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お酒はほどほどに

ククリという町はここシルスティアにおいてどこの領主にも属さない土地だ。よって各地方から様々な人達が多くあつまるちょっとした交易都市のようになっている。治安は町の税金で雇われた騎士が十名ほどいるが、そもそも争いが起こらないため実力行使になったりすることはない。

罰金はあっても罪に問う事もできないという中途半端なところもある。


シルスティアは土地も豊かなため、各地でシルクの生産が盛んだ。


という事は、この町でのオススメもシルクが当たり前になっているというわけである。当然これから買わされるであろう衣類もシルクになる可能性が非常に高い。




「カルアさん、この服綺麗ですね。向こう側が透けて見えますよ」


「いいじゃないか。これを着て夜の酒場に繰り出せば、良い男がたくさん釣れるかもしれないぞ」


どんなに誇り高いといってもこういう場面でボロが出そうになっている。

でもカルアの言っていることにも一理ある。

酒場で情報収集するなら、あの踊り子が着るような衣装はもってこいかもしれない。むしろオレの目の包容になるかもしれん。でもティアのあられもない姿を見せびらかすのも嫌だ。


「うーん 困ったものだ。けしからん衣装でけしからん事になったらどうすればいい。うーん」


「お前の亭主はいちいち唸ってうるさいな。買ってやるといったのはあいつなのに」


「宗一様は優しいんです。私やカルアさんがああいった服を着るのは見たいけど、酒場にはいってほしくないというところで困っているんだと思います」


とりあえずあの服はオレのために買っておこう。この間買ったランジェリーと組み合わせれば最強になるに違いない。

オレは脳内でリアルな再現を開始した。


「どうしたんですか?お嬢さんたち」


突然現れたのは凛々しい髭をたくわえた紳士風のおじさんだった。


「あ、うるさくして申し訳ありません。いまどの服が良いか悩んでいるところなんです」


なんとなくだが、今にもティアとカルアをナンパして屋敷に連れて帰りそうな雰囲気が嫌らしい。オレはこういった種類の人間はあまり好きではない。


「お好きな服は全部買ってもらいなさいな。夜にも使えるようなものであればご主人もきっと喜びますよ」


エロ爺め。エロ鳥の次はエロ爺かよ。

この世界には敵がたくさんいるようだ。危険が大きくなるようなら退治せねば!


「それじゃあ聞くだけ聞いてみます。紳士なおじ様、ありがとうございます」


カルアは終始構わず自分の欲しい服を物色していた。

ちょっとはティアを見習って欲しいもんだ。


「宗一様、欲しい服がたくさんあるんですが全部買っていただいてもいいですか?」


ティアもドストレートで聞いてくるあたり、オレが簡単になびくと思ったのか。とりあえず手にもっている服を一着一着見ていく事にした。


「わかった全部いいぞ」


持っている服はそのほとんどがアレの時に着ていたら最高なものばかりだった。当然踊り子っぽい衣装も中に入っていた。

今夜はおしおきするしかあるかい。力の限り!


「そういえば宗一、私が付けていた装備は痛みが進んでいてこれから長く使えそうにない。こんな私だが、装備も一式用意して頂けないだろうか。もちろんタダでとは言わない。高額になるのは分かっているし、こんな身体でよければ使ってくれて構わない。どうだろうか」


オレとして全然ありなんだが、ティアもいるしハーレムってのは厳しい。欲求はあっても裏切ってまで欲しいとは思わない。


「ぜぜぜ絶対ダメです!宗一様は私だけで満足なんですから!装備は私ががんばってお相手するので、タダで出して頂けませんか?お願いします」


まぁ何か言う前にこうなるのはわかってたけどさ。


「カルアの装備はオレの方で面倒みるよ。だから身体は本当に大事な相手が見つかった時にとっとけ。簡単に誰かに渡すようなことは絶対にするなよ」


ありあまった体力はティアにぶつけるとして、衣類はこれで大丈夫なはずだ。数十着の購入で共通金貨四枚と銀貨三枚が消し飛んだ。

防具はこれの何倍もかかると思うと、なかなかバカにできない出費だ。

さっきのカルアの言っていたことも、男としては嬉しいが、気に留めておくべきだろう。

もし孤独がそうしているなら、関わってしまった以上守らなければいけない。人間として。




宿に帰ってから軽いファッションショーになってしまった。

あれだけ買えば実際に着てみたくもなるのは分かる。でもこれじゃオレの理性が消し飛ぶ。


「宗一様も見ていらっしゃった踊り子の衣装です。下着みたいな服の上に薄いシルクの布を纏うのが正式な着こなし方みたいです。似合いますか?」


「宗一私の見てくれないか?胸の辺りが少しキツイがしっかり着れているだろう。似合うか?」


二人ともオレが限界を迎えるまで続けるつもりか。

ティアの白い肌に淡い色のシルク。カルアの褐色肌にも淡いシルク。

こんなもん耐えられるはずがない。男ならば!


