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予兆

鎧というのは国や地域で様々な形が存在する。

オレが愛用しているのはダークチタン系のスケイルアーマー。スケイルアーマーというのは小判状の金属を布などに縫い合わせて作成する。プレートアーマーと違うところは一番に重量だろう。

重い装備での戦闘は、長期戦になった場合不利になる。

スケイルアーマーはその点プレートアーマーよりも軽量なため、継続戦闘が可能である。ただし、小判状の板が音を発してしまうため、隠密性には欠ける。

それぞれ一長一短あるというわけだ。


この世界はゲームの時代から自由度が相当に高かった。

それは当然鎧にも影響を及ぼした。

プレイヤーは細かくエディットした装備を、好きな素材から作成することができた。

これは過去のRPGからみても例をみないほどの盛り上がりを見せた。

自称デザイナーを名乗る者もいれば、素材採取に精を出す者もいたわけだ。


プレートアーマーとスケイルアーマーの中間に位置する装備が出始めたのは、正式サービス開始後それほど時間を要しなかった。

名前上スケイルの名はついているが、機能性・運動性、どれをみても最高の形状が生まれたのだ。

小判の縫い合わせではなく、一枚板の板金から切り出したパーツに、形状加工を加えた鎧だった。

運動時の音も重量でさえもクリアしたデザインは、これまでの鎧からは逸脱していた。

物には強度や必要素材を形状で削減できるメリットがある、鎧においても例外ではない。

新デザインの鎧に正式名称は無い。なぜならプレイヤーの興味がそこには向かなかったから、というのが正解だろう。

そのため俺の鎧もスケイルアーマーと呼んでいる。しかし説明するうえでの名称は必要だろう。

プレートとスケイルの半分・・・ということで、雑な感じもするがハーフスケイルとでも呼んでおこう。

オレのセンスの無さには定評がる。


ちなみにチタンという金属は、錆に強く軽量で硬い。さらに希少性が高く加工が難しい。

あまりの硬さに職人泣かせと言われるほどでもある。

当然俺の鎧も出来上がるまで相当な日数を要した。かかった金額も鎧数着分に及ぶ。

金額以上の性能は持っているので悔いはない。


これからはティアの装備も整えなければならない。今までは自宅待機してもらっていたが、ギルドの加勢が無い今貴重な戦力として考えるべきだろう。

この世界の最大パーティ人数は五人。最低でもあと三人は欲しい。

できれば全員美人な女性がいいわけだが、とりあえず優秀な人が欲しい。

奴隷は鍛えるのに時間がかかり、傭兵は裏切りの可能性が高い。

暫くはメンバー探しでも苦労するだろう。

まだまだやることはたくさんある。頑張らねば。




「そういえばあとは何が必要なのかな?」

まだ買い物の途中だった。

女の子の買い物は戦いだ。もちろん時間も長期になる。


「そうですねー、香水とかはダメでしょうか?」

生活必需品はだいたい買い揃えたつもりだが、女の子は必需品だって男とは違う。

じっくり見て選んでほしいが、もぅ日が傾いてきた。帰りはジャンプで帰ろう。


「香水なんかつけなくたって、ティアからはいい匂いしかいないんだが・・・」

嘘でもなんでもない、これは本心だ。

本当にいいにおいがする。下手に香水などつけなくても問題無い。

むしろ使う方が問題ありだ。


「そんなことないです。お風呂の時に柑橘系の果実の皮ををお湯に浸けているくらいしか思い当たらないですし、なにより嗜みというやつです」

人差し指を立てて自慢げに説いている姿に、少しだけ幼さを感じる。

それもまたいいんだけどね。


「わかったわかった。どんなのでも好きなの買ってあげるから、早めに選んでくれるとうれしいよ。さすがにお腹も減ったしさ」

「それじゃ、あのお店で最後にしますね」

実に楽しそうだ。




香水は共通銀貨六枚だった。

この世界での価値で言えばとんでもない金額だ。

材料にもよるんだろうけど、手のひらサイズのビン一本の値段だけにオレも驚いてしまった。


「申し訳ありませんでした。あんなに高価なものだったなんて知らなくて」


あわてているティアにヒソヒソと耳打ちする。


「うぅ 分かりました。でも今日一日ですからね」


これから帰るのが楽しみだ。




自宅へはジャンプで帰った。

今回は庭に転送されたが、出来れば家の前が一番嬉しい。


帰ってからは裸にエプロンという姿で夕ご飯をつくってもらい、一緒に食べる。

お風呂でもいつも通り一緒の時間を過ごし、ベッドに入る頃には昼間のランジェリーが大活躍する。下着をゆっくり脱がし、二人抱き合いゆっくりと夜は更けていく。




『調停者よ、時間がないぞ』


声が聞こえるが、よく聞こえない。


『そう遠くない未来、お前のとなりにいるティアと言ったか。そいつの命と、世界を天秤にかける時が必ず訪れる。覚悟しておくのだ』


聞き覚えのある声だった気もする。

オレはきっと知っている。

この世界に来るのがオレじゃなければいけなかった理由。

知っているはずだ。




「宗一様、宗一様、大丈夫ですか?宗一様」

心配そうな顔で見つめるティアに起こされる。

「なんか変な夢を見たんだ」

寝起きだというのにすごくだるい。汗もたくさんかいてしまったようだ。

