表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/60

依頼を請ける 上

 アルビーと一緒に暮らし始めて一ヶ月。

 すっかりここでの生活に慣れたアルビーは、進んで店を手伝ってくれるようになった。いい子だわあ。相変わらず尊大だけどね。でも、生き生きとしてるからいっか。可愛いし。

 そういえば、アルビーにも私たちとお揃いの指輪をあげたら嬉しそうにしてた。ちなみにメインの宝石はブラックパール。闇魔法が得意だからね。

 で。

 思い出したことが一つあったのよ。

 ギルドに一応所属してるけど、実は依頼を請けたことがないのよね。

 だから、今更だけどやってみようと、今日は五人で冒険者ギルドへ行くことに。

 私のギルドカードは一〇〇年前のだから、怪しまれないように新規で作ることにした。ルーたち四人も新規で。五人でのパーティ申請もしたし、準備は万端ね。

 ギルド員のお姉さんから軽く説明を聞いたあと、さっそく依頼掲示板を見にいくと気になるものが。


「ウェルスナー子爵が依頼人?」


 それってコレット嬢の父君よね。

 依頼内容は……。


「護衛依頼? 目的地は王都か」


 そういえば、王都にはまだ一度も行ったことがないのよね。

 行商しながら王都行くのもいいわよねえ。いろんな街や村を回りつつさ。

 と、それはまた今度にして。

 護衛依頼か。えっと、なになに。護衛者の選考が明日あるのね。どうしよう、コレット嬢とは面識あるし行ってみようかな。とくに条件があるわけでもないから、私たちでも大丈夫だと思うし。

 依頼を請けてこなしていくと、個人のギルドポイントが加算されていって、一定数貯まるとギルドランクが上がる仕組みなんだけど、何ランクでないと請けれないとかの条件はないのよ。

 だから、今日ギルドカードを作った初心者でも、難易度の高い依頼を請けることはできるの。

 だだ、依頼を達成できないと、ペナルティがあるから、自分の身の丈に合った依頼を請けないと、ペナルティ一〇回目でギルドカードを剥奪されちゃうのよね。

 そういったことも自分で考えてやらないといけないから、冒険者たちは以外としっかりしてる人が多い。


「リウ、なにかいいのはあったのか」

「ルー。いいのというか、気になる依頼ならあったわよ。これ、護衛依頼。香水のオーダーしてくれたコレット嬢を王都まで護衛するやつなんだけど、どう思う?」

「そうだな。私兵を使わないのが気になるな。まあ、子爵だから私兵も少ないのかもしれんが」

「ああ、私兵かあ。言われてみればそうよね」

「だが、気になるなら請けてみてもいいんじゃないか。選考があるからそこで落とされるかもしれないが」

「ま、私たちは今日登録したばかりだからねえ。ルーはなにかよさそうなの見つけた?」

「いや。簡単なものばかりだな。ポラリスが国の外れにあるからだと思うが」

「そっかあ。皆はどうかな」


 アラリスたちに聞いてみると、やっぱりルーと同じ答えが返ってきた。

 ポラリスはオーガイル国の東にあって、それよりも東は海、北は山脈、南は深い森だから、けっこう平和なのよね。魔物もそんなに強くないし。マカロス伯爵の手腕がいいってのもあるけれど。

 だから、これが西側だったら大陸の中央に位置するわけだから、もっと大きな依頼があったりするんだろうけど。


「じゃあ、この依頼、請けるだけしてみようか。明日は店もないし、皆で子爵邸へ行こう」


 翌日。

 私はウェルスナー子爵邸へと向かった。行ってみると、すぐに応接間へ通される。そこにはすでに数名の冒険者がいて面接は終わったらしく、応接間を出て行った。

 選考するための面接予約は私たちが最後だったらしく、そのままウェルスナー子爵との面接が始まる。

 しっかりアピールしていかないとね。


「おお、君が娘の香水を作ってくれた職人か。しかし、職人の君が護衛とは。守られる側ならわかるがね」

「私は素材は極力自分で入手していますから。ホコラの洞窟も九九階までは行きましたし」

「なるほど。君は徹底しているんだね。うん、職人というのはそういう者たちが多いのも事実だ」


 ウェルスナー子爵はうんうんと納得顔で頷いてる。

 すると、応接間の扉をコンコン叩く音がした。


「お父様。よろしいかしら」

「なんだい。今はお前の護衛者を選考するために、冒険者の皆さんに来ていただいているところだ。話は後で聞くから、部屋に戻りなさい」

「それでは駄目なのですわ」


 カチャと扉を開いて、コレット嬢が入室してくる。

 三ヶ月合わなかっただけなのに、少し大人びてきているようね。女の子は成長が早いから。


「こら、コレット」


 ウェルスナー子爵がコレット嬢を窘める。

 だけど、コレット嬢は、つかつかと私のところへ来て、私の肩に手を置いた。


「聞いてくださいませ。わたくし、王都へはこの者たちと向かいますわ。リウとは面識がありますし、同じ女性同士ですもの。他の面接しに来た方々には女性はおられませんでしたわ」

「うむ。そうだな」

「ですから、面識もあり、女性がいるパーティが一番よろしいかと思いますの。それに、デビュタントへ向けて、新しい香水の話も道中しておきたいのですわ」


 デビュタントか。じゃあ、コレット嬢は十六才になるのね。

 社交界にデビューするために、香水も一新したいのか。なるほど。ということは、プリンセスローズの香水はあと三ヶ月で半年だから、届けないとと思ったけど、どうするのかしら。


「ふむ。お前の言う意見ももっとだな。どうしたものか」

「悩む必要はありませんわ。わたくしがよいと言っているのですもの。お父様、わたくしのお願い、きいてくださりますわよね」


 うーん。コレット嬢強い。そのまま私たちのパーティをプッシュしてほしいわね。

 父君は腕組みをして悩んでいる。あと一押しかな。


「ウェルスナー子爵、私もお嬢様と香水についてのお話をさせていただきたいです。社交界にデビューされるのでしたら、最高の香水をおつけしていただきたいですし」

「ふむ。そうだな。わかった。では、護衛は君たちのパーティに任せよう。くれぐれもよろしく頼むよ」

「ありがとうございます。お嬢様を王都へ、無事に送り届けます」


 よかった。私たちに決まったわね。

 ポラリスから王都へは西に約二,〇〇〇キロメートルはあるから、馬車だと約十四日くらいかな。

 荷物は異空間を使いたいけれど、今回はコレット嬢がいるから、出し入れは注意しないといけないわね。大きめのものは持ち運ばないと駄目かな。


「準備はこのくらいでいいかしら」

「そうだな。細かなものは、俺の異空間バッグとリウの異空間魔法で大丈夫だと思う」

「リウの準備したテントや毛布、着替えに食物などは、馬車に積んでおけばいいか」

「そうね。あとは背嚢を二つくらいでいいかしら。あまり持ち物が少ないのもあれだしね」


 子爵邸から家に帰った私たちは、旅の準備をする。

 出発は明後日。

 そうだ。香水の話をしないといけないから、馬車の中で調合するのに、エッセンシャルオイルもいくつか持っていったほうがいいわね。さっそく準備。

 さて、明後日から頑張っていこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