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Kriegsfeld  作者: 板橋和志
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第4話 始動

四、

 連邦の首都、城都市。西方大陸のほぼ中心に位置し、2億4000万人の人口のうちの1500万人を占める。連邦の中枢機能はもちろんのこと多数の商業施設も擁し、たそがれのこの世界で随一の大都市となっている。

 その城都市中心部から北へ10キロほど離れたところに、連邦軍城都中央基地がある。中央陸軍や首都防空軍など多くの陸空軍の実戦部隊も配備されている。

 城都中央基地の南門から検問を通った黒い車が一台。車中に下士官の制服を着た運転士と高原悠介大佐、そして副官の小倉隆浩大尉が乗っていた。本来ならば佐官に副官は付かないが、高原は最上級先任大佐として破格の待遇を受けているのである。


「IJKの本部までもうすぐです。」


 副官の小倉大尉が口を開く。年齢は27で、海軍の艦載機パイロット出身である。統合士官学校も優秀な成績で卒業し、同期よりも昇進が早い。それは本人の優秀さによることは事実である。しかし、空軍幕僚総長小倉浩輔大将の子息であり、昇進にかかわっているとも言われている。ともあれ、類まれなる操縦技術、陸戦能力、事務処理能力を併せ持った万能型であることは疑うべくもない。


「ああわかっているさ。2年ぶり・・・だな。」

「司令室に到着したらまず戦闘団各幹部との会見、そして第4滑走路で実戦部隊の閲兵が入っております。」

「了解した。」

 ぶっきらぼうに返答した高原は頬杖を突き、車窓の外側を眺めていた。



 司令室に到着し、荷物をあらかた整理してくつろぐ高原。そこに小倉大尉がやってきた。


「失礼します。副司令園田中佐殿、首席参謀長島少佐殿をお連れいたしました。」

「ご苦労。通してくれ。」


「IJK副司令、園田和正中佐であります!」

「IJK首席参謀、長島晴人少佐です。」


 司令室に入ってきた士官二名。IJK副司令の園田和正中佐と首席参謀の長島晴人少佐だ。

 園田中佐は海軍第三術科学校飛行課程を出て艦載機パイロットとして多大なる戦果を挙げた後、13年前の515年にIJKの前身たるISFに入隊した。以降も強力なパイロットとして多くの敵機を葬り、また陸戦要員としても多くの敵兵を血祭りに挙げてきた。その経歴に違わぬ、武骨な風格を持つ。

 長島少佐は、連邦と海を隔てて東に存在する大国、シュピーゲルベルク東方帝国の陸軍士官学校への留学生第一期生という異色の経歴を持つ。帝国陸軍士官学校卒後は陸軍幹部候補生として連邦軍に入隊し、航空要員として活動しつつ副官職や参謀職も経験している。やけにほっそりしていて影のある風貌であるが、膂力と智謀を兼ね備えていることに定評がある。


「二人ともご苦労。園田とは2年ぶりになるか。」

「はい。私はあのころ第1作戦群司令であり、大佐は、当時中佐であられましたが副司令を勤めておいででした。」

「そうだな。また会えてよかった。長島はそれよりも前か。5年前、貴官は作戦参謀だったな。」

「そのとおりでございます。あの後、中央陸軍参謀部員と航空学校の教官をしておりました。」

「なるほど。いずれにしてもわれらIJKはこれより活動を開始するわけだ。幹部三人ともども、現場からしばらく離れていたが、それは言い訳にはならん。むろん、司令たる私とて同じことだ。あらゆる任務に、最高の能力を提供する。それがわれわれだ。」


 司令の言葉に、頷く二名の幹部。


「というわけだ。貴官らには今後の活躍を期待する。」

「「了解!」」


 園田と長島の言葉が重なる。


「では次は戦闘団閲兵だ。貴官らは下がれ。15分後第4滑走路で。」


 その言葉をうけ、園田と長島は回れ右をし、見事な行進で司令室を後にした。


「では小倉大尉、団員を第4滑走路へ集めてくれ。」

「承知いたしました。」



 城都中央基地の第4滑走路の一角。ここに約8000人の兵員が見事な整列をして集合していた。その陣容をぐるりと見回し、高原は正面に立つ。正面にはマイクが備え付けられた演台。ここに司令たる高原が立つと、進行役の園田の合図で一斉に敬礼が行われた。高原は答礼し、兵員の敬礼が終わると訓令を始めた。


「独立統合戦闘団の将兵諸君。私が司令の高原悠介大佐である。今回、独立統合戦闘団、IJKが発足するに当たり覚えておいていてもらいたいことがある。それは、諸君らはあらゆる場面に臨み、あらゆる任務に従事し、しかもそれを遂行するに当たり最高の成果を出す義務を負っているということである!諸君らはすべての戦場で最高の戦果を挙げる全能者でなければならぬ!陸戦でも空戦でも、一騎当千であらねばならぬ!これは単なる心構えではない!現実に諸君らが望まれていることである!・・・諸君の健闘に期待をする。」


 IJKとは陸戦および空戦における最強のエリート部隊なのだ。その組織はおおむね空軍の1個航空団に倣っているが、二個作戦群の人員は全員トップに立つエースパイロットにして陸戦においても二個大隊程度の規模ながら一個連隊に勝る戦闘力を持つ。この作戦群を中核に、陸戦のエースによって構成される陸戦予備群が加えられ、総合的な戦闘力は、1個旅団を凌駕するとされる。

 その凶悪なまでに強い部隊が、今ここに動き出したのである。

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