「なんだかうなされていました。お熱でもあるんでしょうか」

そっと近づき、おでこを当ててくる。

「大丈夫だと思う。ちょっとだけだるいけど、お風呂用意してもらっていいかな?こんな汗じゃ一日中不快だからさ」

「それじゃあお背中流しますね。お風呂出来るまで待っていてくださいね」

いつでも優しいティアがいなくなるなんてな。

絶対にそんなことはさせない。

それだけはオレが認めない。


今に思えばなぜオレなのか。

こちらにくる人数は多いほうがいいに決まっている。

それなのに何故自分ひとりなのか。

しっかり考える必要があることに、オレはこの夢でやっと気づいたのだ。

あの声は一体・・・。




それより何より、仲間の確保が求められる。

幸せな時間は本当に残り少ないかもしれない。

オレがもしもの時に、こいつを守れる仲間がいなくてはならない。


「朝からいろいろすまなかったな。でもお風呂入れてスッキリしたよ」

「いえいえ、なんか昔を思い出してしまってちょっとだけ嬉しかったです」

ティアを助けてから暫くは、全てオレが面倒をみてやっていた。

食事も風呂も全てだ。

「あの時は私も意識はあったんです。でも気力がなくて」

そっと頭を撫でる。

垂れた耳にはまだ水分が残っているが、触り心地は抜群だ。


「さっそくなんだけど、仲間を三人ほど集めたいんだ」

ティアの顔から血の気が無くなっていくのがわかる。

「私に飽きてしまって、さっそく浮気なんですか?浮気なんですね?」

あちゃー 唐突過ぎてしまったようだ。


「そんなんじゃないよ」

どさっ


ソファーに押し倒してみる。

両肩を掴んで優しく唇を重ねる。お互いの想いを確かめ合うように深く長く舌を絡ませる。

「それでも信じてくれない?」

「信じます」

もじもじしながらティアは答えてくれる。

「私は宗一様を信じてます。でも時々ふと思うんです、この時間が無くなってしまったら、私はどうしたらいいんだろうって」

「そんなのお互いが骨になるまで続くにきまってるさ。ティアとの子供ならたくさん欲しいしさ」

「はい」


服を整えて、話を再開する。


「仲間なんだけど、三人欲しいんだ」

「確かパーティは一組五名だったと思いますけど」

「うん、一人はティアだもん」

「わ 私ですか?」

「そうそう。だからあと三人なの」

「嬉しいです。戦闘は苦手ですけど、がんばります」

「その息だ。しっかり指導するからがんばってくれよ」

「もちろんです」


こんな会話を進め、俺たちはシルスティア内で仲間を探すことに決めた。

この家に帰りたくなったらスグ帰れる。


「それじゃあ必要な荷物は魔法の巾着に入れておくこと」

「了解であります。宗一様」

答え方の雰囲気が変わるとそれだけで可愛いと思う。

「大きな町や小さな町いろいろ回ると思うけど、消耗品は多めに持っていこうな。昨日買った下着も忘れちゃダメだぞー」

ニヤリと笑うと、ティアも微笑み返してくる。

「毎日でなくても、たくさん可愛がってくださいね」

この場で襲いたくなる衝動を抑える。

こいつめー 最近ツボを理解し始めたようだ。


持って行くものはいがいと多かった。

路銀に共通金貨百枚ずつ。オレとティアで二百枚。

装備メンテナンス用の砥石と油。

地図に簡易食料(干した食べ物たくさん、小麦粉に調味料もたくさん)

ポーション類たくさんに川でも汗を流せるように石鹸も。

簡単な食器に調理道具、簡易水筒。

そのほかにも色々と準備したが、本当に必要なのか分からないものまでティアは持って行くようだ。


「それじゃあ馬を買って、ちょっと遠いけどククリの町まで行ってみよう。あそこなら人もそこまで多くないし、最初に向かう町にしては丁度いいと思うんだ」

ティアには前回着用したホワイトチタンのプレートアーマーに、短剣を二本渡してある。この短剣は飛竜の小太刀といって、日本刀のような片刃の武器だ。一部飛竜【ワイバーン】の素材を使用しているため、見た目より軽くて使いやすい。もちろん切れ味はトップクラスだ。

ティアはこの二本を腰の後ろでクロスする形で帯刀した。

これならあまり長くもないし邪魔にならないだろう。


「宗一様とまた一緒に旅が出来て嬉しいです」

「それはオレもだよ」


ステイシアで軍用の馬ではない普通の馬を、一頭共通金貨五枚で購入。

二頭で金貨十枚だ。

「たしかティアも乗馬は上手かったよな?」

「はい、昔よく乗ってたので大丈夫です。宗一様より上手かもですよ?」

「ならいいんだ」

頼もしい限りだ。




俺たちはステイシアを後にした。


ククリの町までは約三日ほどだ。

とうとう主人公が不吉な夢をみるようになりました。

ティアもなにやら心当たりがあるようなないような。


仲間を求め、ククリの町に向かいます。


何事も無くたどり着ければいいんですがね。




自分の書いているものだけでなく、他の作者さんのお話も読むようにしました。表現の参考なります。

やはりたくさんの活字を読まないとダメですね。

それから、ティアの絵を描いていただける方とか居ましたら、メッセージいただけると嬉しいです。

まだまだ全然ですが、自分のお話に花を添えていただければと思っています。

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