兄弟
猛が繰り出す――右の拳。空気を裂く風圧。竜は体をひねり、間一髪でそれをかわす。
が、間髪いれず次の左裏拳が返ってきていた。ほぼ同時。
左の裏拳が肩をかすめる。痛みは走るが、すぐに後ろから、猛の足が唸りを上げて迫る。
猛の回し蹴りが空を薙ぐ。竜はそれを躱さない。
脛と脛がまともに衝突し、鈍い骨の軋みが夜気に響く。
猛の眉が跳ねた。
両者の蹴りが交差した一瞬、空気が震えた。
脚と脚がぶつかり、軸足がわずかにズれる。重心の崩れ――猛の隙。竜は迷わず飛び込む。右ストレート! だが――猛は、その軌道を読んでいた。
「甘いんじゃ!!」
猛が軸を低くし、竜の拳をかわして逆に肘でのカウンターを狙う。
「――ァッ」
竜の首が鋭く回転し、猛の肘は空を切った。
すかさず、竜が反撃の左アッパーを突き上げる。猛はそれをガードしつつ、腰をひねって頭突き気味の突進――!
衝突。
火花のような衝撃。もつれるように絡み合う二人。土煙が二人の間に舞い上がる。その一瞬の隙も許さず、猛が地を踏み鳴らすように走り込む。
「お前の“覚悟”、見せてみいやぁァァ!!」
まるで刃の連打。
どの一撃を食らっても、立てなくなる。だが竜は怯まない。
拳が交錯するたび、骨が軋み、拳が裂ける。肌がぶつかる音が生々しい。
誰かが「やべぇ……」と呟いた声すら、届かない。その場にいた誰もが、呼吸を止めて見ていた。
竜の目が鋭く光った。
「終わりにしようや、猛」




