質問、黒髪、少女
「そういえばさー」
「なんですか」
「それだよ、何で敬語なんだ?」
今はカイトの身体強化魔法の練習を始めるために、まずは魔力を全身に行き渡らせる練習をしている最中だ。その練習中にカイトはマイルの喋り方について聞いた。
(何でって言われてもな…本で言語覚えたから自然と敬語になっただけだし……やろうと思えば女の子っぽくもできないこともない。その代わりに色々な物が犠牲になるけど)
「まぁ、できなくもないですけど……嫌ですか?」
「そんな事はないんだけどなー、暇だから聞いてみた。それにしてもなんか地味な練習だな」
全身に魔力を行き渡らせる練習といってもしていることは、座禅を組んで瞑想するだけ。しかしこれが中々に大事なことなのだ。
「確かに地味ですけど、しないと大変なことになりますよ」
「……例えば…?」
マイルは少し悪戯っぽい顔にして言う。
「最悪使った箇所が吹き飛びます」
魔力を行き渡らせる練習をしておかないと魔力が流れる魔力回路らしき所に負担がかかり、一度に大きな魔力を流し込もうとすると魔力の渋滞がおこり血液と同じように回路が破裂し、そのまま一生使えなくなるか最悪吹き飛ぶとアラスの持ってきてくれた本に書いてあったのをマイルは思い出す。
「……が、頑張るか」
「はい。それと右手に魔力偏ってますよ」
「えっ、お前そんなこともわかんの?」
「なんとなく……目を集中させたら…?(……確かになんで俺こんなことできるんだろ?本にもこんなの出来るなんてなかったし…まぁ、害はなさそうだし今はまだそんなに考えなくてもいっか)」
マイルは思考を放棄した!
「何故疑問系……てかなんでもできそうだな、お前」
「なんでもはできないです。できることだけ」
そこでマイルはすかさずあの名言を言ったところで今日の練習は終わりにした。
そして次の日、カイトはいつも通りの時間帯に家にやってきた。後ろに黒髪の少女を連れて。
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「っでカイト、その女の子は?」
マイルは最初会った時のカイトのようにマイルの方を見て目を輝かせている黒髪の少女について聞く。
「妹のレーナだ」
「妹さんがいたんですね……知りませんでした」
「そういえば言ってなかったしな。住んでいる所も違うし」
「なるほど」
住んでいる所も違うというのも前言っていた家の事情なのだろう。なんか思っていた以上に複雑そうなので、もし助けを求められた時以外は極力関わらないでおこう。
「それで頼みがあるんだが……」
「レーナさんにも魔法を教えてと?」
「……あぁ、そのことなんだがどうにか…」
「私は別にいいんですけど……なんか震えてません?」
レーナに目を向けるとプルプルと震えていることがわかる。
なんだろうと思いマイルが近づくと急に飛びついてきた。
「え、えっなんですか?」
マイルはカイトを見ると、カイトは「やっぱりか…」などと呟き、ため息をついていた。
「か…」
そこでレーナが初めて小さいが声を出す。
「かわいい!」
「はい?」
「お兄ちゃん!なんでももっと早く紹介してくれなかったの!?」
「お前がそうなると思ったからだよ…!」
そこでレーナにカイトがデコぴんをくらわせる。
「痛い……なにすんのよ!」
「そろそろ離れてやれ。マイルが苦しそうだぞ」
「えっ…あ、ごめんね?えーと、私はお兄ちゃんが紹介した通りレーナ。歳は七歳だから同い年かな。あなたはマイルちゃんだよね?」
同い年ということは双子?と疑問になりつつも自己紹介されたのでマイルもついた土を払いながら言う。
「ちゃん付けはやめて欲しいですがマイルです。カイトも七歳でしたよね。もしかして双子ですか?」
「いや、母さんが違うってやつだ。最悪な事に俺もレーナもあのクソ親父の子だ」
「…そ、そうでしたか」
聞かなくても少しだけカイトの家の事情がわかった気がする。
「それでレーナさんも魔法を学びたいと?」
「うん、お兄ちゃんが使ってるのを見ちゃってね。アタシもできたらいいなぁって。八歳になったら学校でしょ?その事もあってね…。あと!呼ぶ時に『さん』はいらないから!」
「カイト…」
「…すまん、火をつけたかっただけなんだ」
カイトとは魔法をマスターするまで危ないので使うのは注意していた。万が一のためだ。
あとレーナが言う学校とは勿論、マイルが空騎士を見たガルディア魔法学院の事である。その学校には一定の成績がないと入れないし、入ったとしても成績が悪ければ退学と少し厳しいらしい。もちろんマイルも魔法学院には行くつもりだ。魔法学院には上級階級、中級、初級と分けられており、上級階級じゃないと受けられない授業や見れない空騎士の本があるのだ。
「では学校入学するまでに時間があまりないので早速今日から始めましょう。じゃあレーナ初級魔法をやってもらう間にカイトはお父様に剣を学びますか?」
「ん?あれもういいのか?魔力通わすやつ」
「ずっとやっていても暇でしょう?それともやりますか?」
「……お言葉に甘えてアラスさんの所行ってきます…」
「はい、でも二日に3時間はやっていてくださいね?ならさないといけないので」
「おう、じゃあレーナ頑張れよ」
そう言ってカイトはアラスがボランティアでやっている剣術教室に行ってしまった。
そのままレーナと既に三回目となる初級魔法練習が始まるのだった。
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