プロローグ
〇、
500年3月18日。
なんの変哲もない日だった。西の大陸を統治する都市連邦の新天地であるここ新天州でも、そのような日が続いていた。
「こんな日は、ゆっくりするに限るな。」
都市連邦新天州憲兵隊の軍属、黒川三郎は、休日と言うことで自宅で怠ける父であった。どこか遊びにつれていくようにとの一人息子・悠介の懇願もむなしく、子供にとって退屈で禁欲的な一日が開始されてしまったのだった。
「いいかい、悠介。人間というのはワークライフバランスといってだな・・・」
三郎の長い説教話が始まったので、悠介はそっぽを向いて自室に閉じこもってしまった。
「まったく、親を軽んじる子供に育てた覚えはないぞ!」
三郎がそう嘆いた刹那、爆音がした。家の目の前の通りからだ。あわてて様子を確かめに玄関に出向く三郎。その様子が気になった彼の息子も彼の後ろにつく。
バタン!
家の玄関が突然開き、連邦軍の、灰色の制服を着た一団が乱入してきた。とはいえ白い肌に彫りが深い顔立ちで、連邦の本土出身の人間たちではない。彼らはおもむろに銃を発砲し、三郎の頭を撃ち抜いた。脳髄が飛び散る。彼の脳液を被りながら、悠介は呆然と立ち尽くしていた。
この日こそ、30年にも渡る長い戦争の幕開けであった・・・。