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飢餓

北新地の高級バー。

カウンターの一角、窓際のボックス席に座る二人。

一人は剛田理貴――二十一歳という若さで既に大阪の裏社会で知らん奴はモグリと言われる存在。


もう一人は、その剛田が唯一「頭上がらん」と言う男、北村真澄きたむら ますみ。黒縁メガネにタイトなスーツ、落ち着いた所作。だが、その目は氷のように冷たく、感情を覗かせない。言葉より先に相手の手札を読む――そんなタイプだ。頭脳、構想力、冷酷さ、どれを取っても裏社会に向きすぎていた。


「恐怖が金を生み、金が人を呼び、人がまた金を呼ぶ。…ようやく、形になったな」


真澄がウイスキーのグラスを揺らしながら言うと、剛田は煙草に火を点けた。


「 “信用”って言葉を、ここまで暴力的に使うことになるとは思わんかったわ」


真澄は微かに笑う。このスキーム――特殊詐欺、携帯名義、SNSを使った薬の流通。

その基盤を作ったのは、剛田ではない。真澄だ。


「ヤクザがやりたくてもできないことを、俺らがやってるだけだ」


真澄の声に、剛田はうなずく。


「ほんまにお前の言うとった通りになったな」


「 “本物の暴力を持った奴に、ノウハウ渡しただけの話だ。別に難しいことじゃない」


剛田は煙を吐いた。


「お前の仕組みがあったから、俺が走れた。お前は見えんところで動く。俺は表で暴れる。それで回るなら、上等や」

 

二人は血では繋がらないが、**共犯者としての“絆”**がある。剛田が暴れれば暴れるほど、街は荒れる。その混乱の中から、人と欲望が湧いてくる。


「ただな、俺らにこれから必要なのは実業だ。金も急ピッチで洗浄していかないと追いつかない。裏で生きてる奴は一生日陰を歩きつづける運命”恐怖は金になる”でも今後はそれが足枷になることもあるってことだ。理貴――お前はちょっと目立ちすぎてる」 


真澄が静かに言う。剛田は目を細めた。


「……俺は早く抜け出したいんや」


真澄はため息をつき、グラスの氷を指先で転がしながら、外の夜景を眺めた。

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