「とりあえず少し休まないか?帰ってきてすぐだからオレも少し疲れたよ」


本音は別にあるが正直には言えない。

ここは黙ってオレの言うとおりに動いてくれ二人とも!


「たしかにそうですね~。カルアさんも部屋で少し休んでいて下さい。夕ご飯の時間になったら私からお誘いにいきますので」


「そうだな、それじゃあ私も少し休むとするよ。時間になったらお迎えよろしくな」


よし、これで準備は整った。


扉の閉まる音がカチャンと聞こえた。

オレはティアに抱きついてキスをする。


「オレそろそろ我慢できないかも。ダメかな?」


「そうだろと思ってました。この衣装のまま下さい」


この後飯の時間まで何回も何回もたっぷり楽しんだ。

当たらしい衣装の効果もあって動きにキレが出てきたような気がする。

さすが踊り子、支援効果でまくりだ。




「そろそろ夕飯だな。カルアを呼んでくるよ、ティアは服とか髪とか整えて待っててくれ。すぐもどる」


「はーい」


カルアの部屋はすぐ隣だ。

自分の部屋をでて左側にある。


「飯だぞー 勝手にあけるぞー」


おいおいおいおい。

このダークエルフさん壁に耳あててますよ。

盗み聞きですか、いやらしい!


「おいカルア、普通に休むって事ができないのか?」


「へっ!? あ!」


「あ じゃねーよ!もしかして聞いてた?」


口に出すことなくただ頷いている。


「仕方なかろう、私とて身体が火照る時があるのだ。さっきのショーで宗一がいやらしい目で見るからこんなになってしまったのだ」


フラフラと近づき顔が近くなったと思うと、激しくキスされる。

抱きつかれた状態で、離れるのに時間がかかってしまった。ほんの十秒くらいだと思う、完全にディープキスです。


「宗一が悪いのだ。とりあえず今日はこれで許してやるから、もう忘れてくれ」


なんでオレが怒られてるか分からないが、とりあえず事は済んだようだ。


「夕飯の注文行くからまともな服に着替えて宿屋のロビーに来い」


オレはカルアの部屋を後にした。


まさかあんな事急にされるなんて思わなかった。

ティアにはなんて言おう。

裏切ったわけじゃないけど、どうすりゃいいんだ。




ロビーに集まった三人でそれぞれ食べたいものを選んだ。

料理が来るまではオレ部屋に集まって三十分ほどの時間を待つだけだ。

さっきあんな事があったのに、カルアは平気な顔をしている。

どの顔が本当の姿なのかまるで分からない。


私厠かわやに行って来る」


ティアにさっきの事を説明するチャンスがきた。また聞き耳を立てられても困る。通信スキルで話そう。


『ティアに話したいことがあるんだ』


『なんでしょう?そんなにあらたまって』


『実はさっきカルアを呼びに言った時、扉をあけたらアイツフラフラしてて、キスされた』


『!?』


『いや故意にはしてないんだ。隠すこともできたけど、ティアには隠したくないからちゃんと打ち明けてみたんだけど、すまない・・・』


「はぁ」


静まり返った部屋でのため息は、とても大きく聞こえた。


『宗一様は悪くないですし、カルアさんの精神状態も考慮すれば仕方の無いことかもしれません。でも許せるものでもありません』


なんか、終わったと思った。

幸せってこうやって崩れるんだなと痛感した。


『でも正直に話してくれたので、罰ゲームで許してあげます』


『怖いな。何したらいいの?』


『この後酒場に行く予定でしたよね?』


『そうだけど・・・』


『帰ってきたらまた私ことを愛してください。朝まで』


なんちゅー嬉しいことを!

でも人類全ての男を敵に回すかもしれない罰ゲームだ。


『もし朝までに寝てしまったら、しばらく夜はおあずけです。いいですね?』


完全に夜の行為は掌握されてしまった。

グーの音も出ないとはこのことか。


『分かった。もし途中でティアが寝てしまったらどうなるんだ?』


『それはこれから考えます!宗一様はさっきの行為でだいぶ体力を使ったはず、朝まで持つでしょうか』


策士ティアここに誕生する。

オレは負けるかもしれん。

でも男としてここで倒れたら日本男児じゃない!


