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清算

銃声が鳴ったあの夜から、西成の空気は一変した。

後藤猛――闇天狗の幹部にして、後藤竜の兄。あれだけの暴力と恐怖を背負っていた男が、最後は弟をかばって死んだ。その事実が、噂に尾ひれをつけるまでもなく、生々しく街に焼きついた。


警察は現場に急行し、関係者の身柄を確保した。後藤竜も、加賀谷京志も、橋春也も、間柴健も――誰も逃げなかった。唯一姿を消したのは、引き金を引いた少年、神谷才だけだった。 彼は闇に紛れた。まるで最初からいなかったかのように。

 

警察は関係者の供述をもとに捜査を進めた。

その中で、ただ一人、明確な責任を問われる者がいた。

 

 ――堂島大吾

 

闇天狗の“親衛隊隊長”と呼ばれた男。

猛に次ぐ組織のNo.2、闇天狗内の内部抗争が事件の全貌と見なされ、堂島は重要な役割を担ったとされた。


京志一家との抗争も、彼が水面下で火を点けたとされた。捜査の結果、堂島は傷害教唆および不穏行為煽動の疑いで、少年院送致が正式に決定された。


彼は取り調べで何も語らなかった。終始黙秘を貫いた。送致決定の瞬間、何かを全うするかのようにうっすら笑ったとも言われている。


堂島の少年院送りは、ある種の清算だった。彼が“あの夜の責任”の一端を負うことで、他の者たちは前へ進む権利を得た。それが正義かどうかは、誰にもわからない。


ただ一つ、確かなことがあった。


――命を失った者がいて、命を守った者がいた。


その一方で――後藤竜は、少年院送りを免れた。それを決定づけたのは、意外な者たちの“証言”だった。


敵対していたはずの闇天狗のメンバー数名が、警察の前でこう口を開いた。


「――あれは、才の一方的な暴走やった」

「仲間を守ろうとしてた。あいつらのやり方は、不器用やけど“筋”は通ってた」


 ――その証言は、警察の心証を大きく変えた。後藤竜は取り調べで、何も弁解しなかった。ただ一度だけ、こう口にした。


「兄貴が最後に、“ 離すなよ……掴んだ糸”って……」


刑事の動きが止まった。無機質な部屋に、行き場のない沈黙が満ちる。刑事は竜の瞳の奥に宿る、言葉では説明のつかない「重み」を読み取った。


やがて、静かにペンが置かれた。


不起訴処分。竜は釈放された。


後藤猛の最期。奇しくも彼の生き様が暴力の連鎖を断ち切った。これこそが、彼にとって本当に叶えたかったこと、望んでいたことだったのかもしれない。

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