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バケモノ?!のバカ

 「あっぶねぇだろっ!当たったらどーすんだよ!!火傷しちゃうだろ!」


上半身に向かって飛んできた3つの炎の槍をしゃがむことでかわした純は、左足を下げて腰を落とした。両手で拳を握り脇をギュッと締め顎を隠すように構えた。そうボクシングのインファイターによくある型の1つ、ピーカブースタイルである。

純は、少女を敵と見なしたのだ。


「ふふっ。変な格好ね!怖がってる女の子みたいだわ!あはははっ!!いいわ、火傷しないように踊りなさい!!『ファイアランス』『ファイアランス』『ファイアランス』!」


9つの炎の槍は、あらゆる角度から純を襲った。少女は勝利を確信した。丸腰のあいつには防ぐ事も出来ない、ましてや1つでも直撃すれば死に繋がるのだ。

時間差で放たれた1つ目の炎の槍が純に迫り当たったと思った時、純の身体がブレたような気がした。


「うそ、嘘でしょ!?何で何で当たらないのよぉっ!!」


少女は目を疑った。自分が放った魔法を1つ、また1つとまるでテレポートでもしているかの如く目にも止まらぬ速さで次々とかわしているのだ。


「ふははは!ダッキング!ダッキングダッキング~!遅い!!遅いぞ!こんなもん教授のチョークに比べれば遅過ぎるわ!」


未だに自分の身体能力がとてつもなく上がっている事に気が付いていないバカは、講義中にお喋りをしていると抜群のコントロールで飛んでくる56歳独身の野茂投手を愛するトルネード投法の教授から繰り出されるチョークのスピードよりも遅いと感じていたのだ。


「バケモノめっ!(やるしかないわね。これで決める!)『炎よ、彼の者を覆え、ファイアウォール』!!」


全てをかわしきった純の周りを炎の円が囲んだ瞬間、空に向かって炎の壁がそびえ立った。


「うわっ!あっちぃっ!サウナより暑くね?!何かムンムンするんですけどぉ!」


「ちっ!やっぱりこの程度じゃ死なないわね!でも、これで終わりよ!!『炎よ、捕らわれし彼の者を焼き尽くせ、ファイアレイン』!」


炎の壁の唯一開いていた場所、空から円の内側を埋め尽くすように炎の雨が純に降り注いだ。

閃光と共に凄まじい爆発音が響き、辺り一帯は爆風とその魔法の衝撃で砂埃が舞い上がった。



「はぁ、はぁ、流石に、…死んだわよね。はぁ、はぁ。まさか魔法をかわす奴がいるとは思わなかったわ。も、もう魔力も空っぽになっちゃった。」


少女はそう言い地面に座り込んだ。砂埃が徐々に晴れていく中で、少女はこれからの事を考えていた。迷いの森(帰らずの森)の中とはいえ魔法を連発したのだ。しかも、この近辺で火属性の魔法に特化しているのは少女だけ。ここにいるのが丸分かりだ。

息をある程度整えてすぐに移動をしようと少女はよろけながらも立ち上がり、置いている荷物の場所に戻ろうと背を向けた。





「おいおいおい。人の服燃やしといてどこに行くつもりだよ。女だからって容赦しねぇぞ?」


少女は心臓が止まるかと思った。あの魔法を喰らっておいてまだ死んでいない男。腹に響く低い声。明らかに怒り、いや殺意に似た気配。恐怖で全身が震え、茶色の瞳からは涙が零れていた。思うように体が動かず、呼吸もままならない少女はやっとの思いで後ろを振り返った。


「お前…、金髪だからって調子に乗ってんじゃねぇえっ!!!」


そこには無傷の全裸のバカが立っていた。




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