opening
「みなさん。新しくこのクラスに入ることになった、トア・スぺクロウ君です。仲良くしてあげてくださいね」
と先生は言った。
6月のある日の朝。オレは新しい学校の教室で自己紹介をしていた。
「トア・スぺクロウです。好きなことは……機械とかをいじったりすることです。よろしくお願いします」
と言ってから、オレは先生に指示された席に座った。
ここは、ユーラシア大陸の西の方にある小さな国だ。たくさんの移民が集まった国だ。この国の公用語は英語だが、以前住んでいた地域は中国語を使っている人が多かったと、地域によっていろいろな特徴がある国だ。ちなみにここは首都だからたぶん英語が主流だろう。
この国は、あることを除いて普通だと思う。
あることというのは、「スキル」というものが存在すること。「スキル」というのは超能力にも魔術にも似たもので、例えば、テレポートとか、炎を出すとか。それがあるおかげか、この国では独自の科学技術が発達していた。
特にこの町は科学技術が発達していた。教室のホワイトボードだって、ここはデジタル化しているし。きっと、オレの知らない技術もあるんだろうなぁ……。
「トア・スぺクロウ君、で、あっているかな?」
前の席の眼鏡をかけた男子に話しかけられた。
「僕は火鈴 蒼斗。ソウトって呼んで。僕はホームルームリーダーだから、何か困ったことがあったら聞いて」
「よろしく。オレはトア、でいいよ」
ふと、横から鋭い視線を感じた。
隣の席にいる、男子にしては少し長い黒髪の少年。彼がオレを――――正確に言うとオレの両腕を見ていた。腕を覆う金属製のアームカバーを。
そして彼はぼそっと日本語でこう言った。
「物騒なもん、身につけてんだな」
言われた瞬間、オレはびくっとした。
「レイ」
ソウトが少年を、レイを「そういうことを言うな。」という目で見る。たぶん、オレが今の言葉を聞いて傷ついた、とでも思ったのだろう。
「ごめん」
と、レイは謝った。
「気にしなくていいよ。ちょっと腕をけがして、『スキル補助装置』をつけているだけだから」
『スキル補助装置』とは、スキルを使うときなどに使う補助用の機械のことだ。
「ところで、ソウトもレイも日本生まれなの?」
「僕は、そうだよ」
ソウトは答えてくれたが、レイは答えてくれなかった。