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怠惰にVRMMO(仮)  作者: 耀
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1話

「じゃ、気をつけて帰れよ」


教卓に立つ教師が教室を出て行くと生徒たちが騒ぎ出す。その中で後ろの窓側の席に顔を伏せ寝ている生徒がいる。その席に紙袋持った生徒が近付いて行く。


(しゅう)、起きろ。ホームルーム終わったぞ」


「ん、おはよ、大和(やまと)。なら帰るか」


紙袋を持った生徒、大和が寝ていた生徒、宗を起こした。起きた宗が顔をあげるとだるそうな表情だが少女のような可愛らしい顔が露わになった。


「ちょっと待った。帰る前にこれ渡しとく」


帰ろうとする宗に待ったをかけ、持っていた紙袋を渡す。


「なにこれ?」


受け取った紙袋の中には少し大きな箱が入っていた。


「これはなVRゲーム専用ヘッドギア『ネバー』だよ」


VRとは、ヴァーチャルリアリティの略で近年色々な分野で扱われている。そして、大和が宗に渡したのはゲーム専用のものだ。


VRゲームは意識をゲームの世界に飛ばし仮想の世界で仮想の体を動かすことのできるゲームだ。そのリアリティにゲーム好きは『ネバー』を買い求めたが、あまりの人数に生産速度が追いつかず十万分の一の確率の抽選で当たらなければ買うことができないのだ。


そんなレアものを大和は宗に渡したのだ。


「これどうしたんだ?」


「実は俺、『Another World Online』のベーターテスターだったんだよ」


『Another World Online』、それはVRゲーム初のオンラインゲームだ。そのベーターテストも『ネバー』と同じで抽選でテスターが選ばれる。


「それで、テスターだった俺は製品版になる時に『ネバー』をもう一機貰ったんだよ。だから、折角だから宗と一緒にやろっかなって」


大和は少し恥ずかしそうに言った。


「そっか。でも、俺あんまりゲームしないし楓姉(かえでねえ)に渡した方が喜ぶんじゃないか?」


楓姉とは大和の姉で宗たちの一つ上の高校三年生だ。


「あ〜、実は姉貴もテスターなんだ」


「…お前ら姉弟(きょうだい)どんだけ運がいいんだ」


片方だけでも入手するのが難しいものを大和姉弟は二人とも手に入れている。


「まあ、そういうわけでそれやるから一緒にしようぜ」


「いいけど俺ゲームより読書のほうが好きだからあんまりゲームしないぞ」


宗は基本家にいるときは寝ているか本を読んでいるかのどちらかだ。まあ、外でも基本そうだが…。


「そんな宗に朗報(ろうほう)だ。なんとこのゲーム図書館があるだ。しかもかなり大きな。さらに、このゲームには知覚加速(ちかくかそく)システムが実装されていて、現実の1時間がゲームの中では5時間になるんだ」


「…マジか」


それを聞いた宗は驚いた表情を浮かべた。


「だったら、本も大量に読めるし現実の5倍も寝れるってことか!」


「お前がテンション上がるなんて珍しいな」


大和が苦笑しながら肯定した。


「だから、たまにでいいから俺たちと一緒にダンジョン行ったりクエストかなんかしてそれ以外はお前の自由にしていいから俺たちと一緒にゲームしようぜ」


そう言い大和は笑った。


宗と大和は幼馴染みでよく一緒に遊んでいたがゲームが得意でない宗は大和や楓がゲームをしているのを後ろから見ているだけだった。パーティゲームを大和たちとする程度だ。


なので、アクション、特にオンラインゲームをしたことがない。


「…わかった。こういうゲーム初めてだけどやってみる」


「おう、もしかしたらハマるかもしれないぜ」


「だな、帰ったらやってみる」


「そのヘッドギアにAWO、『Another World Online』のことな、がダウンロードされてるからすぐ始められるぞ」


話の区切りがついたので二人は帰ろうと宗が席を立つと、


「…持とうか?」


宗が紙袋を両手で必死に持っているのを見た大和が声をかけた。


「…った、頼む」


「お前、マジで力無いよな」


「剣道部のお前と比べるな」


大和は剣道部に所属しており、全国大会に出るレベルだ。


「お前も運動すれば筋力つくぞ」


「やだよ、だるいし。俺は家で本読むかぐうたらしてたい」


「お前はそれが似合ってるわな」


宗の返答に大和は苦笑した。


「ま、家まで持って帰ってやるわ」


「ごめん、頼む」


「おう、任せろ」


大和に紙袋を持ってもらい二人は帰るために教室を出た。

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