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こんな勇者&魔王様関連小説

こんな勇者の旅立ちの物語

作者:

魔力、最低ランク。剣術、敵に当たる前に自分の足に引っかかり地面にコケた。戦術、ちんぷんかんぷんなため頓珍漢な受け答えしかできなかった。魔術、攻撃系は全滅、小さな火球すら発生させられない。


その他諸々平均かそれ以下。唯一治癒などの補助系魔法のみ伸びしろあり。


それが当代勇者とされるあたしフィレアの能力値の全評価だった。



「………本当に勇者?」


検査を担当した役人の一人が検査結果を片手に首を傾げる。歴代の勇者さまは全項目最高値(計測不能)を叩き出していたのだから当たり前の反応だ。



「ですよね、可笑しいですよね、あたし、魔王なんて倒せませんよね!というかあたし女です!勇者さまは男の方でしょ!どうしてあたしが勇者なんですか!」


役人の襟を掴んで前後にがくがく揺らす。有り得ない、ここまでの流れ全部あ~~~~~り~~~~え~~~~~な~~~~~~~い~~~~~~~~~~~!!


畑で収穫していたら何故だかキラキラな美形エルフ神官さんに「勇者さま」と断定され、問答無用で掻っ攫われた挙句、神殿にぽい!と放りこまれ、問答無用でいろんなことを検査された結果がこれですよ!!


勇者様は外見、知識、技術、記憶全てを持って生まれてこられる存在です。つまりは肉体(でも姿は一緒)だけ変えて生まれてくる同一人物。だから、だから……!!


「女のあたしが勇者様なわけないじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


そう、勇者様は男。教会なんかに残っている姿絵には背の高いすらりとした優しげな美男子さんじゃないですかぁ!!あたしみたいな農民が勇者って絶対に絶対に間違いだぁ!!


がくんがくんと激情のまま役人さんを揺らし続けるあたし。役人さんは「うっ!やば、はきそ……」などど呟いていたが当然激昂したあたしの耳には入らない。


「うぁぁぁぁぁぁん!!」


「ごふっ!ちょ、ほんと、やば………ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」


段々顔色が悪くなっていた役人さんが突然占められた雄鶏のような悲鳴をあげた。あたしの背後を凝視する顔色は青を通りこした白であった。


な、何?


驚いて思わず手を止めたあたしから役人さんは全力で距離を取る。


?を頭に浮かべるあたしの肩を後ろから伸びてきた手ががしりと掴む。


「………なにをされているのですか?勇者様?」


腰砕けになりそうなほどの美声には残念ながら心当たりがありすぎた。ごくりと息を飲み、覚悟を決めて振り向けば麗しのご尊顔に満面の笑顔を浮かべたエルフさん(諸悪の根源)。

笑顔、なのです。笑顔なんですよ?見ほれるぐらい綺麗な笑顔なんですけど………。


どうしてでしょうね?と~~~~~~~~~っても黒く、恐ろしいものに見えるのですけど………。


きらきらきらきらきら。


輝かんばかりの天使の笑顔なのにあたしの肩を掴む手はがっちり力が込められていて痛いぐらいだ。


「あ、あああああああああ、あの?」


「検査、終わりましたか?」


「はい!!こちらです!!」


役人さんがバッタのように飛び上がると結果の書かれた書類をエルフさんに手渡す。「それでは!!」とコレ幸いに部屋を退室していった。

おのれ、逃げたな………!!


恨みがましく役人さんが出て行った扉を睨みつける。すると書類に目を落としたままのエルフさんががしりとあたしの頭を掴むとそのまま自分の方に向けさせる。

ぐき、ぐきって言った!!首、首が痛い!!

エルフさんが書類を読み終わるまでそのままの体勢を維持されました。首が本気で痛い!!


「ふむ」


ようやく頭鷲つかみ強制向き変えから解放されたあたしの頭上でそんな声が零れる。

はっ!これは「こんな数値は有り得ない。どうやら間違いのようでしたね。帰っていいですよ」というフラグ!!


期待を込めてエルフさんを見上げれば顎に手をやりなにやら考え込むエルフさん。何を迷うことがありますか。あたしが勇者なんてことは有り得ません。さぁ、はやくお役ゴメンの言葉を!!


「予想以上に悪いですね」


そうでしょうそうでしょう。だってあたし農民だし。補助系の魔法に適性があったことにも驚きだよ。


「戦術などの知識的なものは後でどうにでもなるとはいえ………魔術などの適性値がここまで低いとは特になんで攻撃系がここまで壊滅的に低いんですか?」


知りませんよ。あたしは農民だ。壊す方じゃなくて作る方なんだ。そんな力いらないわ!


「このままでは魔王と戦うことなど夢のまた夢ですね」


嫌です無理です無謀です!!いいからとっととあたしを帰して!!


「仕方がありません」


やった~~~~かえれ………。


「予定より少々早いですが」


うん?予定………?


「小うるさい上層部どもを黙らせるよりも聖剣の方を先に取りに行きますか」


「…………ふぇ?」


「先に聖剣を目覚めさせればいくら能力値が低かろうが彼奴らも黙らざるを得ないでしょうしね」


もしも~~~し?なんか危険な言葉がちらほらでてませんかぁ~~~~?










嫌な予感ほど当たるというもので………。


全力で抵抗するあたしだったけど易々と担ぎ上げられて(今はやりの細マッチョか!)、神殿の最奥に位置する勇者さまにしか入れない聖剣の間に(文字通り)放りこまれた。


え?そこでなにがあったかって?


黙秘します。


ただ言えるのはエルフさんと共に無理矢理旅立たされたあたしの腰には立派でしかも喋る剣があったことだけだ。

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