表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/86

墓前

墓の前。竜がひとり、背を向けて立っている。その背に、静かに近づく大きな影。


「やっぱ、ここにおったんやな」


竜は振り返らず、ポケットに手を突っ込んだまま、うなずく。間柴と二人、並んで墓を見つめる。


沈黙。風が吹き抜ける。

 

カラスの鳴き声が遠くからかすかに聞こえる。


「なんやったんやろな、あいつ」


竜が少し笑ったような吐息を漏らす。


「怖かった。ずっと。……夢ん中で殺したこともある。何回もな」


言葉を切りながら、ぽつぽつと絞り出す。


「 “なんでお前が兄貴やねん”って……“なんで血、切れへんねん”って。ずっと思ってた」 


風に揺れる草の音。


「せやけど……

 仲間ができてやっと……やっと血よりも、大事なもん見つけた思てたのに……」


少しうつむき、歯を食いしばる。


「許されへん。今でも。なんも。でも……でも……

なんで……なんでこんなに、涙……出るんやろな……っ」


声が震え、涙がこぼれ落ちる。顔を背けて、しゃがみ込む。肩が震えている。

 

間柴は黙って、ゆっくりしゃがむ。


「俺もな、ずっと思ってた。なんであの人、お前にあんなことばっかりすんねやろって」


「……」


「でもな。あの人、ほんまは……自分が一番、弱いって、知ってたんちゃうか」


少し間を空けて、続ける。


「せやから、強さばっかり求めた。 でも、自分のことは変えられへんかった。

 せやから……お前を、押さえつけるしかなかったんかもな」


「……それで守っとった、言うんか」


「守る、いうより……願ってたんちゃうか。“せめてこいつだけは、俺と違うもんになってくれ”って」


竜は黙って嗚咽をこらえる。そのまま、声を押し殺して泣き崩れる。


「もう……わからへん……なんでや……俺、あいつのことなんか……」


間柴は肩にそっと手を置く。何も言わず、ただそこにいる。


沈黙と風の音だけが、二人を包む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