試験、家族、弟妹
※前回少し変更があります
「では始めてください!」
「よろしくお願いします!私もお兄ちゃんに負けないぐらいなので………そりゃぁ!」
開始の合図と共に、レーナは魔法を構築する。レーナの杖から野球ボール並みの大きさの火の玉ができ、それを思い切り撃ち出す。
先ほどカイトと戦った上級生とは違う女性なのは、試験に公平性を持たせるためだろう。あの芸当を見せられてからだと妥当だと思う。
「…?ただの火球ですか…っはぁ!」
単純に見えるレーナの投げた火球を先輩が杖で弾けされ、火の粉が周りに散らばる。
「なぁマイル。あれってまさか?」
「そのまさかですね」
先輩が魔法を出そうと杖を構えるが、レーナの集中している姿を見て異変に気づいたのか風法でバリアを作る。するとジュッと言う音が会場に響く。
カイトがまさかと言った、レーナが使った魔法は火球に水を含ませ、火の粉だと思った飛び散った数十の小さい熱湯球をほぼ当てるという一見地味だが精密な制御が必要な中級魔法一歩手前のものだ。
「おしい!でも次は……「合格」…へ?」
「先生この娘も合格です」
「え!もう終わりですか?」
少し残念そうな声でレーナは言うと先輩は困ったような顔で言う。
「そんなに魔法が出来るなら誰が見ても合格です。そのまま技術が伸ばせれば中級までは問題ないでしょう」
「は、はい!ありがとうございました」
先輩のその言葉でレーナは杖を先生に返し戻ってくる。
「あとはマイルだね!頑張って!」
「で、では14番!」
「ほら、マイルは大丈夫だと思うが頑張れよ」
そう言われるがカイト兄妹のように目立ちたくないマイル。できるだけ目立たないぐらいに頑張ろうと思い、先生に杖を貰い構えると、またまた代わった赤い髪の先輩がやる気のないような表情で言う。
「あー、めんどくせー。さっきの兄妹だったらよかったんだがな……ちゃちゃっと終わらすか…」
その言葉に少しカチンときたマイル。
(やっぱ舐められるのも嫌だし……少し本気でいくか)
「では始めてください!」
「よろしくお願いします。私も少し本気で行かせてもらいますね?」
「ん?ほう…楽しみだ」
マイルの漏れる覇気に気づいたのか、やる気のない顔が少し真剣になる。
相手の持っている武器は木剣。まずは視界を塞ごうと風法に少し水を含ませたミニ嵐を発動する。この前アラスが持ってきた"テンペスト"から思いついた魔法だ。
「うおっ、二属性同時使用か…てか本当に八歳の子供かよ……」
案の定、相手の視界をふせぐことができたのを確認し、ぐちぐち言っている先輩には悪いがその間に次の魔法を構築する。
使う魔法は少しだけ魔法書で見た"ウインドスピア"だ。それを念には念をこめ五本作り、それぞれ違う速度で撃つ。ちゃんと当たると吹き飛ぶ程度の質量にしているので当たっても大丈夫だが一つ、少し硬くした物が混じるようにした。これにも理由がある。
「よ…よよ…よっと…!?せりゃぁ!」
難なくそれを木剣で全て弾く先輩。しかも最後の少し硬めのものにも気づき力を込めて弾く。
でもこれでマイルの作戦が成功した。
「……なるほどな、はぁ、合格だ。剣が折れちまった」
先輩は肩を竦め、折れた剣を先生に見せるとさっさと会場出口まで歩いていった。
今までとレベルの違いに驚愕する会場だが、三回目になると皆苦笑いしかできなくなっていた。
こうしてマイルもカイトほどではないが目立ってしまいつつも合格し、三人揃って合格することができた。
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「では、入学は一ヶ月後になりますのでその間に合格者は紙にかかれた物をしっかり用意してくること。では今日は解散です。入学式に会いましょう」
その先生の言葉で合格者の子供達が「つかれた」「頑張るぞ!」などと帰っていく。
あの後も普通に試験は続き、何事もなく終わった所だった。流石にマイルレベルはいなかったが。
「あー、やっと終わったな」