ガチャン


「ただいまー なんで二人とも顔がそんなに険しいんだ?もうすぐ夕飯も来るだろうし、まったりしようよ」


バサバサバサ


「今度はなんだ」


窓にはソールの姿があった。窓縁から動くことは無いが、もしや・・・


「ソールは夕食が食べたいそうだ。俺の分も適当に何か用意してくれると嬉しいといっているぞ」


「ソールちゃんは甘えん坊ですねー どこかの誰かさんみたいになっちゃダメすよー」


ティアの言葉は戦神の一撃よりも重かった。




宿屋の夕飯は思ったよりも旨かった。

でもオレのことを考えた愛情たっぷりのティアお手製のほうが好きだったりする。


「そろそろ酒場に行くとするか」


「どうして酒場にいくのに夕ご飯食べてからなんですか?」


不思議そうな顔してティアが問う。


「何も腹に入れないで酒なんか飲んでみろ、あっというまに泥酔だ」


女性人二人は分からないが、オレは酒に弱い。悪酔いしてなにかしでかしたら大変だ。酒は飲まないつもりだが、予防線を張っておくにこしたことはない。


「宗一様、もし酔って倒れたり寝てしまったら・・・ お分かりですよね?」

顔が怖過ぎる、魔王クラスの微笑だ。

でも逆に考えてみるんだ。そこまで釘を刺すということは、朝までしたいということだ。

貪欲かつ底なしかよ・・・。


「絶対ない。ありえない。戻ったらまたおしおきだ」


「私はたくさん飲んじゃう予定だから気にしないでね~」


人の金だと思ってカルアは羽を伸ばしまくるつもりだ。

酒で寂しさを埋めるのだろうか、二人とも女の子だ。何かないように目をくばらなければなるまい。




ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ


酒場はとても賑わっていた。

ビールのようなジョッキ片手にダンスを踊ったり机に土足であがったり。

酷い有様だが、これも平和の証か。


「お、この辺じゃ見ない顔だね。どこからきたんだい?」


話しかけてきたのはこの店の店長だ。

頭はスキンヘッド、目は切れ長で背は高い。こんなのあっちの世界で見たら怖くて近づけないだろう。


「今日ククリについたばかりなんだ。しばらくこの町で世話になるからよろしく頼むよ」


店長はガハハハハと笑うとジョッキ三つを出してきた。


「美人二人をつれてきた礼だー 俺からの驕りだ。飲んでってくれや」


見せびらかしに来たわけではないが、一応社交の場だ。ありがたく頂くことにする。

ティアとカルアは一気にジョッキの半分まで飲み干した。

すると店内の客が二人に拍手喝采を浴びせた。


「二人とも良い飲みっぷりだよ。俺もおごるからどんどん飲んでくれよ」

「俺も金だすぞ。楽しんでってくれや」


ここでオレのサイフが開くことはないようだ。


「店長、この辺で情報を売ってくれるやつとかいないか?できれば広い範囲の多種多様な情報が欲しいんだが」


さっきまで笑顔だった店長の顔が急にまじめになった。


「にいちゃんいいやつ紹介してやるよ。ククリの町はいろいろあってな、地下にトンネルが掘ってある。そのトンネルの脇に扉があるからそこに行ってみな。料金は高いが良い情報を売ってくれるぜ」


いろいろってのが気になるが、明日にでも行ってみるか。話しはそれからだ。

にしてもまだ潰れないで飲んでやがる。

店長にかるく目配せして助け舟を出してもらう。


「おいおい、そろそろやめときな。大事な彼氏に酷い姿見せることになっちまうぞ。みんなももうおごるなよ、ちゃんとオレにツケ払ってからにしとけ」

店内はブーブーとブーイングの嵐だが仕方ない。

「ありがと店長」


「お安い御用だ」


ティアとカルアを外に連れ出した。

二人ともまだ大丈夫だの言っているが、ティアはともかくカルアは呂律ろれつがまわっていない。

酒豪で魔王なティアさんは大丈夫にしても、カルアは部屋で寝かせれば翌朝までぐっすりだろう。


「ティア歩けるか、部屋戻るぞ。カルアもしっかりしろ」


カルアを担いで部屋まで送った。

部屋に戻ると少しだけ酔いが醒めたティアがベッドに腰掛けていた。


「宗一様はお酒をほとんど飲まなかったです。ズルイです」


オレもティアの隣に腰掛けた。


「これから楽しみだったからさ、これも作戦の内だよ」


「あ~んも~ せっかくしばらくお預けして、宗一様から襲われたかったのにー!」


このこは何をいっているんでしょうか。

これもお酒の力なんでしょうか。

お兄さん分からないです。


「それじゃあご注文通りに」




夜が更けていく中で、朝の鳥の鳴き声が聞こえるまでたくさん可愛がった。


酒が入ったティアは凄かった。いつもはオレが攻めなのに、今回は完全にティアが攻めだった。

悪くないけど、オレの体力が持たない。

今夜は無しでもいいや・・・


結果として、勝負に勝って試合にも勝った。


ティアが起きたら勝利宣言と共に、オレからのお願いを何か聞いてもらおう。

毎回読んでくれてありがとうございます。


今回は酒乱になった女性陣を登場させたかったので、文字数もいつもより少しだけ多いです。

買い物途中ででてきた紳士もこれからまた登場させる予定です。


割と重要な役どころしたいなーと思ってます。



それではまた次回!

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