ホコラの洞窟
ルブルが家に来てから一ヵ月が経過した。
今ではもうすっかり人としての生活に慣れて、私の仕事の手伝いまでしてくれるようになったのよ。すごいわよね。
「で、今回はダンジョンに潜るのだな」
「うん。そろそろ牙や角に骨ものの素材が尽きそうだしね。薬の素材になるものを集めたいの。あとは鉱石も欲しいかな。錬金で使いたいし」
「なら皆で行くか。一〇〇年前は地下三〇階までしか行かなかったからな」
「いいね。僕も行く。ダンジョンなんて久々だから、お弁当も持っていかないとね!」
「遊びに行くわけじゃって、いや。まあ、遊び、かなあ。でもお弁当は賛成」
ホコラの洞窟は、今じゃ地下七五階まで到達しているみたい。私が一〇〇年眠っている間に随分攻略されたみたいね。
時々はルーも潜ってたみたいだけどね。私の代わりに雑貨屋さんに商品卸しもしてくれてたし。
さてさて、久しぶりにホコラの洞窟に行くけど、どんな感じになっているのかしら。というか、七五階でもまだって、いったい何階まであるのかしらね。
うーん、早くホコラの洞窟に行って、お弁当食べたーい。今日はアラリが料理当番なのよね。お弁当期待してるからね!
「へえ。一〇階ごとにギルド員が派遣されてるなんて、すごいわね。これなら安心して潜れるんじゃないかしら」
「セーフティエリア内は結界石で守られてるからな。仮眠室なんてのもあるんだぞ。それにこの記憶石を使えば、移動陣で以前行った階に近い、一〇刻みの階に行けるようになる」
「へええ。僕の知らぬ間にダンジョンもすごい快適になったんだねえ」
「ふむ。人とは面白いことを考えるものだな。我はダンジョンは初めてだからな。楽しみである」
一〇〇年の間にすごい快適になってるのね。驚いたわ。なら、ルーの持つ記憶石で行ける階まで省略しちゃいましょ。
私たちはさっそく移動陣の許可を貰って、ルー単独で行った七〇階まで一気に行くことにした。というか、七五階まで行ったのって、ルーだったのか。
「魔物は一〇階刻みで変わるぞ」
「その辺も変わってるのね。いろいろ変わり過ぎて、なんだかもう知らないダンジョンみたいだわ」
「だけどそのほうが、新鮮で楽しいよね」
「なるほどな。そういったことも楽しみのひとつになるということか、ふむ」
七〇階からは、レヴァナント、ファントム、リッチが出現するようになるみたい。出現する魔物はアンデッド系が多いってのは変わらないみたいね。
レヴァナントはダンジョンで亡くなった冒険者の成れの果てなんだけど、自分を殺した魔物に復讐をしたいみたいで、こちらから手を出さない限りは攻撃してこないそうよ。
だけど、レヴァナント対魔物で戦っていることが多いから、巻き込み事故で結局は倒すはめになるという、ね。
ファントムは人や精霊の強い怨念からできた魔物で、こいつらは状態異常攻撃が得意みたい。あとは、生きてるものに憑依して、仲間同士で戦わせようとするとかかな。
リッチも冒険者の成れの果てなんだけど、より強い者が魔物になった感じ。
「聖水もこの辺りの魔物になると、効き目がいまいちなのね」
「ああ。だが銀系のものは良く効く。俺もこいつらと戦うときは、鍛冶屋に頼んで作ってもらったシルバーブレイドでやってるな。もちろん光属性は変わらず効果絶大だが」
「ほお。うまく弱点を突いて戦うわけだな」
「なら僕は光魔法専門でいくよ」
そもそも、この四人で行くってことがまず魔物たちが可哀想よね。負ける気がしないもの。現れたら速攻でばったばったと切り伏せていくもんだから、時々、生前の記憶が色濃く残っている魔物は逃げていくのよ。
神様二、精霊一、神竜一の組み合わせは凶悪だわね。
「拍子抜けね。もっと強い魔物がいるんだと思ってたけど。まあ、素材がすぐにたくさん集まるからいっかな」
「魔物の落としたもので薬が作れるとは、不思議なものだな」
「そうね。その辺は私もよくわからないけど、どうなの?」
「うーん。僕はその辺はあまり覚えてないかな。なにせ何億年も昔のことだからね」
「え、その頃から魔物っていたの」
「そうだよ。人や動物、植物と同じで、魔物も独自の進化を辿ってきてるからね。まあ、アンデッドは死体の生前の強さによるけれど」
「ならこれ以上の強さの魔物はほぼ出ないとみていいか。大規模ダンジョンになって一〇〇年は経つが、それほど多くの冒険者は死んではいないからな」
そっか。アンデッドは現地の冒険者の強さによる、か。へええ、なるほど。
「ところで、もう八〇階だけど、まだ続いてそうな感じね。一〇〇階くらいまであるのかしら」
「さあな。行ってみればわかるさ」
結局、その後一〇階刻みで魔物が変わるはずだったけど、七〇階からと変わらず、しかも微妙な九〇階が最下層だった。
でも、なんだか怪しいわよね。これ、どこかに隠し通路でもあって、一〇〇階までいけそうな気がするのよね。なんていうか、神様の勘? みたいなものかな。
「入手できたのは、霊石と古い武具に、鉱石少々か。あんまり美味しくなかったわね」
「そうだな。これなら鉱山で採掘していたほうがマシだったか?」
「まあ、霊石は初めて入手したし、けっこうな量集まったから、あとで錬金術で遊んでみるわ」
「僕の感想としては、獣系の魔物も入れたほうがいいかな。上階なら弱いのでいるけれど。そろそろ魔物の見直しもしたほうがいいか、うーん。まあ、二種類くらい試にいれてみて、繁殖できるならさせておこう」
「大規模ダンジョンでも分布している魔物によって、大分難易度が変わるものなのだな。勉強になったぞ」
短時間で最下層に着いた私たち。結局お弁当は家に帰ってからだった。でも、ピクニック気分を味わいたかったし、庭にテーブルだして食べることに。
うん。アラリスの料理の腕も相当上がってるわね。ルーもすごいし。最近はルブルのも美味しくなってきたし、このままじゃ、私が一番下手かもしれない。ぐぬ。
でも、お菓子の腕はけっこう上だから、いっか。とにかく、美味しく皆で楽しく食べれればそれでいいのよね。
それにしても、アラリスの感想で思ったけど、神様って、魔物の種類とかそういうことも見ないとなのね。けっこう細やかな仕事なのかな。
私はまだまだね。精進しなくちゃ。
それと今度は他のダンジョンにも皆で行ってみたいわね。あと、冒険者ギルドで依頼を請けたことなかったから、そういうのもやってみたいかな。
一〇〇年経ってようやく起きたんだもの。私にとってはまだまだ世界は広いのよね。他の大陸にも一度も行ったことないし。
旅の商人って感じで世界中を巡ってみるのもいいかも。知らない素材もたくさんあるだろうし、錬金術師としても興味があるわ。
やりたいことがたくさんすぎるけど、ま、時間は無限だし、ゆっくりいきましょうか。