「ちょっと簡単すぎて拍子抜けしたね。緊張して損したかも」
「レーナは張り切っていましたからね」
帰路のハラリア街の大通りで話していると向こうから物凄いスピードで走ってくる馬車があった。
その馬車はマイルたちの前で止まり、中からアラスが焦ったような顔で出てきた。
「お父様?どうしたんですか?」
「マイル!探したぞぉ!それより試験はどうだった?と聞きたいが…まぁ早く乗れ!カイトくんとレーナちゃんも!」
そう言ってアラスは馬車に半ば強制的にマイルを引きずりこみ、何がなんだかというカイトとレーナも馬車に乗り込むと馬車がガタガタと走り出す。
「っでお父様、どうしたんですか?」
マイルはよくみたら興奮しているアラスに聞く。
「聞いて驚け!生まれるんだ!」
「生まれるって……まさか…!?」
「あぁ、新しい家族だ!」
その言葉にカイトたちがまだ見たことないぐらいにまぶしい笑顔になるマイルにアラス。
そんな雰囲気の中、なぜ俺たちも……?と思うカイトだった。
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壁の向こうで辛そうなルティアの声が聞こえる。
子供は邪魔になるからと、今は寝室前で待っていることしかできない自分に、なにかできないかとオロオロする珍しいマイルを見て、カイトが吹き出す。
「…っぷっははは…マイルだってオロオロするんだな?」
「当たり前ですよ。私だって人間ですから……それより弟でしょうか?それとも妹?」
「じゃあ、マイルはどっちがいいの?」
「初めてですからわかりませんよ……うーんどっちなんでしょうか……」
弟か妹でマイルが迷っていると壁の向こうから、ついに赤ちゃんの声が聞こえ、我慢できずにマイルはドアを開ける。
するとそこにはスヤスヤと眠っている赤ん坊を抱えてベッドに腰をかけているルティアがいた。
赤ん坊の髪の色は赤く、どことなくアラスに似ている。ということは……
「あら…マイル。ほら、元気な"男の子"が産まれたわよ。これでマイルもお姉ちゃんね。しっかり……って言いたいけど元からしっかりしてるから大丈夫よね」
弟ができた。お姉ちゃんと言われるのはやはり複雑だが、空騎士を初めて見た時と同じくらいマイルは嬉しかった。
それにしてもそのプニプニした腕を触りたい……マイルがそう思っているとルティアが察したのか。
「触ってみる?」
「はい!」
マイルは恐る恐るそのプニプニした腕をつつく。
(おおぉ!なんだこのプニプニ感は!気持ちいい……可愛いなぁ)
マイルにしてはまたまた珍しいにやけた顔に、後から入ってきた兄妹はそんなマイルを笑を堪えながら温かい目で見ていた。
「えー、では今年の入学試験について各エリアから報告を」
「ふむ……今年は見込みのある子供がいてくれればいいのじゃが…」
「こちらA班、残念ながら例年通りです」
「……こちらB班…同じく」
「………」
「…?C班報告を」
「は、はい、少し…いやかなり異常な子供が三名いました」
「ほほう、どれくらいか?」
「C班僕をふくめ三人と渡り合いました」
「「「!?」」」
「どういうことじゃ?まさか手を抜いた…わけではなさそうだな」
「はい、一人は騎士希望なのにもかかわらず魔法を使いこなし、一人は完全ではないですが二属性同時使用、そしてもう一人が完全な二属性同時使用に加え、中級魔法の"スピア"を使いこなして見せました」
「貴様!そんな嘘の報告を…!」
「まぁ落ち着けリルル…嘘じゃ……ないんじゃろ?」
「は、はい!嘘ではありません」
「……………ぷ…はははは!」
「学園長…?」
「いや、すまない。あまりにも驚いてな…」
そう言い、ガルディア学園長グラル・オーダスは笑った。
戦闘描写書くの下手です。なにやってるかわからなければ感想で言っていただけると編集ですぐ直すのでよろしくお願いします。
高評価ブックマークありがとうございます!執筆しようと確認したらいっきに増えていたので驚きました。励みになります。