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休日

 ロランさんとアランさんの一件から一ヶ月。

 二人は和解し、私にも正式な謝罪があって、もう水に流そうってことになった。

 そうして、最近は二人揃って店に買い物……ではなく、私と話に来ている。皆の前で、私への好意をバラしちゃったわけだから、開き直って落としに来ることにしたらしいよ。

 私はなんで彼らに好かれてるのかさっぱりだけどね。だって、チョロすぎでしょう。神様効果とかいうのでもあるのかしらね。見た目は普通だと思うし、私。


「なんか神々しいオーラでも出てるのかしら」


 私は今、新しい薬ができないかを考えているんだけど、やっぱり難しい。

 この前ルブルと一緒に行商へ行ったときのことを考えて、次から行商をするときは、病気系の万能薬まで作れるかはわからないけど、それに似た薬までは準備しておこうと思ったのだ。エリクサーじゃ奇跡と同じだし。

 私に関わった人が、悲しむのを見ているだけなんてできないから。

 でも、それでも神力を使って治すっていうのは極力したくない。そんなふうに思うのは、ひどい女神だろうか。だけど、安易に奇跡に縋る方法はとりたくない。

 きっと、この辺りのことは、ずっと悩むことになりそう。

 でも私が作れる薬って、滋養強壮、風邪、鎮痛、貧血、不眠に効くのしかないのよね。あと一、二種類は増やしたいけど……知識が乏しいから作れないか。

 うーん。

 魔物の素材から作れるものしかないのよね、あとは。

 例えば、麻痺攻撃してくる魔物がいれば、その牙とかの粉末を麻痺解除薬として作れたりするんだけど。でも、今私が作ろうとしているのは、普通の病気にたいしてだからなあ。

 魔物系のなら、材料さえ揃えばそっち系の万能薬は作れるんだけど。

 こうなったらハーブティーで頑張るしかないよね。幸い日本にいた頃少しだけやってたし。結局、新薬は作れなかったけど、ハーブがあるからそれでやるしかないか。

 さてと。

 気を取り直して。


「次は新しい物でも作ろうかな」


 なにがいいかな。

 私は作業場から売り場へと移動し、カウンターで作業しているルーのお背中を見ながらあ、と思った。

 そういえば今日はお店は休みなのよね。安息日だから。皆思い思いに過ごしてるんだろうな。なんだかそんなこと考えてたら、どこかに行きたくなってきちゃった。


「ねえ、ルー。それ一段落したらどこか行かない?」

「そうだな。たまには安息日にどこかへ行くのもいいな」

「どこがいいかな」

「中央広場はどうだ。屋台もあるからなにか食べながら本を読んだり、素振りをしたり」

「まったりな提案ね。でもいいかも。じゃあ、私はそこで昼寝でもしようかな」

「では、俺は皆を呼んでくる」

「うん」


 今日はアラリス教の安息日なんだけど、リウラミル教ができてからは、二つの宗教の安息日になった。アラリス教は、国推奨の宗教なのよ。

 安息日は、なにもしてはならない日なんだけど、それは労働に関してのみで、その日は皆自由に過ごしてる。実は陛下でさえこっそりお忍びで街に出かけてるなんて噂もあるくらい。

 そんな噂があるくらいだから、皆解放的で、お祭り気分になるのよね。実際安息日を含めてお祭りを開催している国や街もある。王都ではないけどね。

 ちなみに、屋台は労働に含まれないんだってさ。なぜなら、屋台の人も飲み食いしながらわいわい騒いでるから。

 教会で祈るのもいいけど、毎週一度のパーティみたいなのも楽しくていいよね。

 そんなことを思っていると、アラリスがやってきら。


「リウ。でかけるんだって?」

「うん。といってもまったりしに行くだけなんだけど。王都の中央広場でのんびりしようかって、ルーと話ててね、皆で行こうかってなったの」

「いいね。僕は久々に屋台の串焼きが食べたいかな」

「我はりんご飴がいいぞ」


 すぐにルブルも来て話に参加する。だけど、りんご飴って。なんかギャップ萌えでも狙ってんのかしら。可愛いじゃないの。私も串焼き食べたいな。


「私はがっつり食べて、昼寝しまくるわ」


 それからすぐに皆が集まったから、私たちは中央広場へ向かうことに。ぞろぞろ歩いてたら、女性たちの視線が多いこと多いこと。

 私は羨ましそうな、そして、なによあの女は、的な視線を受けつつ、知らないふりをして歩いた。ああいうのって、無視するに限るからね。目が合ったら文句言われたことあるからさ。

 途中でロランさんとアランさんが加わって、七人になった。大所帯になってきてる気がする。

 逆ハーって言うけど、ニコラみたいなつもりは全くないんだけどな。他の人からはそう思われてるかもしれないのが、ちょっと嫌だ。


「ああ、食べた食べた。じゃあ私は寝よう。おやすみ」

「ボクも寝る」


 シートの上でごろんと横になると、アルビーが寄ってきて隣に寝転んだ。うん、可愛い。

 今日は天気もいいし、上になにか羽織らなくても平気な気温ですごく気持ちがいい。時々はこうして皆と仕事を忘れてまったりごろごろするのもいいよね。

 今まではいろいろしまくってたからなあ。そろそろゆっくりしだしてもいいかもしれないね。

 さっきまで仕事のことを考えてたことは隅に追いやって、私は安息日を満喫することにした。


「失礼、そなたがリウ殿で間違いないか」

「あ、はい。そうですが」

「わしはそこにいる二人の叔父、シグルドと申す。そなたの作った缶詰とやらを詳しく知りたいのだが、時間を少々もらえないだろうか」

「叔父上!」

「缶詰のことですか。かまいませんけれど」

「それは助かる。できれば缶詰を見ながら話をしたいのだが」

「わかりました。では、店に案内しますね」


 はあ。

 結局これだと休めないわね。というか、ロランさんとアランさんの叔父って、騎士団長じゃないの。

 これはなんだか面倒そうな匂い。

 私とシグルドさんは、店に行くことにしたんだけど、私が帰るなら、と、結局皆ついてきてしまった。悪いことしたわね。今度なにかで埋め合わせしないと。


「ほう。ここがリウ殿の店か。しかし、すまぬな。安息日だというのに仕事をさせてしまった。だが、わしもこの日以外は時間がとれないのだ」

「騎士団長をされているのですよね」

「ああ。特に今は演習があるからな」


 なんだか大変そうね。

 演習に缶詰か。じゃあもしかしたら、兵糧関係の話ってところかしら。

 私は店内へとシグルドさんを招き入れると、お茶を出すために、作業場へと入る。ちょっと緊張してきたから、リラックス効果のあるハーブティーにしよう。

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