、けっこうノリがいい。真面目なハウィル君とは好対照だろう。
「……あなたが、あなただけが、何故!」
さっぱりわけのわからん言葉を口にして、ファラルがナイフを手に飛びかかって来た。
ファラルの攻撃を半身になってかわし、帯電した杖で殴る。
軍から派遣された若者2名がそのファラルを抑え込み、逮捕となった。
短いので(3)は明日にでも公開します。





