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え、乙女ゲーム? 上

「そういえば、リウ知ってる? この世界のアンセナ大陸のレフ国なんだけど、実は乙女ゲームが関わってるんだよね」

「え?」

「僕の父親が変装してゲーム会社を立ち上げてるんだけど、僕もその会社の経営に少しばかり関わっていてね、レフ国をその乙女ゲームの舞台にしてあるんだ」

「へ?」

「でね、その舞台だけど、そろそろ役者が揃いそうだって言ってたんだよ。だから、そのうちヒロインが学術都市の学園にやってくるはずなんだ」

「言ってたって、お義父様が?」

「そ。でさ、リウ、その学園に通ってみない?」

「通うって、私が?」

「そう。そして役柄はサポートキャラ。ヒロインの手助けをしてくれると助かるんだけど」

「私じゃないと駄目なのそれ」

「うん。好感度を教えないといけないし、それは僕とリウにしかわからないからね。だけど僕は男だしね。ヒロインにはどのキャラかと、いや、誰かとハッピーエンドに向かってほしいんだ。バッドエンドだと、魔王が復活しちゃうからね」

「魔王? え、そしたら勇者やら聖女やらが、また出てくることになるわけ?」

「その時は聖女はヒロインが務めるけど、勇者はおそらく召喚になるんじゃないかなあ」

「おそらくって……。はあ、わかったわ。行かないと面倒ごとが増えそうよね」

「ありがとう。そう言ってくれると思ってたよ。じゃあよろしく」


 神様業って、結構色々あって大変だわね。

 仕方ないから私は外見を十六歳頃にいじって、その学園に転入生として入り込むことにした。ヒロインは二年生の春に転入してくる。私はそれよりも先に学園へと入り込んで、情報集めをしまくることにした。

 持っている手帳には、落とされる予定の人物の詳細が書かれていて、それを元にヒロインに情報を流す感じ。

 好感度は、ヒロインが私に誰々って私のことどう思ってるのかなあ、という質問があった時だけ教えることになってるみたい。

 で、その落とされる側の人物だけど。

 一人目は赤髪緑目の勝気なスポーツマンタイプ。二年生。赤城圭吾(あかしろけいご)

 二人目は眼鏡をかけている秀才タイプ。二年生。蒼蓮守(そうれんまもる)

 三人目は生徒会会長でリーダーシップをとるのが上手い気さくな三年生。木嶋橙希(きじまとうき)

 四人目は風紀委員長で融通が利かない鬼畜な黒目黒髪の三年生。黒野聡(くろのさとる)

 五人目は保健医のけだるげな色気たっぷりの先生。茶土秋人(さどあきひと)

 六人目はイギリス人とのハーフの子犬系。一年生。小金井(こがねい)クロード。

 これらの六人がヒロインの相手役なんだそうな。漢字じゃん! って思ったけど、そこはスルーしてってアラリスに言われた。そんなのありなわけ? ちなみにヒロインの名前は渡辺愛美(わたなべえみ)

 しかも、名前漢字なのに中世ヨーロッパにあるみたいなお城の学園に街並み。なんだかすごい違和感があるんだけども。

 気にしたら負け、だよね……。


「ふうん、ここが食堂にあっちが体育館。でもって向こうを曲がれば購買があるのね。職員室は二階かあ」

「君、もしかして転入生のリウさん?」

「あ、はい。そうです。えっと、あなたは?」

「俺はこの学園で生徒会長をしてる木嶋橙希。何か問題が起きたらいつでも生徒会室にきてね。三階の角がそうだから」

「わかりました。ありがとございます」


 じゃ、と言って去っていく木嶋先輩は、爽やかな印象だった。

 いくら私が見かけない人だったとしても、なんで転入生だってわかったのかしら。不思議に思ったけれど、外見の特徴でも先生に聞いたのかもね。多分、生徒を把握しておくために、とかで。まあ、いっか。


「とりあえず、そのスチルとかになる場面を把握しておいた方がいいのよね。渡辺愛美がどんな選択肢をしているか知っておかないと、私も好感度の調整しずらくなっちゃうし」


 まず最初に渡辺愛美が転入日初日に遅刻をしてくるのよね。で、近道をしようと中庭を通ったら、サボってた茶土秋人に声を掛けられて、そのまま教室まで連行されるんだとか。

 で、同じクラスの私の隣の席につくんだっけ。シナリオは一通り頭に入れてきたけれど、本当にそう上手くいくのかちょっと疑問よね。

 そう思いつつも学園生活を満喫している私。だって、地球では学校卒業ができなかったから、こっちで少しでも学生気分を味わっておきたいかなって。

 そんなことを考えつつ、私はホームルームを抜け出して中庭に来ていた。


「へええ、中々綺麗な中庭じゃない」


 中庭には薔薇園があって、蔓薔薇のアーチをくぐって小道を進んだ先には東屋があった。その東屋は薔薇が壁のように三面を囲んでいて、小部屋のようになっている。その小部屋の隣には温室があって、そこでは色彩豊かな花々が咲き誇っている。

 私はとりあえず東屋に行ってみることに。ついでだから、お茶でもしようかな。

 異空間から取り出したテーィセット。もちろん温かい紅茶も入ってる。クッキーも出して、ほっこりしながらその空間を満喫する。


「ああ、まったりでいい感じ」

「そうですね、ですが今はホームルームの時間ですよ。なぜあなたはここにいるのですか?」

「え? あ、もしかして風紀の」

「委員長を務めています黒野聡といいます。私は教師から許可を得て授業やホームルーム等に出ていない人物を探しているのですよ。あなたみたいなね。減点一です。一〇ポイント貯まりますと、一週間ノトイレ掃除が待っていますよ。頑張ってくださいね」


 うわ、いきなり現れたかと思ったら減点? そんなのあるの。


「あなたは見かけない方ですね。一応、全生徒の顔と名前は覚えていたはずなのですが。お名前は?」

「雑賀莉羽です……」

「ああなるほど。転入生ですね。覚えました。今後はお気をつけ下さい。では」


 風紀委員長はそう言うと去っていった。あの人足音してないよ。忍者みたいだわ。にしても、これからサボることは多くなるだろうから、今日の減点一は大きいなあ。

 すっかりまったり気分は霧散してしまって、仕方がないから私は今日は寮に帰ることにした。

 寮に戻った私は、一人ルームだから部屋の鍵を掛けた後に私の家に転移する。寝泊りは自分の家でしたいものね。

 翌朝。

「リウ、学園生活はどんな感じ?」

「中々楽しいわよ。ねえ、アラリス。渡辺愛美って子、性格はどんな感じなの? もうどこにいるか知ってるんでしょ?」

「ヒロインの子かあ。っそうだなあ、周りを見ないタイプ、かな」

「てことは、色々騒動起こすってことよね。トラブルメーカーか。私に務まるかな」

「大丈夫じゃない? リウって中々にしぶといからね」

「なんその言い方! まるで私が図太いみたいじゃないの」

「あれ、違ったっけ?」

「そんなこと言う口は、ルークスの朝食はいらないわよね!」

「え、ちょっとまっ」


 ちょうどルークスが朝食を運んできたから、私は二人分を腕で囲ってがつがつ食べてあげることにする。なんだってこの繊細な私が図太くなんないといけないってのよ。


「はあ、そういうとこが、あれなんだけどねえ」


 アラリスが諦め溜息を吐く。ふんだ。

 あ、そろそろ学園に行かないと。またあの風紀委員長が来たら面倒だし。渡辺愛美と関わりあいにならない限りはあまり接触したくないのよね。攻略対象とは。


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