たろうくんはりんごを買いに行きましたがお店の人はりんごを売る気がありません。さてどうしますか?
ーおかしい
俺はりんごを買いに来ただけだ
なぜこうなるんだよ!勿論他の店に行くことは可能だ。しかし、それは家族の信頼を無くすかも知れない
これは…問題だ。それも算数や国語なんて問題じゃない!
手元には425円がある。りんごの値段を見る。310円?目を擦りもう一度見る、やはり…310円!?そんなりんごは何故かどんどん金に変換される。
なぜだ…さっぱり僕には分からない!
とりあえず一旦整理しよう
*****
それから2分程が経った。なるほどと整理がついた
(手元には425円)ー(りんごが310円)=115円
しかし問題は店のおじさんは売らない(理解できる訳がないが…)そして。買うのはたった1個という問題だ。1個で何が出来る?せいぜい愛嬌があるウサギの形をしたりんごが皿に盛られるだけだ。
ここでメモを確認する。やっぱり…1個だ
そうか!理由が分かった!話は三日前に遡る
それは学校のテストが返却された時のことだ
珍しく期待以上の点数を取った。85だ。ここで事件と成るのは85と言う数字でもなく高得点というはたから見たら喜びに感じる事実ではない。よりにもよって家の学校にはあの店の息子がいる。隣のクラスだがいちいち突っかかる暇な男だ。名前はけんじという。
そうだ…あいつはたしか82だったな。僕は問題を思い出した。「りんごだ」あいつが間違えた問題はりんごが問題文に入っていた!それさえ解ければ点数は僕を超えたかもしれないじゃないか!
ひどい!こんな馬鹿な話があるか?僕はただ出された問を頑張っただけなのに?
その途端僕は虚しくなり店の主人に軽蔑の目を送りながら他の店に行った。
あっさりりんごは買えた。しかも、280円で
僕は家に帰って母にそのりんごを見せた。もちろんお釣りも渡した。当たり前か?そしてりんごを食べた
りんごの切り方は四角く切ってある。1口食べた途端
僕は目を1センチぐらい大きくしたかの様に驚愕した!!全く美味しくない!台所からは肉の焼ける匂いがすれ。外からは子供の遊ぶ声が部屋に入りこだました
悔しいので全部食べてやったらりんごの無くなった皿が其処には合った。夕食まで部屋にいるかそう思った僕は階段をトントンと登っていき部屋に入った。そして泣いた。もう大人なんだから泣くなって?まだ僕は子供でしかなかった。涙は床に染み込んで行った
その夜学校に提出する日記に僕はこう書いた
ー隣のクラスのけんじ君のお父さんにいじめられました
りんごを売ってくれませんでした。
ただ1つ良かったことは変わりに買ったりんごがおいしく無かったことです。もちろんこれで世の中なんて子供の僕には全く分かりません。でも、意地悪をすることが愛だなんて僕の頭でも心でも理解できません
でも大人になったら当たり前にやるかもしれない。
そんな怖さを知った1日でした。ー
かっこつけた様な文だ。先生は読むだろうか…
読まないのは否定出来ない
まぁいいか僕が忘れなければ。明日は晴れれば良いなとか思いながら寝た
翌日、提出した日記が帰ってきた。そこには赤の先生らしいペンでこう書いてあった
ー世の中は残酷です。先生も裏切られたことが何度も有ります。けんじ君には私が叱っておきます。ー
残酷…意味は分からないがなんだか怖そうな言葉だ
つまり世の中は怖いのかと、勝手に解釈した
あれから20年程経った。僕は普通に生活している。けんじはりんご農家をやっているらしい。また、あの街に戻って不味いりんごを沢山買ってこようか…あっ美味しいかもしれないな。なんて事を今世の中らしい街で考えている。
先生、
あの街の写真を眺めながら僕は呟いた
「また、あのりんごが食べられるのでしょうか」
この問題に解答は無い。