パフェとクレープ
コレット嬢の邸へと行く日。
私は籠にアイスクリームの缶詰を入れて、邸へと歩いて向かった。新作のアイスクリームは、チョコチップとメロン。これで五種類のアイスクリームができたわけ。
で、今回はそれらを売り込みにいくのだけど、パフェを作って食べてもらうことにしたの。アイスクリームにヨーグルトをかけると、しゃりしゃりするのよね。その食感も楽しみつつ。
フルーツパフェなんか、お嬢様方にはおすすめだと思うのだけど。あとはクレープとか。
だから、フルーツも籠に入れてあった。邸のシェフに、作り方を教えないといけないから、その辺の許可ももらわないとね。
お菓子はこの世界にもいろいろ種類があるんだけど、冷たいお菓子がないのよね。
アイスクリームやカキ氷。
これがないと、夏を過ごすのはきついのだけど、こっちには四季がないのよ。暑い国は暑いものを食べて過ごしてるんだって。まだ行ったことはないけれど。
「リウ。久しぶりね」
「お嬢様、お久しぶりです」
「今日は新作のアイスクリームがあるのですって? わたくしも以前メイドが購入したものを、少しだけいただいたのですけれど、とても冷たくて美味しかったのを覚えていますわ」
「ありがとうございます」
「で、新作はなに味なのかしら」
「チョコチップと、メロン味です。それから、アイスクリームをもっと美味しく食べられる方法を、シェフに教えてもかまいませんか?」
「もちろんかまいませんわ。楽しみに待っていますわね」
コレット嬢からの快諾を得て、私はさっそくシェフのいる台所へとメイドさんに連れていってもらうことに。
あ、でもその前に渡しておかないとね。
「あと、これはダーランドへ行商へ行った時のお土産です。私が作ったのもありますので、よろしければ使っていただけると嬉しいです」
「まあ。嬉しいわ。ありがとう、リウ」
そうして私は台所で、パフェとクレープの作り方を教えて、完成品をコレット嬢に食べてもらうことに。
まず、パフェを作るのだけど、ガラスの器にプレーニョーグルトをいれて、その上にストロベリーアイスクリームを丸く乗せる。そして、生クリームをぐるぐる置いたら、苺を可愛く、美味しく見れるようにデコレーション。粉砂糖をまぶして、最後にミントの葉を乗せたら完成。
そして次はクレープ。生地を薄くのばして包める大きさになったものを、何枚も焼いておく。そして生地が冷めたら、生クリームとチョコレートアイスクリームを乗せ、アーモンドスライスをかけて、チョコソースをかけて出来上がり。紙でくるくる巻いてるのを、そのまま食べるのはきっと抵抗があるだろうから、お皿に乗せて食べれるようにした。
これらは絶対美味しいって言ってもらえるはず。
「これがフルーツパフェとクレープというお菓子なのね。まあ、冷たくてとても美味しいわ。あなたこれは自分で考えたのかしら」
「夢でなんとなく作った記憶があったので、試したら美味しかったのですよ」
さすがに自分で考えたといえず、夢のお告げ的ななにかってことにした。
新作のアイスクリームはそのままでだした。他のパフェも作りたかったけど、それはシェフに教えただけに。
いくらなんでも冷たいものばかりたくさん用意したら、お腹を壊してしまうものね。
甘いものは別腹とはよく言うけれど、私とコレット嬢にメイドさんたちまで巻き込んで、大試食会になった食堂。
皆でお菓子を堪能し、満足しているともう夕方に。
そろそろ帰る時間ね。
私は籠に入れてきた、残ったアイスクリームをコレット嬢にあげることにした。もしよかったら、お茶会で食べて下さいって。それで売上が上がるなら問題なし。
「リウ。とても美味しかったわ。今度、お茶会でぜひこのお菓子のことを、話してみるわ。きっと皆様方、こぞって買い求めに行くと思いますわ」
「ありがとうございます。とても楽しかったです」
女の子同士でこうやって、甘いものを食べるのは本当楽しい。また今度、機会があればやろうということでお開きになった。
そして一週間後。
「まあ、ここがコレット様のおっしゃっていた店ですのね」
「あちらを見てくださいな、皆さん。あそこにいる方の麗しいこと。なんて美しいかたなのかしら」
「こちらのかたも、お綺麗ですわ」
「まあ本当」
開店と同時になだれ込むようにして店に入ってきたのは、なんと貴族のお嬢様方。煌びやかなドレスを身に纏い、羽扇で優雅に扇ぎながら店の商品を見ている。
私は最初何事かと思ったけれど、見当がついたのですぐににこやかな笑みを張り付ける。これはきっとコレット嬢のお茶会のおかげなんだと思う。
お嬢様方は、ついてきたメイドに欲しい物を、買い物籠に入れて持たせて目をキラキラさせて買い物を楽しんでいる。
「あら、あなたね。コレット様がお話されていた方とは」
「冷たいお菓子を作れるのだとか」
「とても美味しいのですってよ」
「わたしくたちも、是非食べてみたいわ」
カウンターごしにどばっと私のところへやってきたお嬢様方に、私は笑みを深める。
「コレットお嬢様とお茶会をご一緒されているというお嬢様方ですね。私の作ったものは、コレットお嬢様のシェフに作り方をお教え致しました。今では私が作るよりも美味しく作ることができるそうですよ」
「まあ。では、そのコレット様のシェフに作っていただきましょ。うちのシェフにも是非覚えてもらいたいわ」
「わたくしもですわ。ここにある、アイスクリームの缶詰を買占めなくては」
「お待ちになって。わたくしの分もとっておいてくださいまし」
「五種類全ていりますわよ。さ、籠に入れてくださいな」
うーん。なんともパワフルなお嬢様方ね。うちの店頭分がもうないわ。倉庫から在庫を足さないとね。
とりあえず、コレット嬢のシェフに丸投げしておこう。
「リウ。なんというか、嵐のような日だったな」
「うん。なんだか生気を吸い取られたような気分よ」
そうして私が足した在庫も、綺麗さっぱり買われていったお嬢様方は、数日後、コレット嬢の邸でお茶会を開いて、その時に、パフェとクレープを好きなだけ堪能していったそうよ。




