友達、練習、悩み事
次の日の朝、マイルの家の前に黒髪の少年が立っていた。
「よっ、早速きたぜ」
「…………」
昨日の夜にクッキーを食べながら魔法について少しだけ話し、そのせいでますます興味を持ってしまい教えてと目を輝かせながらせがまれたので渋々Okして家の場所を教えたのだが……
「カイトですか……確かに近日中に教えると言いましたけど次の日に来るんですね」
「おう、待ちきれないからな。早く俺にも魔法を教えてくれ!」
(早すぎるだろ……せめて明後日ぐらいだと思って久しぶりに寝ていたのに……)
もうすぐ昼前になるのだが、前世のころから寝るのは好きだったマイル。それを邪魔されてムッとなるが、元々の元凶を作った自分が悪いと納得する。
「わかりました。けど少し待ってくださいね。着替えてきますから……」
「お、おう」
何故か少し顔が赤くなったカイトを玄関においといて、マイルは自分の部屋で着替えることにした。
着替えて玄関に戻るとカイトがいなくなっていた。
(あれ…どこ行ったんだ?もう外で準備運動してるのかも)
そう思い外に出ようとするとリビングからカイトの声がした。
「すごく美味しいですね、これ!」
「でしょう?これはねー、マイルが作った《ぷりん》というものらしいわ」
「なにしてるんですか……」
リビングに行くと、そこにはカイトがマイルが試作品として作ったプリンをスプーンで食べるカイトと、何故かいつもより笑顔のルティアがいた。
「お、マイル。上がらせてもらってるぜ。それにしてもこのぷりんってやつ美味いな」
「それはありがとうございます。ではお楽しみの練習、しましょうか?」
マイルは満面の笑みでプリンを食べているカイトに言った。
「あ、少し待ってくれあともう少しぷりn……ちょ、ひっぱんなひっぱんな!」
マイルはプリンを食べているカイトを問答無用で玄関まで連れ出そうと手首を掴み引っ張る。
「まぁまぁ、マイル。少しぐらいゆっくりしてもいいんじゃない?ほら、マイルずっと魔法の練習ばっかりで他の子と遊ばないもの。けどこうやって友達連れてきて私嬉しいわ。だから少しぐらい……ね?」
「お母様……でも…『ぐぅぅぅ……』」
そこまで言いかけた所でマイルのお腹が盛大に鳴る。
(そういえば朝ごはんまだだったな…)
そのまま恥ずかしさに顔を赤くしながら、練習は朝ごはんを食べてからすることになった。
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「では説明しますね。私が夜のマラソンの時に使っていたのは身体強化魔法と風法です。元素魔法はわかりますよね?」
「実をいうと、魔法は初めてなんだ。だからわからん!」
そこは威張る所じゃないだろっと内心ツッコミつつ、アラスに教えてもらった時と同じように教え、実戦させてみると全て不発だったができそうだったのは火法だった。しかしこれが普通である。一回目からできるのは余程才能がある人かマイルのような特殊な人だけだ。
「まぁ、始めてすぐできるものじゃないらしいので落ち込まないでください」
「そう言われてもな……中々難しいもんなんだな…魔法って。因みにお前何歳だ?」
「六歳ですけど」
「同じじゃねえか!」
「あと初めてやった時にはすでに初級魔法全てできましたよ」
少しドヤ顔でマイルは言った。
「まじかよ……マイル…お前やっぱりすごいんだな」
マイルはやっと魔法の難しさがわかってくれたと思い。心の中で安堵する。実はマイル、魔法の難しさをカイトにきっちり教え、諦めさせようとしているのだ。教える事は嫌なわけではないのだが面倒ごとは避けたいのである。
(でもこれで諦めてくr「楽しいな!」……え?)
杖を握る手に力をいれ。
「できない方ができた時一番楽しいんだ!だから絶対習得してお前に追いついてやるから待ってろ!」
そういいながらカイトは笑いかけてくる。
(楽しい…か。最近そんなに楽しいと思ったことそういえばなかった気が……少しぐらい寄り道してみてもいっか。今思えば俺……六歳児なんだよなぁ)
マイルは忘れかけていた懐かしい初心の心を思い出す。前世でも《楽しくマイペース》をスローガンに生きていたし、頑張ってきた分ぐらいは寄り道しても大丈夫。マイルはそう思えた。
それから毎日のようにカイトはマイルの家にやってきては練習した。練習内容は魔法を使い続け、なくなりそうになれば少し休憩し、スタミナをあげるためマラソンをするというものだった。
幸いカイトは理解が早く、一ヶ月後には初級魔法は問題なくなった。因みにこの世界の暦は、3週間一ヶ月の12ヶ月までなのでアラスよりは遅いが一般的には随分早い方だった。
「さてカイト、そろそろ次のステップに行きましょうか」
「おう!っで、次は何するんだ?」
カイトは疲労を感じさせない笑顔でマイルに聞く。
「それがまだ考えてないんですよね…。私は初級魔法の次は、お父様が持ってきた魔法書をひたすらやっていたのですが……やります?」
「それは楽しかったか?」
「私は楽しかったですが……地味ですよ?」
「そうか…じゃあ、あの最初会った時やってた魔法はどうだ?」
「身体強化魔法ですか……」
そこでマイルは考える。
実はマイル、少し使いやすいように身体強化魔法を改造しているのだ。
元々身体強化の原理は身体全体に魔力を行き渡らせ、筋肉が動く時の負担を出来るだけ抑えるものだ。しかしマイルは、これって魔力もったいなくね?と思いできたのが、筋肉の補助ではなく魔力で使う部分だけに集め仮の筋肉を作るというものだった。
この話を魔法研究所などにすると、一躍歴史に名が残るほどすごい事なのだが、そこはマイルも理解している。さすがに魔法を改造するなんて常識破りの事をしてしまったのだ。少し鈍感なマイルでもやばいと思った。
結論、マイルがカイトに教えるために悩んでいる事は二つあった。
一つは、カイトがこの改造した身体強化魔法を近所の人にでも言って、広まってしまうと研究所などに目をつけられ、穏やかな空騎士までの道のりがなくなる事だ。
二つ目は完全に独学なので、初級魔法を教えたように説明がある魔法書がないことだった。この場合、教えるとなると最初のアラスのように「こうやって……っば!っとしたらできる」のような、抽象的な教え方になるかもしれない。
っということを考えても無駄だと思い、カイトに話した。
「へぇ……いろいろ大変なんだな。まぁ、誰にも言うなっていうなら言いふらさないし、教え方は理解すれば問題なしだ」
そこでマイルは思っていたことをカイトに言う。
「なんでカイトはそんなに頑張るんですか?」
するとカイトの顔が一瞬曇った気がしたが、すぐに元の顔に戻り言う。
「楽しいっていうのもあるんだけどな……簡単にいったら家の事情で早く騎士になってあんなとこ離れたいんだよ」
「そうですか…」
それ以上深い事はマイルは聞かなかった。
子供にも触れてほしくない事情がある。
「じゃあ、逆に聞くけどさ。マイルはなんで頑張ったんだ?」
「聞きますか!そんなに聞きたいなら話さざるおえないですね!」
「えっ?いや、そんなに……」
「私が頑張っているのはですね、空騎士に………」
それから一時間ほどマイルの空騎士話が始まった。
読んでいただきありがとうございます。
今回も、読んでおかしな文があれば感想に書いてほしいです。
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