ブルーブラッドに染まるまで
「仕方のないことだよ」
そういって医師はどんどん私の体から血を抜いていった。
そのかわりの血液が補充されていって、だんだん自分が自分ではなくなる。
ただ冷たい血が、すべて自分の血と取って代わるように
入れ替わってゆく。
それに対して抵抗はしなかった。
傍らで見守る家族が神妙に見守っている。
私は喋れないでいる。
医師は喜んでいる。
「これであなたのしたかったことがすべてできる」
そういって医師は私の手を取った。
とった医師の手があまりに熱くて、
とられた自分の触れる指先と指先があまりに冷たくて
すごくびっくりした。
感情の起伏ごと血液に持っていかれる。
傍らの家族は神妙に見つめている。
その家族に対して何色の感情も沸かない。
悲しいことに自分の赤黒い血液は太いチューブからどんどん抜かれて行って
代わりの赤い血液が注ぎ込まれる。
でも私にはその血液は赤ではなく、海のような冷たい青さをたたえて
自分の体に注入されているような気がした。