【ホラー風】短編小説8「謎のボタン」
「ただいまー」
1人暮らしなので誰も居ないが何と無く言ってみる。
俺は椅子に座り一息つくとふと、あるものが目に入ってしまった。
それは機械のようなもので、赤いボタンが付いている。
記憶力はいい方だと自負しているが、こいつの記憶だけは全くない。思い出そうとしても、思い出せないのだ。
「このボタン押すとどうなるんだろう.....」
そんなことも考えた。世界が滅ぶ?宇宙人が攻めて来る?それとも......。
押してくれと言わんばかりに突き出ている赤い突起物はじっと俺の指を待って居た。
「明日も早いし寝よう...,」
その期待を裏切るかのように俺はベッドに入った。
「そんなこともわからないのか!」
学校内に怒鳴り声が響いた。生徒達の視線は怒られているこちらに向く。
「えーっと、その....」
何か言おうとしても言葉が出てこない。まあ座れ。と促されてしぶしぶ座り込んだ。
その時間中、俺はずっと俯いていた。
「お、大丈夫か?」
気にかけてくれたのか、横から友人が小声で囁いてくれる。
「あいつ、人によって態度変えるんだよな。出来ないやつには貶すような感じになるから嫌いだ」
「あぁ.....」
「はい、そういえば課題があったな。みんな提出するように!」
「え?そんなのあったか?」
先生の言葉に小さく呟く。
そんなことを言われた記憶がない。奥の奥を探っても、言われた見つからないのだ。
「おいおい、大丈夫かよ。この前言われてただろ?」
「そうだったかな....」
「ただいまー」
家に着き、いつものように挨拶をする。カバンを乱暴に起き、ベッドに横たわる
今日は嫌なことがあって気分がよくない。近くにあった枕を手繰り寄せて顔をうずめた。
ふと、あのボタンのことを思い出した。
あのボタンを押すとどうなるにだろう
そのことを考えれば考えるほど興味が湧いて来てしまう。
立ち上がりボタンのところに向かう。もうすでに他のことを考えさせてくれる余裕はなかった。
スイッチに手を伸ばす。ドクンドクンと鼓動が早まる。緊張とともにボタンは押された。
目の前が真っ白になるような感覚が一瞬し、もうその時は何も考えていなかった。
俺は再びベッドに向かった。
この光景をモニター越して見ていたのは偉い学者達。その中の一人が大きなホールの前で、嬉しそうな表情をしていた。
「みなさん、嫌なこととかあったりしますよね?そんな時にこのボタンがいいんです。1週間前までの記憶とこのボタンの記憶が無くなってしまうんです。これで嫌なことがあっても忘れられる」
「ボタンの記憶まで無くなるんですか」
それを聞いていた者が質問をぶつける」
「1回押すと記憶が無くなるため。『このボタンはなんだ?』となり、またいずれ押すでしょう。するとまた『このボタンは何だ?』となり押す。というのを繰り返すわけですそれによって嫌な記憶は一切残らない訳です。みなさんもどうでしょう.....」
押すことによって一週間までの記憶が無くなる不思議なボタン。それを押すたびにボタンの記憶もなくなり、再び押される無限ループ。
これによって学校の課題のことも忘れてしまい、提出できなかったのだろう.....
p.s 名前変えました。